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製造業の現場で働く女性設計者の本音座談会【後編】 女性が働き続けたくなる会社の条件は?

男性が圧倒的多数を占める製造業界で、どうすれば優秀な女性設計者を自社に引き込めるのか? 女性が働きやすい会社の仕組みとは? ものづくりの現場を志望する現役大学院生は、企業のどこをチェックしているのか?

 

第一線で活躍中の技術者からYouTuber大学院生まで、ものづくりに携わる女性たちの座談会を開催。前編に続き、5人の女性たちに本音を聞いた。

管理職クラスにもっと女性を!

 ――製造業界で女性が働き続けていくために、組織としてはどのような体制が整っているのが望ましいですか。 

永和 清水さん

うちの会社の場合、リモートワークができるのはありがたいですね。私は小学5年生の子どもがいるので、学校の用事で仕事に行けないときもあるのですが、そういうときはリモートで自宅作業にしてもらえるよう調整できます。一時的に抜ける時間ができても、一日勤務として見てもらえますから。

 

イジュさん
清水さんの会社ではいつからそういう体制が整ったんですか?

 

永和 清水さん

5年前に私が入社した時点ですでに「リモートOKだよ」と言われていましたね。他の男性社員も家庭の事情に応じて利用しています。

 

N社 姜さん

それはリモートで会社のPCにログインできる環境があって、CADを動かしたりもできるということですか?

 

永和 清水さん

そうです。共働きのフルタイム勤務で子育てをしていると、どうしても動けない場面が出てくるのですが、リモート制度のおかげで両立できています。仕事の幅を制限しなくてもいいのはありがたいですね。

N社 姜さん

うちの会社もリモートワークによる在宅勤務が可能かどうか、昨年からテスト段階なんですよ。まだ本格的な環境は整っていないのですが、本当にそういう形での勤務は可能なのか、というところを長期にわたって複数名の社員がテストしているようです。

 

N社 田中さん

ただ、私たちがやっている設計の仕事は、どうしても会社に行かないとできない業務が多いのが難しいところですよね。プログラミングにしてもそうですし。

 

N社 姜さん

そうなんです。24時間稼働している工場に人間が勤務形態を合わせている体制なので、「育児があるから今日は帰ります」とは簡単に言える環境にはなっていないんですね。時短勤務も難しい。

 

スワニー 窪田さん

私はまだ結婚していないのであまり考えたことがなかったのですが、確かに時短勤務に切り替えるのが難しい業種ではあるかもしれません。いざとなったら同僚に協力をお願いするなどして働き方を変えることはできる気もしますけど、どうかなぁ…。

 

イジュさん

私はこれから就活が始まるのですが、やっぱりそういう制度や仕組みが整っている会社に惹かれます。育休取得率などの数字が出ていても、本当に育休を取りやすい空気が社内にあるのかどうかまでは、入ってみないとわかりませんし。

 

N社 姜さん

女性が働きやすい制度を整えることも大事ですが、うちの会社に関していえば、それ以上に改善すべき問題点があると私は思っていて。それは役員や上司クラスに、女性が1人もいないこと。取り扱っている製品が車の部品だし、設計者の女性社員も少ない。だから当然といえば同然ですが、どの部署を見ても女性の上司は0人なんです。じゃあ私が上を目指してみようかな、って今思っています。

 

イジュさん

かっこいい! ぜひ目指してください!

スキルアップに工場設立!? この先のキャリアプラン

――これから就職するイジュさんもそうですが、すでに働いている皆さんは今後のキャリアプランをどんな風にイメージしていますか。

永和 清水さん

私は小さいことなんですけど、構想設計の部分がまだまだレベルが足りていない自覚があるので、そこをもっと学んで経験値を積み上げていけたら、と思っています。

スワニー 窪田さん

私は自分がつくった製品を、いずれ会社の製品として世に出せたら、と思っています。まだイメージが固まってないんですけど、動かすとびっくりするような面白いおもちゃとかつくりたいなって。

その上で、最終的には実家の工場に戻ろうと思っています。今の会社で身につけたものを、ゆくゆくは実家の工場に活かすことができたら。まだ全然先の話になりますが。

 

N社 田中さん

私はまだ社会人3年目なのでそこまでちゃんとキャリアプランが見えていないのですが、今やっている設計の仕事を今後も続けていきたいですね。姜さんのような頼もしい同性の先輩にも恵まれているので、ロボットのティーチングとか、新しいことにもチャレンジしていきたいです。

あとは、うちの会社は海外に26拠点あるのですが、トレーニング制度といって海外で1年くらい経験を積むこともできるんですね。年に1回、希望調査を出すのですが、私はアメリカの支社を希望しています。

 

N社 姜さん

私はやりたいことがいっぱいあるんですよ。これまでは技術をやってきましたけど、営業、セールスエンジニアもやってみたい。技術が理解できているからこそできる導入やコストダウンの提案スキルも身につけていきたいですね。あとはさっきお話したように、上に行って偉くなりたいという気持ちもあるんですけど、いつかは新しい工場を自分で建てたいです。

 

イジュさん

新しい工場を自分で建てる!?

 

N社 姜さん

うちの会社っていろんな国に工場を建てているんですよ。それで私もタイ、インド、ドイツとかいろんな工場に行かせてもらっていているので、そういうところの工場長になれば、大学で学んだ建築の知識も活かせるだろうし。工場のレイアウトからすべて自分でやってみたいな、と思っています。

 

 イジュさん

すごい…私もいつか起業したいな、と思っているのですが、予想を遥かに上回るキャリアプランでびっくりしました(笑)。ところで、設計者ってそもそも転職率は高いんですか?

 

N社 姜さん

転職する人は多いですね。技術さえ持っていれば、どんな企業でもやっていけるので。転々と企業を渡り歩きながら、年収をアップさせていく技術者は大勢います。

 

イジュさん

そこは手に職があるからこその強みですね!

企業に優先してほしいのは、ウェブサイトと採用現場の見直し

――男性が多い環境だったからこそ、「どうすれば今後、うちの会社に優秀な女性社員が入ってくれるだろう?」と悩んでいる企業はたくさんあります。女性が入りたいと思う企業、働き続けたいと思える組織について、最後にアドバイスをお願いします。

 

イジュさん

私、ウェブサイトのきれいさは重要だと思います。

 

  一同

わかる!

 

イジュさん

「この会社、気になる」と思って調べたときに、最初に目に入るのはウェブサイトじゃないですか? それがあまりにも適当だったり、雑なレイアウトだったりすると残念な気持ちになりますよね。

 

N社 田中さん

私、ちょうど今年リクルーターをやっていて新卒の採用に関わったんですよ。そのときに内定者との座談会に参加したのですが、女性の内定者からいろんな具体的な質問が出てきて。結局、その彼女が入社してくれて「話を聞いて楽しそうだったのが決め手です」と言ってくれたんですね。だから採用の場に女性社員がいるのといないのとでは、内定承諾率って変わってくるんじゃないかな、と感じました。

 

 イジュさん

わかります。女性社員の方がいると、自分が入社した後の未来がイメージしやすくなる気がします。

 

スワニー 窪田さん

ものづくりに興味がある女子って、実はたくさんいるはずなんですよ。そういう女子たちにアピールできる場に、企業が積極的に出ていくことも長期的に見て効果があると思います。

私がいる長野県は、就職で県外に出てしまう子が多いんですよ。ちょうど最近、「伊那市中学生キャリアフェス」というイベントにうちの会社も参加したのですが、私のような女性社員が現場で説明している姿を見たことがきっかけで、「男性に限らずとも、ものづくりできるんだ」と思う子もいたかもしれない。長い目で見ると将来的に女性が増えていくことに繋がるんじゃないでしょうか。

 

永和 清水さん

その上で、リモートワークのような柔軟な制度や、子育てと仕事を両立できる仕組みが用意されているとやっぱり助かりますね。女性は妊娠・出産・育児のステージでどうしてもキャリアを左右されやすいので、「この会社でなら仕事できる」と思える安心感があれば、長く働き続けられる気がします。

私たちもmeviyを使っています!

 

N社 姜さん

1年前から存在は知っていました。同じ部署の社員が試したのですが、最初のうちは正直不満も多かったんですね。CATIAのモデルを入れてもすぐ見積もりが出るものもあれば出ないものもあったり、細かい指定があったりと。ただ、何度か改善をしていただいて以降、格段に使い勝手がよくなって今はかなりお世話になっています。板金、切削のほかに、今後は樹脂製品をお願いするつもりです。

 

スワニー 窪田さん

最初のうちは使い方に慣れるまで時間がかかりましたが、今はエジェクタピン(先端形状)の加工などで、精度がよくて安いのでよく利用しています。うちの会社は小ロット生産も多いので、製品の試作でも活用しています。

 

永和 清水さん

板金切削でよくお願いしています。板金は他社よりも安くて納期が早いのがありがたいですね。これまでは依頼量が増えると納期も伸びるのが普通でしたが、meviyは依頼量が増えても納期は変わらないので、量が多いほどメリットがあると感じています。