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CNC(コンピュータ数値制御)の基礎知識や用途、特徴を解説

IT技術の進歩にともない、製造業の現場でも業務の効率化を目指してIT化や自動化が進められています。なかでも、加工作業そのものを自動化する方法が「CNC(コンピュータ数値制御)」です。CNCを搭載した工作機械は「CNC工作機械」とよばれ、産業用の部品製造などに活用されています。安定した品質の製品を大量生産できる、安全性が高いといった点がCNCのメリットです。
今回の記事では、CNCの概要と用途、CNCのメリットとデメリット、CNCでできる加工方法などを解説します。

CNC(コンピュータ数値制御)の基礎知識・用途や特徴などを全て解説

CNCとは?

CNCは「Computer Numerical Control」または「Computerized Numerical Control」の略称で、コンピュータを使って工作機械を数値制御することです。工作機械の動き(移動方向や移動速度、加工量など)をプログラミングにより自動化することで、高品質な製品を安全かつ効率的に生産できます。
かつて、フライス盤や旋盤といった工作機械の操作は、職人が全て手作業で行っていました。しかしこの方法では、「職人によって仕上がりにムラが出る」「複雑な形状の加工ができない」「作業が効率化できない」といった問題が発生します。数値制御により工作機械の動きを自動化すれば、これらの問題を解決できるのです。
現在では、数多くの工作機械にコンピュータ数値制御が導入されています。さらに、CNC工作機械をCADやCAMと組み合わせれば、設計から加工までを全てコンピュータ内で完結することも可能です。

CNC工作機械の用途

数値制御で動作する工作機械は、自動車や医療機器、航空機などの部品をつくる際や、金型を加工する際など、さまざまな用途で活用されています。自由曲面加工や三次元形状の加工といった、汎用工作機械(数値制御ではない手動の工作機械)では難しい精密な加工を行う場合は特に重宝されます。また、工作機械によっては金属だけでなくプラスチックや木材などの加工も可能です。

CNCとNCの違い

CNCと似た用語に、NCがあります。NCは「Numerical Control(数値制御)」の略称で、CNCとは異なり「Computer(コンピュータ)」という単語を含んでいません。これらは何が違うのでしょうか。
NCは、トランジスタや演算回路といったハードウェアだけを使用して工作機械の動作を制御する方法です。1950年代に開発が進んだ技術で、データ読み込み用基板、演算用基板、サーボ制御用基板といった複数の基板を組み合わせて制御を行うのが一般的でした。
対してCNCは、NCの制御機構をコンピュータ(マイコン)に置き換えたものです。専用のプログラミング言語を使用して、工作機械の動作をソフトウェア的に制御します。ただし、近年ではNC装置にもコンピュータが搭載されるケースが多く、NCとCNCの区別はなくなりつつあります。

CNCの使い方

CNCで材料を加工する場合、おおまかに次のような手順で作業が進行していきます。

  1. 3D CADを用いて製品の3Dデータを作成する
  2. CAMでNCプログラムデータを作成する
  3. 必要な工具を用意し、工具を刃物台に固定する
  4. 材料を加工台にセットする
  5. 加工を開始する

CADは3Dデータを作成するツールであるのに対し、CAMはCADなどで作られた3Dデータを元に、NCプログラムを作成するアプリケーションです。NCプログラムとは、刃物の回転数や種類、工具の交換タイミング、工具の通り道などがプログラムの形になったものです。CAMを用いて、工具や加工条件を入力することで、自動的にNCプログラムが作成されます。プログラミングの知識などがなくてもCAMを使用することでNCプログラムが作成でき、CNC加工が可能になります。

CNCの特徴

続いて、CNCのメリットとデメリットを解説します。

CNCのメリット

品質が安定する

職人が手動で工作機械を操作する場合、製品の完成度にばらつきが出る可能性があります。たとえば、職人のスキルや熟練度によって製品のサイズや状態が変化したり、職人が機械を操作ミスして廃棄品が出たりするケースが考えられるでしょう。
CNC工作機械では、プログラムに基づいて自動で加工が行われるため、製品の品質を比較的安定させることができます。

大量生産に向いており、コスト削減につながる

CNC工作機械は数値制御により自動で加工を行うため、無駄な動きが少なく、通常は職人の手作業よりも早く加工が完了します。1個当たりの加工時間が短く、同じ製品を効率的に量産できる点がメリットです。
また、CNC工作機械の動作中は機械を監視するだけでよく、1人の職人が複数台の機械を担当できます。さらには、監視すら必要なく完全に無人で運転できるケースもあります。少ない人数で多くの製品をつくれるため、生産性の向上や人件費の削減が可能です。

安全性が高い

CNC工作機械は、職人が近くにいなくても自動で加工を進めてくれます。そのため、機械に巻き込まれたり、切りくずが飛んできてけがをしたりするリスクが少ない点がメリットです。とはいえ、工作機械のサイズに合わない被加工物(工作機械から突出するほど長い棒状の材料など)を使用すると重大なけがをする場合もあるため、機械の動作条件をしっかりと確認したうえで作業を行いましょう。

ATC機能と組み合わせて工具交換も自働化できる

ATCとはAutomatic Tool Changerの略でCNC加工の途中で自動で工具を交換する装置のことです。NCプログラミングにしたがい、フライスやドリルなど、あらかじめセットされた刃物を自動で交換し、加工をします。このような装置と組み合わせれば、機械を止めて人が刃物を交換したり、工程を分けて他の機械で加工しなくても、自動で加工が継続できます。また、刃物の交換に伴う作業時間などが短縮でき、効率のいい加工ができるようになります。

CNCのデメリット

設備が高価

CNC工作機械には、実際の加工作業を行う部分の他に、数値制御を行うコンピュータやソフトウェアなどが搭載されています。そのため、従来の汎用工作機械よりも非常に高価で、導入コストが高くなる点はデメリットです。また、別途CAMを用意しなければならないケースもあります。導入コストを回収できる見込みを立てたうえで、導入の検討を進めましょう。

加工前の準備が多い

CNC工作機械で加工作業を自動化する場合、「NCプログラムを組むための知識習得」「NCプログラムの作成と入力」「材料の位置決め」「材料のテストカット」といった多くの準備が必要です。従来の汎用工作機械よりも準備項目が多いため、最初の1個目を加工するまでに時間がかかってしまいます。自動加工による効率化と事前準備の多さを両方踏まえたうえで、トータルの作業時間を見積もるようにしましょう。

CNCでできる加工

世の中には、さまざまなCNC工作機械が存在します。CNC工作機械は、いったんスタートさせるとプログラム通りに自動で加工を続けてくれます。職人がいない夜間や早朝であっても加工を進められるため、稼働率や生産性を向上させることが可能です。また、手作業では難しい3次元的な形状も高い精度で加工できます。代表的なものを、いくつか紹介していきましょう。

CNCフライス盤

フライス盤にCNC機能を搭載したものが「CNCフライス盤」です。CNCフライス盤を使えば、フライス加工(固定した被加工物に回転させた刃物を当てて削る方法)を自動化できます。

CNC旋盤

旋盤加工(回転させた被加工物に固定した刃物を当てて削る方法)を自動化したものが「CNC旋盤」です。段付きの軸などが自動で加工できるようになります。また、0.001mm単位で加工できる機械も存在します。

CNC研削盤

研削加工(高速回転させた砥石を被加工物に押し当てて削る方法)に使用されるのが「CNC研削盤」です。砥石を自動で交換したり、研削の範囲を自動で制御したりします。

マシニングセンタ

マシニングセンタもCNCの一種です。CNC加工機のなかでもATCを備え「中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工を連続で行える」ものと定義されています。大きさや形、動かせる軸の数などにより多くの種類があります。

その他のCNC加工機

光エネルギーを使って被加工物を溶かす「CNCレーザー加工機」や、水を高圧噴射して被加工物を切断する「CNCウォータージェット切断機」も、CNC工作機械の一種です。

まとめ

「CNC(コンピュータ数値制御)」は、工作機械の動作をコンピュータで自動化することです。移動方向や移動速度、加工量などを工作機械にプログラミングしておき、高い精度で数値制御します。CNC機能を搭載した工作機械は「CNC工作機械」とよばれ、自動車や医療機器をはじめ、ものづくりのさまざまな分野で活用されています。
CNC工作機械を使えば、高品質な製品を安定して大量生産できます。職人が近くにいる必要がないため、けがや事故が減る点もメリットです。しかし、装置が高額である点や加工前の準備が多い点などはデメリットといえます。
業務の効率化や安全性向上に大きな役割を果たす、CNC工作機械。メリットとデメリットを両方検討したうえで、汎用工作機械との使い分けを検討しましょう。