3D CAD推進プロジェクト プロフェッショナル連載記事

SOLIDWORKS WORLD JAPAN2019から感じるトレンド

今年も、ソリッドワークス ジャパン株式会社主催による「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019」が、
東京では11月8日(金)、大阪では11月12日(火)に開催されました。

私は東京会場(ANAインターコンチネンタルホテル東京)に参加しました。

出典:ダッソーシステムズ・ソリッドワークスジャパン

ソリッドワークス・ジャパンよりお聞きしている情報では、東京会場ではユーザー750名、ユーザー以外(イベントスポンサーや代理店・パートナー企業等)300名、総勢で1,000名を超える来場者となった模様で、その盛況さがうかがえるものとなりました。

ちなみに、この「SOLIDWORKS WORLD」というイベント名称ですが、

来年2020年、アメリカで開催されるカンファレンス名は「3D EXPERIENCE WORLD」に変わります。

SOLIDWORKS WORLD2019(米国 ダラス開催)ステージ画像より(筆者撮影)

このことから、今回、日本で開催されたカンファレンスが世界で最後の「SOLIDWORKS WORLD」になったのかもしれません。

SOLIDWORKS WORLD JAPAN」というイベント名の締めくくりと、「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN」という新たなイベント名へのバトンタッチに対して、寂しさにも似た何かの感情を覚えますが、新しく生まれ変わるであろうものに期待をせずにはいられません。

 

みなさんの中には、「ただのセミナーでしょ?」と言う方もいるかもしれません。

しかし、このイベントは、ユーザー、代理店、パートナー企業、メーカーの社員が一堂に会することによってコミニティ※が形成されます。

 

※コミュニティとは
英:community
英語で「共同体」を意味する語に由来しています。
ここでは、この後に出てくるステークホルダの意味と同義でもいいかなと私は考えます。
その製品に関わる全ての人たちによって形成されるものと考えます。

 

このコミュニティによって、単なるセミナーではなくて、全ての参加者が、

  • ものづくりと今の世界を知る
  • 製品戦略を知ることができる
  • ネットワーキングを行う
  • さらに強いコミュニティを形成する

そんな場所なのです。

 

ミスミRapidDesign・inCADComponents、meviyも、SOLIDWORKSの中での運用するので、コミュニティを構成する立派なメンバーです。

また、この仕組みを利用しているユーザーの皆さんもメンバーです。今年このイベントに参加できなかった人も来年はぜひ参加してみてください。

そして、ミスミにも全てのステークホルダ※によってコミュニティが作られ、ユーザー会が近い将来、開かれることを期待しています。

「新しいものづくりの環境」や、「システムそのものが、より使いやすくなること」や、「CADメーカーを問わず、3DCADとの連携性の強化」など、コミュニティで作り上げていくことができたらいいですね。

 

※ステークホルダとは
英:stakeholder

日本語に訳すと、「利害関係者」になりますが、ここでは、階層を問わずミスミの全ての社員、システムを利用(オペレーション)するだけではなく、そのサービスに関わる全てのユーザー、CADメーカーのことを私としては示しています。

 

SOLIDWORKS2020については、様々なメディアを通して、また各代理店より発表されているので、私はその製品の詳細ではなく、感じたことを話したいと思います。

このSOLIDWORKS WORLD JAPAN2019で発表された内容は、今年の2月に米国で開催されたSOLIDWORKS WORLD 2019で発表されたものなのが多くありますが、その内容よりも、「3DEXPERIRNCE.WORKSという内容が“より”明確になった」と実感しました。この3DEXPERIRNCE.WORKSには、

  • 製造工程ソリューション:「DELMIAWORKS」
  • 構造解析(CAE):「SIMULIAWORKS」
  • プランニング:「ENOVIAWORKS」

が用意されています。

 

3DEXPERIENCEという言葉に代表されるダッソー・システムズの製品とSOLIDWORKSがつながるという新たな製品名にWORKSと付いていることは、SOLIDWORKSユーザーとしても馴染みやすいものであると同時に、

あくまでも私の推測なのですが、

これまで高額な投資をしなければ購入できなかったダッソー・システムズの製品が、SOLIDWORKSユーザーにとっても身近になるかもしれないという期待が持てました。

 

構造解析を業務で行う私としては、SIMULIAWORKSへの期待は大です。解析を行う時には、「非線形」を解くということがいつも課題になっています。

 

ひとくちに「非線形」と言っても、その内容は複数あります。

  • 幾何学的非線形(大変形を生じるもの)
  • 材料非線形(弾塑性や超弾性をシミュレーションするような場合)
  • 接触条件の多いもの(部品と部品が接触しているという条件を設定するもの)

 

このような解析は、ミッドレンジCAEでは、その解析結果の精度が低くなる場合や、解析計算が収束しないで(力のつり合いが解けずに)エラー停止してしまうなど、その使用頻度こそ線形解析に比べ多くないものの、悩まされる課題でした。

しかし、このSIMULIAWORKSでは、

・SOLIDWORKS Simulationで解析エラーとなった場合も
SOLIDWORKS Simulationで設定したほぼ全ての境界条件がStructural Professional Engineerに引き継いてことができる

・SOLIDWORKSで設計変更が生じた場合も
連系ボタンにより最新の形状で再計算が出来る

といったように、「何だかいけそう!!」という感じなのです。

 

このような関連製品や拡張性の高い他の製品は、3DEXPERIENCE プラットフォームという言葉に象徴されるように、その広がりが進んでいく一方、3DCAD本体は、「データ軽量化」「安定性」を追及している部分が大きく、「成熟の域を迎えた」と私は思っています。

クラウド

その中で「どうかな?」と思われることが、
「クラウド」、「IoT」、「ジェネレーティブデザイン」です。

 

PTC社には、CADベンダーというよりもIoTへの展開のイメージを強く感じています。

さらには、最近、SaaS製品開発プラットフォームプロバイダーOnshape社の買収について、最終合意にサインしたと発表がありました。

Onshape社のCo-Founder(創立者のお一人)の中にはJon Hirschtick氏、John McEleney氏がいらっしゃいます。Jon Hirschtick氏はSOLIDWORKS社のFounderでありCEOだったかた、John McEleney氏はSOLIDWORKS社のCEOであった方です。

 

SaaS製品とは、ソフトウェアのプログラムが入ったパッケージや利用ライセンスを購入するのではなくて、利用期間や利用人数に応じた料金を支払う製品のことをいいます。

ユーザーはそのソフトウェアをPCにインストールするのではなく、サービス提供事業者のサーバで稼働しているソフトウェア機能を、インターネットを通してブラウザ上で利用します。

つまり、PTC社はSOLIDWORKSを良く知るお二方を迎え、クラウドでの3DCAD運用を強化することができるということなのです。

 

びっくり!!競合社に元Founderや元CEOが設立した企業が買収される!!

こんなこと、日本ではあまり聞くことはないですね。

 

果たして、SOLIDWORKS社はAUTODESK社のFUSION360やこのPTC社・Onshape社のクラウド攻勢に対して、どう対応をしていくのでしょうか。

業界トレンドのようなお話になりましたが、次回も続きます。お楽しみに。