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エッチング加工とは?使用される分野と設計のポイントを解説

エッチング加工は、金属などを微細に加工するため広く使用されています。
本記事では、エッチング加工の種類、使用される分野、設計のポイント、工程について分かりやすく解説します。

エッチング加工とは?

エッチング加工とは、金属を任意の形状に加工する方法の一種です。ミクロン単位で加工が可能なため、さまざまな電子部品、半導体部品、産業用部品の製造で活躍しています。
エッチング加工では、加工前の金属に製品パターンを転写し、残す部分だけをマスキングします。その後、マスキングされていない部分の金属をエッチング液やエッチングガスで腐食溶解し、任意の形状に加工します。
この製品パターンを転写するためには、あらかじめ原版の作成が必要です。この原版を使うことで同じ形状の大量生産が可能なため、エッチング加工はコストや量産性に長けた加工方法です。
金属を腐食溶解する方法には、溶液で溶解するウェットエッチングと、プラズマなどを使うドライエッチングがあります。

ウェットエッチング

ウェットエッチングは、酸やアルカリなどからなるエッチング液による腐食作用を利用した方法です。ドライエッチングより薬液や装置のコストが低く、腐食部以外へのダメージが少ないのが特徴です。

ドライエッチング

ドライエッチングは、真空装置内で反応性気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルを金属表面にぶつけ、不要部分を除去する方法です。
ドライエッチングは、特に半導体分野でより微細な加工が求められる場合に適しています。一方で、装置やガスは非常に高価であり、装置の管理には高い技術を要します。
半導体製造の分野では今後ますます微細な加工が求められているため、ドライエッチングは注目を集めています。

エッチング加工が使用される分野

エッチング加工は高い精度の加工ができるため、さまざまな分野で使用されています。

金属加工分野

エッチング加工は、鉄や銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウムなどさまざまな金属の加工が可能です。
プレス加工やレーザー加工では難しい複雑な形状でも、エッチング加工なら高い精度で実現できます。形状ごとに金型を作る必要がないので、短納期・大量生産にも適しています。

バリや歪みといった不良も生じにくく、各種フィルターや治具、封止キャップ、設備用のスペーサーなどの製品の製造に使用されています。

半導体製造分野

エッチング加工は半導体製造の分野では欠かせない加工方法です。
半導体のICチップ回路パターン製造では、基板(ウエハー)に回路を形成し、不要部分を除去します。この工程ではミクロン単位の精度が求められるため、エッチング加工が適しています。

他にも、半導体製造の後工程で使用されるリードフレームの製造にもエッチング加工が用いられます。リードフレームとはICチップを支持し、外部端子との電気的接続を提供する金属フレームで、部分的にエッチングやハーフエッチングされた銅などが主に使用されます。

ガラス加工分野

エッチング加工はデザイン性の高いガラスの制作にも使用されます。
エッチング液としてはフッ酸(フッ化水素酸)などが使用され、吹き付け方によって、不透明感や滑らかさなどを表現できます。

医療分野

高い安全性が求められる医療分野でもエッチング加工は欠かせません。
たとえば、補聴器で使われるフィルターでは、水を通さないようなミクロン単位の極小の穴あけが必要です。エッチング加工は高い精度の穴あけが可能なため、このフィルターの製造に適しています。
他にも、カテーテルや頭蓋プレートなどの多様な製品にエッチング加工が応用されます。

エッチング加工の設計ポイント

エッチング加工には原理的にさまざまな制約があり、この制約の理解はエッチング加工の設計ポイントになります。

エッチングの加工精度

エッチングの加工精度は、使用する金属の種類や板厚によって左右されます。材料が厚くなるとそれだけ金属を腐食溶解しなければならず、加工時間がかかり精度が低下します。

ウェットエッチングの加工寸法精度は一般的に板厚の±10%程度で、材料の厚さが0.3mmであれば+/-0.03mmの寸法公差と考えられます。
さらに高精度を求める場合は、ドライエッチングを検討したほうがいいでしょう。

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穴径と板厚の関係

エッチングさせたい部分の幅(穴径)は、板厚の1.1~1.5倍以上の寸法が必要です。穴径が小さすぎると十分にエッチング液が行きわたらないため金属を貫通できません。

また、エッチングさせない部分の幅(残し幅)も小さすぎると耐久性に問題があります。一般的な残し幅の最小寸法は板厚の50~100%です。

エッチング加工のアール設計

エッチング加工は腐食溶解により金属を加工する技術ですので、削られた金属断面の角部はU字のような丸みを帯びます。丸みの程度は金属の板厚によって異なりますが、一般的には内角は板厚の80%、外角は板厚の50%以下が目安です。

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エッチング加工の工程

1 原版を作成する

エッチング加工を行う前に、作成したい形状の原版を作成します。原版には、遮光部と非遮光部が表現され、図面をもとにCADで作成されます。原版は製品の寸法品質に影響するので、高い精度が必要です。
原版にはエッチング原版、マスク、マスクパターンなどさまざまな呼び方があります。

2 金属板を脱脂洗浄する

まず、金属の表裏を脱脂洗浄します。次工程で金属とレジストの密着強度を高めるよう、アルカリ洗浄液などで金属の表面についた油分や異物を除去するためです。

3 金属板にレジストを塗布する

次は金属の表裏全面にレジストのラミネート、あるいはレジスト液の塗布です。レジストは感光性を持つ物質で、光を当てると硬化します。
このレジストでマスキングされた部分はエッチングされないので、最終的に製品として残る部分となります。

4 金属板を露光し、原版を転写する

レジストの上に1の原版を被せて、光(紫外線)を照射します。原版の非遮光部にあたるレジストだけが露光し、原版の形状が転写されます。一方、原版の遮光部にあたるレジストは感光しません。

5 金属板を現像処理する

金属板を現像して、4で感光しなかったレジストだけを除去します。レジストが除去されると金属面が露出し、必要な部分だけがレジストでマスキングされた状態となります。

6 金属板をエッチング(腐食溶解)する

この金属表裏に、金属を腐食溶解させるエッチング液やエッチングガスを吹き付けます。レジストでマスキングされていない部分だけがエッチング(腐食溶解)され、必要な形状だけが残ります。

7 金属板から不要なレジストを除去する

エッチング加工後は、金属の表裏に残っているレジストの除去です。除去後は洗浄・乾燥を行います。

8 製品検査を行う

外観検査や寸法検査などを行い、品質に問題がないかをチェックして完成です。

まとめ

エッチング加工は幅広い分野で利用されています。特に我々の日常生活に欠かせない半導体製造において欠かせない技術で、今後もますます注目が高まっていくでしょう。