機械設計 機構設計

もしも設計ミスがあったら – 設計ミスの防止と対処方法について

機械や部品を設計する際には、要求される性能や強度を満たすよう、さまざまな計算や検証を重ねて設計します。しかし、もしその過程に誤りがありミスが見つかったら、どう対処すべきでしょうか。 起こってはいけないことですが、万が一のときのため、設計ミスの対応方法と防止について事前に確認しておきましょう。

もしも設計ミスがあったら - 設計ミスの防止と対処方法について

設計ミスは放置してはいけません

設計ミスは放置してはいけません

設計ミスに気づいたら、必ず対応をしなければいけません。「バレないなら……」と放置するのは危険です。

まずは上司などに報告し、問題を周囲に知らせましょう。設計ミスは火災と同じで、周囲の協力も仰ぎながら、できるだけ早い段階で対処したほうが、被害も少なくできるからです。逆に対応が遅れるほど問題は大きくなり、手遅れにもなりかねません。

設計ミスに気づいたら、周囲と情報共有を進めつつ、次のような対応を進めましょう。

  • どこに、どのようなミスがあったのかを整理する
  • ミスの度合いを確認する
  • ミスによる影響範囲を確認する
  • 影響する範囲に速やかに連絡する
  • 度合いに応じ、設計変更や出荷停止、現品回収などを行う

設計ミスといっても、予定より強度が低いものの安全率の範囲に収まっており、影響はほとんどないものもあります。一方で工場での組み立てに支障が出たり、使用者がケガをしたりするような重大な事故につながるものもあります。最も大切なのは、設計ミスによる影響がどの程度のものになるか正確に見積もることです。程度を軽く見積もってしまえば対策が不十分になりますし、過大に見積もれば、無駄なコストをかける結果になります。落ち着いてしっかりと状況を確認しましょう。

怒られそうだからとミスを放置したり隠したりしてしまうのは、かえって深刻な問題になります。絶対にやめましょう。また、組織としても日頃からコミュニケーションを取り、万が一のときにミスや困りごとが共有しやすい雰囲気を作っておくのも大切です。

設計ミスの代償

設計ミスの代償

もしも設計ミスを放置したり、気づかなかったりした場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

設計ミスのリスクは大まかに2種類に分けられます。製造過程における問題と、出荷後の問題です。

製造過程での問題は、たとえば部品が正しく組めないなど、製造ライン上やその後の検査工程などで問題が発覚します。工場のライン停止や出荷停止などにつながります。修正などのため生産計画の作り直しなど、多くの手間が発生します。

設計ミスがある製品が出荷され、すでに利用者の手に渡ってしまっている場合には、特に大きな問題になりやすいため、慎重かつ素早い対応が必要になります。製造物責任法では、欠陥がある製品を製造、販売した結果、購入者に損害があった場合、これを賠償しなければならないと定められています。利用者の元で事故が起こった場合には、損害額が非常に大きくなる可能性があります。訴訟に発展するケースもあり、企業イメージの低下は避けられません。特に利用者に被害が及ぶ可能性がある場合には自主回収(リコール)も視野に入れ、誠意をもって対応しましょう。

仮に大きな損害はなかったとしても「不良品」を買ってしまったユーザーはいやな気持ちになるでしょう。さらに近年ではSNSなどを中心とした個人による発信の影響も無視できません。不具合品の画像が投稿され、大きな騒ぎになるケースも発生しています。設計ミスの対応にはより一層スピードが求められるようになってきました。

設計ミスを防止するために

設計ミスを防止するために

機械振興協会(JSPMI)によれば、設計ミスを起こさないポイントは2つあります。1つは企業での組織的な管理です。もう1つは設計を行う「人」に対するものです。

組織的な管理においては、ISO9000(品質マネジメントシステム)が役に立ちます。ISO9000では、品質を管理する組織のマネジメントに対して標準を定めており、設計や検査に関する規約も設けられています。

人による設計ミスでは、設計が変更された部分や相互確認が必要な部分、ソフトウェアなどでのミスが多いといわれています。ミスが起こりやすい場所では特に、チェックシートを活用したり、DR(デザインレビュー)によるチームチェックを行ったりして、ミスを防ぐようにしましょう。

まとめ

機械や製品の設計は、今も個々の設計者の能力に大きく依存している分野です。人は生きていればミスを起こすものですので、組織の体制や設計の計画も含め、ミスを起こしにくい環境を整えるのも大切です。また設計ミスを見つけてしまった場合には、誠意と勇気をもって素早く対応しましょう。

お役立ち資料ダウンロード