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その図面の寸法を測定できますか?

2D CADや3D CADの作図機能で描いた図面は、正確で綺麗な仕上がりになります。また寸法も自由自在に記入することができますが、測定できない寸法を記入してしまうことがあり、測定者を悩ませます。図面の寸法で測定できないものとはどんなものでしょうか。

測定可能な寸法

まず、測定可能な寸法について説明します。
設計者が図面を描く場合には、自分が記入した寸法がどの様に測定されるかを考慮する必要があります。しかし寸法は設計要件を満たすことが最優先ですので、測定が容易にできることと相反することも少なくありません。

穴の位置寸法

上図では穴の位置寸法を示しています。
この表記に違和感を持つ人もいると思いますが、JISの改訂により形状の位置を積極的に幾何公差で指示することになり、穴位置も位置度の幾何公差で指定します。「25」のように四角に囲まれた寸法は基準寸法といい、幾何学的に正確な位置を示しますので測定寸法ではありません。

測定方法
寸法の測定には3次元測定器を利用します。A,Bの2つのデータム面を利用して、測定のための座標軸を定義します。この場合は部品左下が原点になります。あとは円の中心を測定し完了です。

測定不可能な寸法

前者の様な3次元測定器での測定手順をよく理解していない設計者の場合には、下図の様な図面を描いてしまいます。どこも図面として問題が無い様に見えるのですが、実際には寸法を測定することができません。

3次元測定器で測定できない穴位置寸法の図面

説明しやすい様に旧JIS表記で寸法を記入しています。この形状の特徴として、直線部分がないことが挙げられます。CADの作図ではCADで定義された座標系に基づいて直線部分が無くてもXY寸法を記入できますが、3次元測定器では部品形状からXY座標を定義することができません。しがって測定不可能になります。

寸法を測定可能にする方法

3次元測定器の測定方法を理解していれば、下図の様な回避策をとることができます。

3次元測定器で測定できる穴位置寸法の図面

測定方法
矢印で示す様に“ピアス穴”を2つ開けておくことで、3次元測定器はX軸を定義できます。あとは大きな穴の中心を原点に定義すればXY座標が完成し、測定が可能になります。

3Dスキャナーで測定

近年の3Dスキャナは精度が向上しているので、通常では測定できない形状でも測定することが可能です。基本的にCADモデルとの比較となりますので、通常の寸法測定ではなく、幾何学的に正確な形状からどれだけズレているかを測定しますので、幾何公差の輪郭度に似ています。

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