プロフェッショナル連載記事 開発現場でプロジェクトマネジメント力を極める

活躍するエンジニアが持つプロジェクトマネージメントの知識と能力

製造業において、さまざまなプロジェクトを円滑に進めていくためには、エンジニアに対してもプロジェクトマネージメントに関する知識や能力が求められます。身につけた知識や能力は、プロジェクトを推進するだけでなく、個人の成長にも大きく貢献します。
この記事では、プロジェクトマネージメントの知識や能力が必要な理由に加えて、具体的な取り組みの内容を紹介します。当たり前に感じる方も多いかもしれませんが、実際の開発現場ではうまくいっていないことも多いため、一度振り返って頂けいただけると幸いです。

エンジニアにプロジェクトマネージメントの知識と能力が必要な理由

エンジニアには、担当領域の専門的な知識に加えてプロジェクトマネージャーのサポートが求められます。はじめに、その理由について解説します。

プロジェクトマネージャーだけではプロジェクトマネージメント業務をやりきれない

近年、複雑化するシステム開発において、プロジェクトマネージャーだけでは管理に必要な業務を完璧に行うことは難しくなっています。特に、技術領域が多岐にわたるため、専門性が高い領域をプロジェクトマネージャーは十分に理解できず、適切なかじ取りができない場合があります。
そこで、専門知識を持ったエンジニアにプロジェクトマネージメントの理解や経験があれば適切な判断と選択が可能になります。

エンジニア個人としてのキャリア構築に役立つ

エンジニアがプロジェクトマネージメントの知識や能力を持つことは、個人としてのキャリア構築にも役立ちます。担当領域の専門性を高めていくだけでなく、プロジェクトマネージャーとして活躍する道や製品企画など幅広い知識と経験が必要な道も開ける可能性があります。
また、プロジェクトマネージメント業務に携わることで一緒に仕事をする関係者が増え、そこで得た人脈が新たな選択肢を生み出すかもしれません。このように、専門性を深めていく以外の選択肢を持てるようになることは、個人のキャリア構築に対して大きなメリットとなります。

エンジニアに必要なプロジェクトマネージメントの知識と能力

プロジェクトマネージメント業務は多岐にわたります。その中でも、特にエンジニアが持っておきたい項目について紹介します。

広い視野でプロジェクト全体を見渡す(コスト・生産性・調達性など)

エンジニアの中には、自身の担当領域に集中しがちな人が多くいます。担当領域の品質を高めることは重要ですが、ときには全体のバランスの中で妥協しなければならない場合もあります。そこで、プロジェクト全体を見渡すことができる広い視野が必要です。
また、本来は自身の担当領域にも関係する内容なのに、必要な情報がうまく共有されないことがあります。自身の担当範囲に集中していると、これらの情報に気づけず、後で発覚した際に大きな問題になります。
例えば、性能の高さだけではなく、材料の調達性や量産性の有無、コスト面などについても日ごろから情報収集をしておくことで、プロジェクト全体の成功に繋がる判断ができるでしょう。
ただし、深入りしすぎると本来の業務に充てる時間が不足してしまうため、バランス取りが重要です。状況によって判断は変わるため、試行錯誤しながら感覚を磨いていく必要があります。

専門に近い領域で全体のバランスを取った判断をする

担当範囲が複数の領域にまたがる判断をしなければならない場合には、プロジェクトマネージャーにその判断がゆだねられることが多いです。しかし、専門性が高い領域で迅速な判断が求められる場合には、プロジェクトマネージャーが適切な判断をできない可能性があります。
そこで、専門知識を持ったエンジニア同士がお互いの状況を共有し、専門知識に基づいて全体のバランスを取った判断をすることが必要です。プロジェクトマネージャーに任せるよりも、望ましい結論に到達できる可能性が高まります。
例えば、本来のプロセスであれば設計に必要な情報がすべて揃ってから検討に着手するのが望ましい場合でも、それではスケジュールが成立しない場合があります。その場合、専門知識があれば、必要な情報の中でも優先順位をつけることができ、着手できる所から進めるという判断をすることで、スケジュールを成立させられる可能性があります。
これは、自身の担当領域だけを考えると最適解ではありませんが、全体のバランスを考えた場合には、望ましい判断であり、専門知識を持ったエンジニアでないとできません。

関係者と密なコミュニケーションで情報共有を図る

関係者が多い場での情報共有は、プロジェクトマネージャーに任せてしまいがちです。しかし、専門知識がないことから正しい情報が共有されず、勘違いで検討が進んでしまうこともあります。
状況を見ながら専門知識を持ったエンジニアが積極的に介入することで、正しい情報を関係者が理解しやすい表現で共有できます。その結果、誤解によるやり直しが発生せずにスムーズにプロジェクトを進めることが可能です。
例えば、顧客含めた製品全体の定例の場では、プロジェクトマネージャーが進行を行います。ある議題について、自身がメインの担当ではなかったとしても、プロジェクトマネージャーの発言内容や判断に違和感がある場合には、横から口出しをすべきです。
専門的な知識を持っていることで気づける場合もあるため、その後は直接自身が正確な回答をせずともメインの担当に話を振ることで、正しい情報が共有されるでしょう。

プロジェクトマネージメント能力を鍛えるための取り組み

エンジニアがプロジェクトマネージメント能力を鍛えるためには、常に担当領域外のことについても学び続ける必要があります。また、プロジェクトマネージャーの業務を補完するという意味合いでは、どのような点で困っているのか把握することも重要です。

担当領域外について学び続ける

自身の担当領域にこだわらず、全体のバランスを取れる判断を下すためには、専門知識だけでなく幅広い分野の知識が必要です。プロジェクトマネージメントに関する体系的な知識に加えて、扱う製品に関係する他の技術やコスト、生産技術などの知識を得るといいでしょう。
そのすべてを短期間で習得することは難しいため、自身の担当領域以外も学ぶという意識を持って仕事に取り組むことが重要です。近い分野であれば、日常業務に取り組んでいる中で、必要な知識を得られるため、少しずつ幅を広げていけます。
また、組織としては定期的に広い範囲での情報共有の場を設けること、負荷が大きくなりすぎない程度に業務のローテーションを行うことで、必要な知識を得ることが可能です。異なる領域の業務担当になれば、その領域で大事にすべきことを明確に理解できるため、関連部分の仕事を担当する際にも役に立つでしょう。

プロジェクトマネージャーの困りごとを把握する

プロジェクトマネージメントに関する知識や能力を身に付ける大きな目的は、プロジェクトマネージャーがカバーしきれない領域を補完することです。そこで、まずはプロジェクトマネージャーがどのような点で困っているかを把握する必要があります。
限られた時間の中で、効率よく効果的な知識や能力を身に付けるために、プロジェクトマネージャーに困りごとを抽出してもらい、それを他のメンバで解決するためにはどうすればいいか議論するといいでしょう。
困りごとは職場や個人によっても異なりますし、タイミングによっても変わる可能性があります。そこで、関係者で定期的に困りごとを共有する機会を設け、その中でサポートすべき項目を明確化できれば、どの能力を身に付ければいいか判断しやすくなります。

まとめ

プロジェクトを円滑に進めるために、プロジェクトマネージャーに求められる業務は年々難易度が上がっており、一人ではこなしきれない状況に陥ることがあります。深刻な人手不足の中、限られた人員で開発を効率的にこなしていくには、プロジェクトに関わるエンジニアにもプロジェクトマネージメントの能力や知識を身に付けることが要求されてきます。
一朝一夕でできるようにはなりませんが、まずはサポートをする必要があるという意識を持ち、主体的に担当領域外についても学んでいく姿勢が重要です。継続して取り組めれば、プロジェクトに不可欠な存在になると共に、キャリアの選択肢も広がるでしょう。