金型とは文字の通り金属で作られた型です。金属加工では、鋳造や鍛造、プレスや板金などに金型が使われます。樹脂加工では射出成形の型やゴム成形の型にも使われています。しかし金型の用途はとても広く、フェルトやFRPの整形のほか、パルプモールドなどさまざまな場所で使われています。今回は、金属加工や樹脂の射出成形以外での金型の用途を紹介します。
目次
成型フェルトの金型
自動車の床やトランクの内部でよく見られる、立体的に成型されたフェルトの加工にも金型が使われています。フェルトは遮音性や断熱性に優れ、軽いため、多くの自動車の内装に使用されています。
1枚の大きなフェルトを自動車の内装に合う、複雑な凹凸をもった形状に加工する際にも金型が使われます。このような部位に使われるフェルトには、材料としてあらかじめ樹脂が混ぜられています。フェルトのシートを加熱し、金型でプレスして目的の形に加工します。またこの際、不要になるフェルトの外形をトリミングしたり、自動車の取り付けに必要な穴やスリットの加工をしたりすることも同時に行うことができます。
複雑な三次元構造の金型になるため、精度の高い加工が必要な他、金型のメンテナンスのときの測定などにも高い精度が必要になります。また、射出成形の金型に比べて大きいものが多いため、金型の製作や管理にも多くの労力が必要になります。
FRP用の金型
FRPとは繊維強化プラスチックのことです。エポキシ樹脂やフェノール樹脂などに、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維を混ぜ、強度を持たせた素材です。身近なところでは、浴槽や自動車、遊具、貯水タンクなどに使用されています。
FRPの成型方法は大きく分けて3種類あります。どの方法においても、成型には金型をはじめとした樹脂型や木型などを使用します。
- ハンドレイアップ法
手で積層することを意味する名前の通り、手作業で繊維と樹脂を成型する方法です。金属で作られた金型や樹脂の型などに繊維のシートをかぶせ、流動性のある樹脂を刷毛やローラーでしみこませていきます。自動車の飾り用のパーツなど、少量多品種生産に適しています。 - スプレーアップ法
金属や樹脂の型に、繊維と樹脂が混ざったものをスプレーで吹き付けて成型します。複雑で大きな形状を作るのに向いています。自動車の外装や、浴槽、タンクなどの製造に使われます。 - BMC法
BMCとはBulk Molding Compoundの略で、短く切った繊維と樹脂を混練したものを塊やペレット状にしたものです。通常の樹脂成形のように射出成形を行ったり、トランスファー(順送)プレスで成形したりします。このときの型には金型が使用されます。
パルプモールドの型
パルプモールドとは、紙でできた梱包材の一種です。古紙を材料に作られ、紙の卵パックや電機、電子製品の緩衝材として広く使用されています。軽くて丈夫で、環境負荷も低く、脱プラスチックの流れもあり、注目度が増している梱包材です。
パルプモールドに使われる金型は、ザルや茶こしのように、フレームになる部分に細かいメッシュが張られた構造をしています。三次元構造の金型を、古紙を溶かしたドロドロの溶液の中にくぐらせ、梳き上げます。梳き上げた後は、プレス型をかぶせて水分を絞り乾燥させます。
近年では試作や少量多品種生産においては、3Dプリンター製の型も使われるようになってきました。
まとめ
金型というと、プレス加工や鋳造、射出成形に使われるイメージが強いかもしれません。しかしここに紹介したように、さまざまな場所・用途で金型は使われているのです。