デジタルトランスフォーメーションの先をよむ - 今、そこにある未来 -プロフェッショナル連載記事

3DEXPERIENCE WORLD2023レポート第1弾-米国ナッシュビルで開催!3DXW2023 の概要

SOLIDWORKSの年次イベント『3DEXPERIENCE WORLD 20233DXW2023)』に、参加しました。今年の開催場所は米国南部のテネシー(Tennessee)州の都市、ナッシュビル(Nashville)です。

この年次イベントは1999年米国西部カリフォルニア州パームスプリング(Palm Springs)が第1回目のようです。私も今回の参加が10回目になりました。

これまでの開催では、新しい技術・ソリューション(製品)が紹介されてきています。今回のイベントでも将来の設計技術のトレンドを知ることができましたが、このイベントの魅力はそれだけではありません。

3DEXPERIENCE WORLD 2023開催地となったナッシュビル(Nashville)

アメリカ人の心に根差す音楽の中心地である都市で開催された3DEXPERIENCE WORLD2023のレポートとともに、会場で感じた「その先にあるDX」についてお話していきます。

3DXW2023開催地、ナッシュビル

この2年間はパンデミックの影響でVirtual(バーチャル)開催のみとなっていましたが、今回は待望の対面式メインで、Virtualとのハイブリッド開催となりました。

3DEXPERIENCE WORLD 2023

  • 会期:2023年2月12日~15日
  • 会場:Music City Center(Nashville)

ナッシュビルでは、パンデミック直前の2020年にイベントが開催されました。その際に、20年にわたって開催されてきたイベント「SOLIDWORKS World」をさらに発展させたもとして、3DデザインとすべてのSORIDWORKSに関わるあらゆるコミュニティ向けに「3DEXPERIENCE WORLD」という名称への変更が発表されました。なお、その回にも私は参加しています。

ナッシュビル「Music City Center」

ナッシュビル「Music City Center」

ナッシュビルは、カントリー・ミュージックの中心地であり、「ミュージック・シティ」と呼ばれています。

この街のメインストリートのブロードウェイ・ヒストリック・ディストリクト (Broadway Historic District)は音楽を聴きながらドリンクや食事を楽しむことができる店が並んでいます。

ミュージック・シティ「Broadway Historic District」

ミュージック・シティ「Broadway Historic District」

この地区を歩いていると、「この地に戻ってきた!!」というのが実感であり、日本よりも一足早くパンデミックの終焉を感じました。

世界はもう動いている!

#3DXW23モニュメントと筆者(土橋美博)

#3DXW23モニュメントと筆者(土橋美博)

3DEXPERIENCE WORLDとは

3DEXPERIENCE World は、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社のSOLIDWORKSおよび3DEXPERIENCE Worksを中心としたカンファレンスです。

参加者はこれら製品のユーザーであり、その職種は設計者・解析者・製造担当など様々です。また、起業家、経営者、学生、ビジネスリーダーも参加します。
そしてベンダーや販売会社(リセラー)も参加します。

SOLIDWORKS、3DEXPERIENCE WORKSに関わる全てのコミュニティが参加することで、3DEXPERIENCE Works ポートフォリオと SOLIDWORKS ECO SYSTEMといわれるデジタルエンジニアリング連携による業務効率化であり収益化について学ぶことができます。

さらにはハンズオンセッションで実際に体験することもできます。

この結果、参加者は知識の共有と、イノベーションを促進するために、全ての参加者の活気に満ちたコミュニティを結集することができます。多くの人と語ることは、3D推進者の私にとって、設計者としても糧になり、モチベーションとなっています。

その内容ですが、今回の3DXW2023では、DAY1(2/13)とDAY3(2/15)にはダッソー・システムズ社やダッソー・システムズ・ソリッドワークス社によるゼネラルセッションや、ゲストスピーカーによる基調講演が行われています。

DAY2(2/14)にはドメインセッションとして設計・解析(CAE)・マニュファクチャリングに関しての基調講演が行われ、3日間で200以上のテクニカルなセッションが、対面とVirtualで行われました。70以上のハンズオンセッション(実操作によるもの)や、MeetUpセッションといわれる共通の話題について議論するセッションが25以上あり、とても一人ではカバーしきれない数のセッションが開かれていました。

さらに展示会場が設けられ、工作機械、3Dプリンタ、PCといったハードウェアをはじめとするソリューションの展示や、ソリッドワークスが設計した製品など、様々なものが展示されていました。

3DEXPERIENCE WORLDに見る3D CADとその技術トレンド

過去にさかのぼると、2019年2月10~13日(現地時間)に米国テキサス州ダラスで開催された「SOLIDWORKS World 2019」で、初めて「3DEXPERIENCE」という名称が発信されました。

SOLIDWORKS WORLD2019での3DEXPERIENCE発表(2019年米国ダラス開催)

SOLIDWORKS WORLD2019での3DEXPERIENCE発表(2019年米国ダラス開催)

この時も、私はイベントに参加していましたが、その内容は「モヤっ」とした感じだった記憶があります。

2020年の3DEXPERIENCE WORLD2020では、「3DEXPERIENCEプラットフォーム」によって、ダッソー・システムズの豊富なソリューションの一部が利用できるようになる、いわばSOLIDWORKSの可能性を広げるという「3DEXPERIENCE.WORKS(ドットワークス)戦略」の基本的な考え方がベースとなり、ユーザーは、多彩な機能(アプリケーション)から必要に応じてフレキシブルに選択と利用することができると示されました。

そして、昨年(2022年)にVirtual開催となった「3DEXPERIENCE World 2022」では、これまでSOLIDWORKSブランドの最高経営責任者(CEO)を務めてきたGian Paolo Bassi(ジャン・パオロ・バッシ)氏が、新たに3DEXPERIENCE Works担当 エグゼクティブバイスプレジデントになったと発表されました。

同氏は昨年日本で開催された3DEXPERIENCE WORLD JAPAN2022にも来日され、このブランド戦略について話をしています。

#09「製造業における設計の未来像

SOLIDWORKSブランドは、SOLIDWORKS R&D(研究開発)担当バイスプレジデントのManish Kumar(マニッシュ・クマー)氏が新CEOに就任したということが発表されました。

そして今年はこの新しい体制発表後の最初の年次イベントとなりました。

SOLIDWORKSとその関連ソリューションは、これまで使用されているデスクトップ版といわれる机上のワークステーション運用による代表的な製品群であることはいうまでもありません。

3DEXPERIENCE WORKSは3DEXPERIENCE Platformクラウド戦略に基づいたクラウドコンピューティング技術を使用する製品群ですが、デスクトップユーザーであっても、クラウド版ユーザーであっても、製品開発プロセスに関わる全ての関係者をデジタルで繋いで、情報共有とコラボレーションを進めることが、新しい技術になっていくという方向性が今回明確に示されました。

3DXW2023での3DEXPERIENCE発表

3DXW2023での3DEXPERIENCE発表

3DEXPERIENCE Platform戦略を基本としたクラウドコンピューティングが強調され、この技術への傾向をさらに強めるものとなっています。

以前は、このプラットフォーム路線への抵抗を北米のユーザーから感じることもありましたが、もはやそれを感じることはありませんでした。北米や欧州などのユーザーは前向きに考え、これを受け入れ、さらにはその効果を既に体験しています

今回のイベントでは海外ユーザーのプラットフォーム活用による事例を見ることができました。世界はあるべき方向に既に動いています。

今回、渡米中にDXという言葉を聞くことはなく、ECO SYSTEMによる業務効率化であり収益化や、プラットフォーム戦略にみるクラウドコンピューティングを利用した知識や情報の共有やコラボレーションというものが、「ごく当たり前のものになった」と実感しました。

業務系はクラウド利用が高まるものの、エンジニアリング系では、いまだにこのクラウド利用に難色さえ示すこともある日本は果たして大丈夫なのでしょうか

本当に心配です。

クラウドの壁を無くす新しい連携ロールを発表

プラットフォーム戦略により「置いてきぼりにされている」とも感じる私自身も、あるデスクトップ版ユーザーです。そんなユーザーに向けて開催初日に、サプライズ発表がジャン・パオロ・バッシ氏からありました。

2023年7月1日から、デスクトップ版SOLIDWORKSの全てのシートを対象(保守契約必要)に、クラウド上の3DEXPERIENCEプラットフォームに接続/連携するためのロール『Collaborative Designer for SOLIDWORKS』を標準提供する

これにより、デスクトップ版SOLIDWORKS、3DEXPERIENCE SOLIDWORKS、SOLIDWORKS CLOUDのアプリケーションによる壁はなくなります。

SOLIDWORKS(デスクトップ版)のプラットフォーム連携

SOLIDWORKS(デスクトップ版)のプラットフォーム連携

情報では、日本国内では、7月1日付とはならないようですが、デスクトップ版のSOLIDWORKSで設計した3Dデータをクラウドにある3DEXPERIENCE Platformで管理・共有できるようになることは、いつでも、どこでも、どんなデバイスでも3Dデータにアクセスすることができ、製造業に関わるエンジニアだけではなくマーケティングなどの部門とも情報共有やコラボレーションが可能になります。

その日を待ち遠しく思います。

ロールとは
プラットフォーム上にあるアクセス可能な「場所」と考えます。このロールでは次のことが実現できます。

  • プラットフォーム上のコラボレーション スペースでファイルを検索、保存、管理
  • 製品ライフサイクル管理フィーチャーを使用して、ファイルをチームを構成するメンバーと共有しコラボレーションを行う
  • 3DEXPERIENCE Marketplace などの追加のアプリケーションおよびサービスにアクセスする

 

次回は、設計・解析・製造といった製品群別の技術トレンドについて、ドメインセッションから聞いた内容を私の感じたことを含めて報告します。

各セクションのラベルー次回予告「ドメインセッションから聞いた内容」とは?