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決勝はまさかの◯◯対決! ロボットアームの剣道大会「第5回 ROBO−剣」レポート

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神奈川県立青少年センターで2017年7月16日、今回で第5回目となるロボットアームの剣道大会ROBO-剣が開催されました。これは、2足歩行ロボットの頂点を決める格闘協議大会「ROBO-ONE」の一部門で、将来は二足歩行ロボットによる剣道大会を目指しています。ROBO-ONEは、株式会社ミスミが特別協賛をしています。


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今回の出場グループは16組(内2組棄権)。エントリーリストはこちら。出場するロボットの部門は以下の通り。

-1・自律部門
ロボットアームにつながれた PC などにより自律で動作する剣道大会。

-2・遠隔操縦部門
カメラ映像のみを見ながら、操縦または半自律によりロボットアームをコントロールする剣道大会。ロボットを直接目視することはできない。

-3・入門部門
ロボットを目視可能で人による操縦で戦う剣道大会。入門者用に設けた部門で、初参加の場合に限る。2回目以降は自律あるいは遠隔操縦部門にのみ参加できる。
(ROBO−剣 競技規則より)

参加者はそれぞれの部門のレギュレーションに則ったロボットで大会に臨みます。今回の大会では、自律型ロボットが2体、遠隔操縦型ロボットが12体出場と遠隔操縦型ロボットが多く出場していました。

 

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競技は剣道と同様、面、胴、小手、突きが有効となります。赤い球が面、黄色が小手、青色が胴です。写真のロボットは、山口自動機械さんの『逡巡(しゅんじゅん)』

 

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開会前の控室では、出場チームがそれぞれ試合に向けて入念にロボットの最終調整をしていました。みんな目つきが真剣そのものです。

 

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開会に先駆け、一般社団法人二足歩行ロボット協会理事長、西村輝一さんより開会のご挨拶が。西村さんは「日本で昔から親しまれてきた囲碁もAIが参入し、今やAIが人間を倒すのは珍しくありません。剣道においても、ロボットが人間を打ち倒す未来はそう遠くないのではないでしょうか。今回の大会が、そうした発展の場になれば」と、参加者に語りかけました。

 

試合時間は3分3本勝負、技を出すときは必ず声を上げることなど、実際の剣道さながらのルールで行われます。また、竹刀を落としたり途中でロボットが壊れてしまったりした場合は反則となり、反則2回で相手に一本が与えられます。

 

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第1試合はteam.shinkai.labの「シンカイ君3rd」(左)とThe super coffee co. LTDの 「EG君 3号」が対戦。前者はエンドポイントや動作から各関節の位置や角度を求め、逆運動学から相手の座標を取得するシステムを搭載。後者は強化学習のAIを搭載したロボットです。

 

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審判のかけ声で試合開始。「シンカイ君3rd」が鋭い突きを繰り出しますが、有効打にはなりません。

 

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「EG君 3号」も負けじと面を狙いに行きます。息をつく間もないほどの試合展開、これがロボットの剣道か……と驚くほどのド迫力です。

 

試合は1−2で「EG君 3号」の勝利。途中で「シンカイ君3rd」の竹刀が折れてしまうトラブルはあったものの、初戦からかなり見ごたえのある勝負でした。

 

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1回戦は全部で5試合。もっとも注目が集まったのは、神奈川大学ロボットサークルのKU-剣「おにぎり」(左)と山口自動機械「逡巡」の対戦でした。

 

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「逡巡」は攻防における動きを自己判断する自律型ロボット。画像認識機能を導入し、機械が「色」を判断して攻撃を行うようプログラミングされています。製作者の山口辰久さんによると、数理計算でカメラ、アーム、竹刀の位置をすべて計算し、位置の補足を念入りに行ったとのこと。

 

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試合は下馬評どおり、青コーナー「逡巡」の勝利。「おにぎり」の機材トラブルがあったものの、「逡巡」による対戦相手の部位を正確に狙った的確な攻めが目立ちました。

 

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1回戦が終わり、準々決勝は全部で4試合。結果は以上のようになりました。

 

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準々決勝の第1試合は)とThe super coffee co. LTDの「EG君 3号」(左)とPrototype「nekari」(右)。両機の只者ならぬ立ち振舞に、緊張感が漂います。

 

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「nekari」の猛烈な剣さばきが炸裂! あまりの攻撃の力強さに竹刀を落とす場面もありましたが、最後は面ありで勝利。「EG君 3号」は上手く立ち回ったものの、あと一歩及ばず敗れてしまいました。

 

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準々決勝でひときわ盛り上がったのが、ターンN「ターンN」(左)とくまま「ガルー」(右)の戦い。赤コーナー「ターンN」も、今大会では数少ない自律型ロボットです。画像認識を導入し、相手への攻撃を全自動で行います。ただし、単なる全自動だと動きが単調になってしまうので、いくつかのパターンを切り替えているとのこと。一方、青コーナー「ガルー」は操縦型ロボット。人による操作ならではの剣技が際立ちました。

 

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自律型 vs 操作型の戦いの結果は……「ガルー」が胴打ちで2本先取し、勝利を収めました。

 

エキシビジョンマッチをはさみ、大会は準決勝戦へ。赤コーナー Prototype「nekari」(左)と青コーナーKupakuma「ウォルフラム」(右)の戦いです。

 

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お互い拮抗していましたが、「ウォルフラム」の狙いすました胴が「nekari」に見事にヒット。「ウォルフラム」が勝利し、決勝へ。「nekari」は自身の攻撃の反動で部品が飛び、反則を取られてしまいました。ROBO-剣においては、機体の剛性も強さの決め手の一つといえそうです。

 

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準決勝第2試合は山口自動機械「逡巡」(左)とくまま「ガルー」(右)の戦い。これまた自律型ロボットvs操縦型ロボットの対戦となりました。

 

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両者、操作にも熱が入ります。一挙手一投足目が離せません。ちなみに「ガルー」製作者くままさんは、一足先に決勝進出を果たした「ウォルフラム」製作者のKupakumaさんとご夫婦なのだそうです。

 

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試合は「ガルー」が勝利。決勝は、まさかの夫婦対決に! 操縦者のくままさんは「自動制御だからこそ、相手の動きが読みやすかった」と勝因を分析していました。

 

ファイナルバトルの前に行われた3位決定戦は、山口自動機械「逡巡」 vs Prototype「nekari」。試合は「nekari」の機器トラブルのため、「逡巡」の勝利となりました。

 

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いよいよ決勝戦です。会場のギャラリーも増えてきました。中には小さなお子さんの姿もチラホラ。みなさん興味津々です。

 

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kupapa「ウォルフラム」(左)とくまま「ガルー」(右)の夫婦対決。勝敗の行方はいかに…?

 

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審判の合図で試合がスタート。両者激しい攻防戦を繰り広げます。

 

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激闘の末に勝利を収めたのは、くままさんの「ガルー」。両者押しつ押されつの好勝負でした。

 

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全試合が終了し、表彰式へ。第5回「ROBO−剣」の優勝者・くままさんと「ガルー」には、ROBO-剣委員会委員長の三田宇洋さんより、優勝トロフィーと賞金20万円が贈られました。
くままさんは「ROBO−剣への出場は2回目。途中、かけ声を間違えてしまうミスもあったが、優勝できてうれしい」と喜びの声を語りました。

 

優勝: ガルー / くまま
準優勝: ウォルフラム / Kupakuma
第三位: 逡巡 / 山口自動機械
制御技術賞: EG君 3号 / The super coffee co. LTD
画像処理テクニック賞: 逡巡 / 山口自動機械
制御技術賞: iROBO-rk00 / iROBO
Futaba賞: 逡巡 / 山口自動機械、ターンN / ターンN
近藤科学賞: EG君 2号 / The super coffee co. LTD
ダイナマイザー賞: nekari / Prototype

ROBO−剣HPより

 

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決勝戦で惜しくも妻に敗れたKupakuma さん。「今日は勝ちたかったのですが……。やっぱりカミさんには叶いませんね」と、会場の笑いを誘っていました。

 

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三田さんは「今回のロボットには強化学習やディープラーニングなど、技術的なエッセンスが非常に高められたものが多く、見ていて感銘を受けました。今後もROBO−剣がどんどん発足していけたら」と、今後の展望を語りました。

 

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最後は出場者全員で記念撮影。今回のROBO−剣は非常にレベルの高い戦いが繰り広げられ、見ているだけでドキドキしました。技術力の高さや進歩にも驚かされ、いつかロボットが剣道で人間を打ち負かす日もそう遠くないのかもしれません。ROBO−剣の今後の発展に期待しましょう!

 

次回は2017年 9月23日 ~ 2017年 9月24日、同施設で二足歩行ロボット格闘技大会第31回ROBO-ONEが開催されます。さまざまなアイデアや技術を投入したロボットバトル。次回はぜひ、会場でその進化をチェックしてみてください!