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時代はインダストリー4.0へ 3次元CAD/CAM「TopSolid」を販売するコダマコーポレーションが描く「ものづくり」のビジョン

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ドイツ政府が推進する製造業のデジタル化・コンピューター化を目指すコンセプト「インダストリー4.0」。現代の製造業界を生きる我々にとって、デジタル化は切っても切れないテーマです。これまで人の手で行ってきた作業をデジタル化することによって、生産性の向上やものづくりの新しい可能性が見えてきます。その中でも今、大きな注目を集めているのは3次元CAD/CAMでしょう。

 

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今回はmeviyスタッフの芝田が、フランス・Missler Software社のCAD/CAMシステム「TopSolidシリーズ」を国内販売しているコダマコーポレーションを訪問。代表取締役の小玉博幸さんに、ものづくりの生産性を上げるためにCAD/CAMがどれだけ重要なのか、業界内の最新動向を伺ってきました。

 

これからのものづくりとその方法

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芝田  本日はよろしくお願いします。さっそくですが、コダマコーポレーションさんの会社概要をお聞かせいただけますでしょうか。

 

小玉 私たちコダマコーポレーションは1989年の設立以来、日本の製造業の生産性を向上させるためにCAD/CAM(コンピュータ利用設計・製造)システムとそれらの教育、運用に関するサービスを提供してきました。1996年には、フランス・Missler Software社が開発した3次元統合CAD/CAMシステム「TopSolidシリーズ」の販売を開始し、現在に至るまで日本のものづくりをどう効率化できるか、そういった研究を日々重ねています。

 

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芝田 今でこそ製造業にとって、3次元CAD/CAMシステムは欠かせないものになっていますよね。小玉さんがこれに目を付けられたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

 

小玉 私は30年ほど前、とある製図機メーカーの新規事業でCADの営業をしていました。そのときに出会った金型メーカーの社長である遠藤国男さんとの出会いがきっかけですね。彼は金型の加工を効率化するため、自社の工作機械にCAD/CAMを徹底的に活用し、金型の穴あけや加工を無人で行っていました。機械1台につき作業員をつけなければならなかった時代において、これは画期的な試みです。そして、その図面には寸法が入っていなかったのです。設計で作成したCADデータを製造でも活用する『データの一気通貫』という考えに共感し、こうした事業を始めることになりました。

 

芝田 なるほど。寸法をびっちり書いた紙の2D図面で加工するのが当たり前だった時代において、それはかなり先進的な挑戦だったわけですね。

 

小玉 そう、時代を先取りしていたので、周りからの反応に苦労しました。お客様の目の前でCADシステムの実演をして見せたのですが、みんな口を揃えてインチキだっていうんです(苦笑)。パソコンでこんなことができるわけがない、と。3Dにすれば寸法や公差までちゃんと計算でき、その結果ミスが減って生産性が上がるのに、なかなか周りにわかってもらえませんでした。だからこの考え方を理解してもらうために30年間ずっと布教を続けてきたんです。今でこそ浸透しつつありますが、日本はいまだに2D図面で加工していている現場が多く、3D化はまだまだ行き渡ってないというのが正直なところですね。

 

 

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芝田 確かに私たちも「meviy」という3次元ソリューションを提供しているのですが、いまのところまだまだ日本では受け入れられていない印象です。現在は7割ほどが海外からの売り上げで、日本よりガンガン3D化を推し進めていますね。

 

小玉 いまだに図面を使っているのは日本くらいですよ。なぜ中国があんなにものづくりできるのかといえば、3Dを活用しているから。日本は図面から変えたくないという技術者が多い。今までずっとやってきたからこれまで通り変わらず図面で仕事をすると。そんなので日本のものづくりが先に行けるわけがないじゃないですか。

 

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芝田 それはすごく感じます。meviyを手がける前は3年ほど上海にいたのですが、向こうは積極的に3DCAMを取り入れ、効率化を進めていました。日本はここ10年で金型の事業所数がぐっと減っています。みんな相当危機感を持っているだろうと思って帰国したのに、現場は依然としてそれほど変わっていません。

 

小玉 システムを売る側にも問題があると思っています。私はお客様に「工作機械は手足でCAD/CAMは頭脳」と説明しています。なぜ頭脳をおろそかにして手足ばかりを導入するのか。日本の工作機械メーカーにしてもCAD/CAMメーカーにしても、あまりそういう連携に興味がないんですよ。それぞれに相応しいソフトがあるのに、ただ売ればいいと思ってしまっている。

 

芝田  手足と頭脳を連携しないと、スムーズなものづくりにはならないですからね。そこはもう少し意識していく必要があると思っています。

 

小玉 そのような売り方はユーザーオリエンテッドではなく、サプライヤーオリエンテッドなんですよ。私は設計と製造を繋ぐのが何よりも大事だと考えています。というのも日本のメーカーは、設計は設計者、製造は製造者と割り切りすぎていて、ものづくりへの一体感が欠けてしまっている。だから我々は、そういった部分を繋ぐために「TopSolid」の販売事業を展開しているわけです。

 

芝田 具体的に「TopSolid」は、どのような点が魅力なのでしょうか。

 

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小玉 TopSolidは先ほども言ったように、『データの一気通貫』が最大の特長です。2Dと3Dが統合され、CADとCAM、シミュレーターが一体となり、CADからCAMへのデータ変換の必要もありません。例えば、設計変更でCADデータを修正すると、金型構成図、部品表、部品図、そしてCAMデータも自動で修正されます。これが実務で使えるシステムは他にありません。単純にミスも減りますし、いちいちCAMを修正する必要がないのは大きなメリットです。

 

芝田  なるほど。図面だとミスが起こりがちだった部分が、「TopSolidシリーズ」では解消されているということですね。確かに便利ですが、導入にあたって企業側のコスト負担は大きいように思います。

 

小玉 我々は単にソフトを販売するだけではなく、導入や立ち上げのコンサルティングといったサポートサービスも提供しています。今まで2Dだった部分に3Dを導入するのは負荷がかかりますが、やはりちゃんと使ってみないと体感できません。そこは売る側の責任だと思っています。

 

芝田 会社が導入のサポートをしてくれるのは心強いですね。検討もしやすい気がします。

 

小玉 やはりそれでも懐疑的な企業さんもいますから、自社で試作の工場を作ったんです。まずは現場でどうやっているか見てください、と。我々はそもそもソフトを販売する側で、使う側ではなかったのですが(笑)。定期的に工場見学会を開いていて、お客さんも現場を見ると納得してくれます。

 

芝田 システムを可視化するために、わざわざ自社工場を作るってすごい……!

 

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小玉 こちらは自社工場で製作したハチの模型です。接合ではなくすべて無垢からの切削で作られています。CAD/CAMシステムを上手く活用することでこのような精密加工も可能になります。その他に自動車部品や医療器具の試作品製作も手がけています。

 

芝田 CAD/CAMメーカーがここまでするとは説得力も段違いですね。最後に今後の展望を教えていただけたら!

 

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小玉 機械系製造業だけでなく、建築やプラントなど建設業などに向けて多角的に展開していきたいですね。やはり会社としても、3Dはこれだけ便利なんだということをもっと啓蒙していかなくてはなりません。どれだけ現場で使えるツールを提供できるか、そのために私たちで何ができるか、そういったことを常に考えています。まだまだやることはたくさんありますよ。

 

芝田 同じ3Dシステムを開発している者同士として響き合う部分が多く、大変参考になりました。ありがとうございました。

 

まとめ

今回のインタビューによって、日本の製造業が抱える課題とともに、それを解決するための糸口が見えてきたのではないでしょうか。刻一刻と変化するものづくりの現場。そこに携わるすべての人たちに、meviyは一つのソリューションを提供しています。

 

▼meviy
https://meviy.misumi-ec.com/

▼TopSolid’Mold 7 × meviy で設計購買業務を効率的にする方法
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(神田 匠/ノオト)

 

取材協力:コダマコーポレーション株式会社
http://www.kodamacorp.co.jp/