CAD ものづくり基礎知識 機械設計

3D CADでは作成できない部品形状と、エラーの対応

3D CADの性能は劇的に向上しており、モデリングできない形状がないと言われています。設計ツールとしては当たり前のことですが、3D CADにも作成できない部品形状が存在し、設計者を悩ませます。

簡単な部品がモデリングできない

よくあるクリップ部品 左図のクリップ部品はよくある簡単な部品ですが、3D CADではモデリングできません。クリップ部品の仕様として先端の合わせ部分は挟む力を強くするために初期ばね力で密着させることが必要ですが、この仕様がモデリングできない原因となります。
このように簡単な部品でも3D CADでモデリング出来ない場合が多数存在しますが、工夫することで作成できるようになります。
先端に隙間を作ったクリップ部品 この部品の場合、左図のように先端を密着させずに微小な隙間を作ると、3D CADでモデリングができるようになります。つまり円筒面が正接している状態を回避すれば良いのです。

 

モデリングできない原因は非多様体

モデリングできない原因は、“非多様体(Non-Manifold)”です。聞きなれない用語ですが3D CADのモデリング機能に関係し、3D CADがソリッド形状を定義する際に許されない状態を表します。設計者がモデリングを行う際に原因不明のエラーメッセージに遭遇して作業が止まってしまうことがありますが、非多様体を知ることでエラーをかなり回避できるようになります。

非多様体とは:
通常ソリッドモデルのエッジには2枚の面が接続していますが、3枚以上の面が接続する状態が非多様体です。通常の部品形状では非多様体になることは少ないのですが、場合によって非多様体になってしまうことがあります。

 

4面接続する非多様体 左図の例は矢印で示すエッジに4枚の面が接続している状態で、非多様体になります。
実際の部品でもこのような状態は加工できませんので、この場合、基本的にはモデリングが出来なくても問題はありません。
正接エッジができる非多様体 左図の例は部品の縁に正接する穴を作成する場合です。正接部分は線接触となり正接エッジができますので面が4面接続して非多様体になります。
この場合も、実際の部品加工でも基本的に作成できません。

 

非多様体が原因のエラーメッセージ

非多様体が原因でモデリングができない時に3D CADはエラーメッセージを出しますが、残念ながら不親切な場合が多くあります。次にその実例を紹介します。

  • エラー1
    厚みがゼロになる形状を作成しようとしています。
    (非多様体が出来てしまうことを意味します。)
  • エラー2
    この形状では処理できません。
    (非多様体ができるので処理できないことを意味する場合もあります。)
  • エラー3
    コピーに失敗しました。
    (コピー結果が非多様体になり処理できないことを意味する場合もあります。)その他
    部品がマルチボディ(部品が2つ以上に分割される)になった。
    (非多様体を避けるために部品を分割してしまうことがあります。)

非多様体の回避方法

線接触と点接触をなくすことで、非多様体を回避できます。具体的には形状を食い込ませるか、離すことで回避できます。

形状を離して非多様体を回避する 形状を食い込ませて非多様体を回避する

どうしても非多様体になる形状が必要な場合には、微小な隙間などを作成して回避します。3D CADでは1ミクロンの隙間があれば、非多様体を回避できます。

まとめ

3D CADでは非多様体が原因で作成できない形状が存在します。これらは、実際の機械加工でも製作できない形状です。加工困難な形状をモデリングした場合、meviyがエラーでミスを知らせます。設計者には検図ツールとしてもご利用いただけます。

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