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機械要素の基本!歯車、チェーン、ベルトの働きを解説

機械は、さまざまな働きをもつ部品を組み合わせて作られています。機械を構成する部品をまとめて「機械要素」といいます。機械の設計では、それぞれの機械要素に対する知識が欠かせません。今回は機械要素の中でも特に力の伝達に使われる「歯車、チェーン、ベルト」について、機能や種類などを解説します。

機械要素の基本!歯車、チェーン、ベルトの働きを解説

動力伝達の基本、歯車

動力伝達の基本、歯車

歯車は主に円盤の外周に歯がついた形状をしており、歯車同士をかみ合わせて動力を伝達する働きを持つ機械要素です。歯車は時計のような精密機械から、自動車、産業機械まで、非常に多くの機械に使用されています。
歯車の特徴は、かみ合わせる歯車の大きさを変えれば、駆動側と従動側の回転速度を変えられることです。これを「減速」といいます。自動車のトランスミッションや、ミシンのギアボックスなどは、複数の歯車を組み合わせ、エンジンやモーターから出力される回転数を、目的にあった回転数に変換するために使われています。
また歯車には、力の向きを変える役割もあります。かさ歯車やウォームギヤを使えば、回転の軸の向きを変えられます。このような機構は、自動車のタイヤに動力を伝える部分などに使われています。
歯車にはさまざまな種類があります。代表的なものを次に紹介します。

  • 平歯車
    円盤(円筒)の外周に、軸と平行な歯が切られた、最も一般的な歯車です。駆動側と従動側の回転速度を変えたり、回転方向を変えたりする際に使えます。
  • はすば歯車
    歯が軸と平行ではなく、螺旋(らせん)を描く歯車です。平歯車と同様に使用でき、平歯車よりも強い力の伝達に向いていますが、歯車を軸方向に移動させるスラスト力が発生するため注意が必要です。
  • 内歯車(リングギア)
    円筒の内側に歯がついている歯車です。自動車などに使用され、少ないスペースで大きな減速を得られるのが特徴です。
  • かさ歯車
    円錐台の側面に歯が切ってある歯車です。かさ歯車同士をかみ合わせれば、回転の軸を90°曲げることができます。力の伝達方向を変えたり、かさ歯車を組み合わせて回転の方向を変えたりできます。

大きな力の伝達に向く、チェーンとスプロケット

大きな力の伝達に向く、チェーンとスプロケット

チェーンとスプロケットの組み合わせも、動力伝達には欠かせない機械要素です。最もイメージしやすいのは、自転車のペダルと後輪をつないでいるチェーンです。スプロケットとよばれる円盤の外周の突起と、チェーンの穴をかみ合わせて動力を伝達します。滑りなどのロスがなく確実に動力を伝達できるため、大きな力の伝達に向いています。また、チェーンは基本的に鋼鉄材料を使用しているため、耐久性が高いのも特徴です。
動力側と従動節側のスプロケットの直径を変え、歯数を変えれば、歯車と同じように減速も行えます。

なめらかに力を伝達する、ベルトとプーリー

なめらかに力を伝達する、ベルトとプーリー

動力を伝達する機械要素では、ベルトとプーリーの組み合わせも良く利用されています。ゴムや金属のベルトをプーリー(回し車)に通して使用します。歯車やチェーンとスプロケットと異なり、機械的なかみ合わせではなく、摩擦力を利用して動力を伝達します。ベルトに歯がついており、プーリーの歯とかみ合わせるタイプもありますが、チェーンとスプロケットほどの強度はありません。滑りが発生するため動力の伝達ロスがある一方、動力側や従動節側がトラブルで停止してもなめらかにそれを吸収することができます。
近年ではCVTとして自動車の変速機などにも使用されるようになっています。
またベルトコンベアーのように、ベルトそのものに他の部品を搬送させる役割を持たせることも可能です。

まとめ

今回紹介した歯車とチェーンとベルトは、どれも動力の伝達を行う働きを持つ機械要素です。機械設計の際には、回転数や強度など、多くの計算が必要になる機械要素でもあります。それぞれの働きと構造をよく知ることが、正しい設計への近道になります。

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