板金加工 金属加工

切断加工とせん断加工の違いや特徴、使用時の注意点を解説

切断加工とは加工物を切り分ける際に使用される加工です。一方でせん断加工は切断加工とよく似ている言葉ですが、切断加工の一種になります。ここでは金属板に対する切断加工やせん断加工の種類や特徴について解説します。

切断加工とせん断加工の違いや特徴、使用時の注意点を解説

切断加工とせん断加工の違いと種類

切断加工とは加工物を切り、別々の物体に分離することをいいます。切断は、製造業だけでなく私たちの普段の生活の中でも多く用いられている加工のひとつです。また切断とよく似た言葉にせん断(剪断)があります。ここでは切断加工とせん断加工の違いや、切断加工の種類について解説します。

切断加工とせん断加工の違い

切断とは、ものをたち切る、切り離すことを意味します。つまり切断加工とは、加工物を切り離す加工です。のこぎりのような刃物で少しずつ削り取って切断したり、アークなどで溶かして切ったりなど、切断の方法にはさまざまな方法があります。せん断加工はそのような切断加工のひとつです。
せん断とは、物体をずらす方向に働く、入れ違う力を意味します。物体に対し、近い場所でずらす力が働くと、物体は力の方向に合わせて変形しようとします。そして変形しきれなくなったところで破壊的な切断がはじまります。これがせん断の仕組みです。私たちの最も身近にある、せん断を利用した道具のひとつが「はさみ」です。はさみは紙に対して上下にすれ違う力を利用して紙を切断しているのです。

はさみは紙に対して上下にすれ違う力を利用して紙を切断しているのです。

切断加工の種類と特徴

切断加工は、切断に使うものによって次の5つに分類されます。

  • ガス切断:ガスを燃焼させた熱によって鋼材を溶解、切断します。ガス切断機を使用し、溶接のようにアセチレンガスを燃焼させ、その炎で材料を溶かします。光を反射しやすい素材や比較的厚い板でも切断できるのがメリットです。一方で900度近い高温での加工になるため、熱による歪みや材料の変質が発生する場合があります。またステンレス鋼やアルミのような酸化しにくい素材は切断できないのもデメリットです。
  • 機械切断:工作機械による機械的な力を用いて切断する方法です。使用する機械によりさまざまな方法がありますが、切削やせん断が主な方法です。切削ではグラインダーなどを用いて、材料を少しずつ切ったり削ったりしながら切断します。せん断ではプレス機やシャーカッターなどを利用します。切削、せん断ともに切断速度が速いのがメリットです。切削による切断では、かなり厚い材料まで加工できますが、せん断では、あまり厚い材料の加工はできません。
  • ウォータージェット加工:水、または水に研磨剤を混ぜたものを細いノズルから噴射し、その勢いを使って材料を切断する方法です。加工熱が発生せず、チタンのようなほかの方法では切断しにくい材料も加工できます。水に濡れてはいけないものは加工できません。
  • 電気切断(プラズマ切断):電気を放電させたときに発生するアーク(プラズマ)の熱で材料を溶かして切断する方法です。加工物と電極の間にアークを発生させるため、電気を通す素材しか切断できません。一方でガス切断では加工できないステンレス鋼やアルミなども加工可能です。またガスやレーザーよりも厚い材料の切断が可能で、ランニングコストも低めなのがメリットです。
  • レーザー切断:レーザー光をレンズで集約し、その熱で材料を溶かして切断します。レーザーは光と同じ性質をもつため、かつては光を反射しやすいミガキ材ステンレス鋼などの加工は困難でした。しかし近年ではそのような素材でも加工できる機械が増えています。複雑で精密な形状を、美しい切断面で加工できるのがメリットですが、機械の価格が高いことや厚い素材の加工ができないのがデメリットです。

せん断加工の種類と特徴

せん断加工は切断加工の一種ですが、せん断加工にはさまざまな加工があり、工程や目的によって使い分けられています。ここでは代表的なせん断加工を5つ紹介します。

  • シャーリング(切断)加工:コイル材や定尺材のような大きな材料から、加工しやすい所定のサイズに材料を切り離す加工です。製造現場で使われる加工機に入るサイズの板を切り出す作業と考えるといいでしょう。主にシャーリングマシンという機械が使用されます。加工コストが比較的低めなのが特徴ですが、厚みのある素材の加工はむずかしくなります。
  • 打ち抜き加工(パンチング加工):打ち抜き加工という名前の通り、金属の板から、目的の形を打って抜く加工です。抜き加工の基本ともいわれています。紙をファイルする際に使う穴開けパンチと似ています。金型を使って抜くため、同じ形状の大量生産に適しているのが特徴です。
  • 切り欠き加工(ノッチング加工):金属板の縁の一部だけを切り落とし、切り欠き形状を作る加工です。ほかの加工と異なり、部分的に切り落とすのが特徴です。打ち抜き加工後に、切り欠きだけを追加したい場合や、モーターのコアのように切り欠きの多い形状を作る際に使用されます。
  • 縁取り加工(トリミング加工):画像などに行われる「トリミング」と同様、加工物の外周の余分な部分を切り落とす加工です。既にほかの加工が済んだ製品に対して行われるケースも多いのが特徴で、工程のどこでトリミングを入れるかは、コストダウンのポイントにもなります。
  • 分割加工:分割加工はシャーリング加工によく似た加工ですが、分断されたパーツの間に、破棄される余肉が存在するのが特徴です。おにぎりの包装フィルムで、頂点のテープを引っ張ると中央のフィルムが細く裂け、フィルムが左右に分割されるようなイメージです。

せん断加工で使われる機械は4種類

せん断加工は切断加工の分類では機械切断に該当します。そのためせん断加工にはさまざまな機械が使用されます。ここではせん断加工で使われる主な機械の種類と特徴について解説します。

シャーリングマシン

シャーリングマシンとは、はさみと同じように上下の刃で材料を挟んで切断する機械です。プレス機械の仲間になります。はさみで紙を切るときと同様に、薄すぎてやわらかい素材では材料が刃のすき間に沿って変形してしまい、切ることができません。また厚すぎる素材でもせん断に対して抵抗する力が大きくなってしまい切れません。材料により、切れる厚みが決まっています。

プレス機械

プレス機械とはプレス加工に使われる機械で、型で材料の板を挟み、高い圧力をかけて変形させる機械です。使用する型によって、材料を切ったり抜いたり曲げたりするなど、さまざまな加工が可能です。打ち抜き加工のほか、切り欠き加工や縁取り加工、分割加工ができます。専用の型を使用するため、同じ形状を大量生産するのに向いており、熟練の職人でなくても、精度の高い加工ができるのが特徴です。

タレットパンチプレス

タレットパンチプレスとは、プレス機械の仲間で汎用金型をセットして加工する機械です。タレパンともよばれます。使用される汎用金型は、丸や角など穴の形状として使われるものが多く、それらの形状を近い場所に連続で打ち抜くことで、さまざまな形状に加工できます。打ち抜き加工や穴開け加工に使用される機械です。汎用金型を使用するので、少量多品種にも大量生産にも対応可能です。

ファインブランキングプレス

ファインブランキングプレスとは、プレス機械の仲間で、精密せん断加工に使われる機械の一つです。板材を、抜く部分もそうではない部分も、上下から挟んで圧力をかけながら打ち抜きます。板材を強くおさえているため、ステンレス鋼のような加工が難しい素材でも加工でき、高い精度での打ち抜きが可能です。自動車用精密部品の加工法としての実績が増えている加工方法です。

切断加工・せん断加工を行なう際の注意点

板材の切断加工やせん断加工は、加工の仕組みにより注意しなければいけないポイントがあります。ここでは切断加工とせん断加工の注意点について解説します。

切断加工の注意点

切断加工では板の厚みに注意が必要です。基本的に切断加工は材料が厚くなると加工しにくくなります。鋼材の場合、加工しやすい材料の厚さは、次の通りになります。

  • 鋼板:厚さ13mm以下
  • 山形鋼:厚さ13mm以下
  • 丸鋼:棒径13mm以下

せん断加工の注意点

せん断加工も切断加工の一種ですが、加工できる板厚の目安は少し薄くなります。

  • 鋼板:厚さ9mm以下
  • 山形鋼:厚さ9mm以下
  • 丸鋼:棒径10mm以下

さらにせん断加工の場合、断面の精度と、せん断力を与える工具(パンチとダイ)のクリアランスに注意が必要です。たとえば、厚い材料を加工する際には、薄い材料を加工する際に比べ、パンチとダイのクリアランスを大きく取らなければいけません。しかしクリアランスが大きいとせん断時のダレが大きくなります。またバリが発生することもあり、せん断加工の後に、研磨やバリ取りなどの加工が必要な場合があります。

まとめ

切断加工とは、材料を切って分ける加工で、切断加工の一種にせん断加工があります。せん断加工は材料に対してずらす力であるせん断力を使って材料を分離する方法です。
切断の方法にはガス切断や機械切断のほか、電気切断やレーザー切断があります。せん断加工にはシャーリング加工や打ち抜き加工、切り欠き加工、縁取り加工や分割加工などがあります。せん断加工はシャーリングマシンやプレス機械のほか、タレットパンチプレスやファインブランキングプレスが使用されます。
切断加工は板の厚さに注意が必要で、おおむね13mm以下までが加工可能だと考えておくといいでしょう。