機械設計 機構設計

機械要素の基本!カム、クラッチ、ブレーキの働き

カム、クラッチ、ブレーキは、応用範囲が広い機械要素です。身近にある自動車や二輪車をはじめ、さまざまな製品に使われており、機械を設計する上でかかせません。それぞれの働き、使われかたを見ていきましょう。

機械要素の基本!カム、クラッチ、ブレーキの働き

カムとは

カムとは

カムとは、回転と往復運動を別の方向の運動に変える機械要素です。動きを決めるカムの輪郭形状をカムプロファイルとよび、カムに対応する部品がこれに沿って動くことで、機械設計者があらかじめ決めた動きを再現します。おもに、あらかじめ決められた複雑な動きを正確に、くりかえし再現する用途に使われています。仕組みが単純なので信頼性が高く、部品点数が少ないのでコスト面でも有利といった利点があります。
カムにはさまざまな種類がありますが、代表的なカムと、その働きについて紹介します。

平面カム

平面カムには板カムと正面カムがあります。

  • 板カム
    カムプロファイルを持った板を回転、往復運動させ動きをコントロールします。
  • 正面カム
    板の面にカムプロファイルの溝を彫り、これを回転、往復運動させ動きをコントロールします。

立体カム

立体カムには円筒カムと端面カムがあります。

  • 円筒カム
    円筒の外周面にカムプロファイルの溝を彫り、これを回転運動させ動きをコントロールします。
  • 端面カム
    円筒の端面をカムプロファイルとなるように成形し、これを回転運動させ動きをコントロールします。

カムを使った製品でもっとも身近にあるものといえば、自動車のエンジンでしょう。エンジンは新鮮な空気をシリンダ内に取り込み、それをガソリンなどの燃料と混ぜた混合気とし、ピストンで圧縮して爆発させることで力を取り出しています。この空気の取り込み、そして爆発後に残った排気ガスを外に出すタイミングや量をコントロールしている部品が給排気バルブという部品で、さらにそれらを動かしているのがカムシャフトという部品です。これは各バルブに対応した平面-板カムが同じ軸に並んで組まれた部品で、バルブの開け閉めのタイミングや開く量をコントロールしています。他にもカムは工作機械やミシンなどに使用されています。

クラッチとは

クラッチとは

クラッチとは、2つの同心軸上にある動力伝達軸のうちの一方(駆動側)から伝わった動力を、任意のタイミングや決められた条件でその先(被動側)に伝えたり、遮断したりする働きを持つ機械要素です。自動車の運転免許をマニュアル車で取られた方は操作したことがあるでしょう。自動車を運転中に信号待ちで停車する時や、駐車の際に前進から後進に切り替える時にクラッチを使います。もしクラッチがなく常にエンジンの動力が車輪に伝わっている場合、こうした場面では毎回エンジンを停止させることになり、とても不便です。自動車に限らず、機械は使用中に一時的に動作を止めたり、またすぐに再開したりといった使われかたが多くあります。このため、エンジンやモータなどの動力を一時的に遮断する目的でクラッチが使われます。他にも、一方向の回転のみ伝えたり、決められた回転数以上で動力を伝達したりする特殊なクラッチもあります。
クラッチにはさまざまな種類がありますが、代表的なものを紹介します。

  • 噛合いクラッチ(ドグクラッチ)
    噛合いクラッチは、互いの動力伝達軸の端面にツメがあり、それらを噛み合わせたり、離したりすることで動力の伝達をコントロールします。ツメ同士が噛み合うため、停止中か、ごく低速運転中でなければ操作できません。二輪車のトランスミッションなどで使用されています。
  • 摩擦クラッチ
    摩擦クラッチは、互いの動力伝達軸の端面に摩擦に耐える部品を対向させ、それを押し付けたり、離したりすることで動力の伝達をコントロールします。短時間であれば互いに滑らせることができるため、滑らかな発進をしたり、動力の一部のみを被動側に伝えたりといったコントロールができます。クラッチとしてはもっとも一般的なもので、自動車をはじめ二輪車、産業機械など幅広く使われています。スクーターなども摩擦クラッチの一種である遠心クラッチを使っています。これはエンジンの回転数が一定以上になるとクラッチがつながるものです。
  • 流体クラッチ
    流体クラッチは、互いの動力伝達軸の端面に羽根車をつけ対向させ、それを油などで満たしたケースの中におさめたクラッチです。駆動側が回ると中の油が一緒につれ回り、動力が被動側にも伝わります。一時的に被動側を停止させた場合もケース中の油はかき回されますが、駆動側まで止まってしまうことはありません。オートマチック車の場合クラッチを意識することはありません。しかしトランスミッションの内部には、流体クラッチの一種であるトルクコンバータが使用されています。
  • ワンウェイクラッチ
    ワンウェイクラッチは、決められた一方向のみに動力を伝達する特殊なクラッチです。身近なところでは自転車のフリーホイール(ペダルを漕いでいないときも、慣性で進めるようにした機構)に使用されています。

ブレーキとは

ブレーキとは

ブレーキは、機械を減速させたり停止させたりする働きを持つ機械要素です。自動車や自転車でも使われており、なじみがあるでしょう。多くの場合は摩擦を利用しており、機械の運動エネルギーを熱に変えることで制動力(ブレーキの力)を得ています。
ブレーキにはさまざまな種類がありますが、代表的なものを紹介します。

  • 帯ブレーキ(バンドブレーキ)
    帯ブレーキは、ドラムの外周に鋼帯を巻きつけ、締めつけることで制動力を得ます。制動力は強いですが、環境によって効き具合が変化しやすいため、操作感が重要ではない用途に使用されています。
  • ドラムブレーキ
    ドラムブレーキは、ドラムの内周にブレーキシューとよばれる部品を押し付けることで制動力を得ます。トラックのパーキングブレーキやフォークリフトのブレーキに使用されています。
  • ディスクブレーキ
    ディスクブレーキは、ブレーキディスクをパッドとよばれる部品を押し付けることで制動力を得ます。ドラムブレーキは連続使用によって熱がこもりやすく、制動力が低下する欠点がありました。しかしディスクブレーキは構造上放熱性がよくこの懸念が少ないため、現在では自動車の標準的なブレーキとなっています。

まとめ

カム、クラッチ、ブレーキは機械要素のなかでも比較的複雑な機械に使われている部品です。機械設計では、このような機械要素の働きを考えた上でうまく組み合わせて、必要な性能と信頼性を持った製品にすることが大切です。

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