「架台(かだい/がだい)」は、機械設備を据え付ける土台(フレーム)であり、高い強度・安全性に加え、防錆・耐候性が求められます。
本記事では、架台の役割や用途別の種類、代表的な材質などについて解説します。設計・製作時に押さえるべきポイントや、設計者向けのQ&Aもまとめているので、最適な架台の設計・製作にお役立てください。
架台とは?意味・用途別の役割
架台とは?
架台とは、生産設備機器などを設置するための骨組み構造の製品です。柱と梁で構成されることが多く、搭載する機械・装置を確実に支える強度・剛性を有しています。機械・装置の性能を最大限発揮させるために、架台は安定した設置環境をもたらします。
用途により種類・設計着眼点が異なります。ここからは、代表的な「機械用架台」「装置用架台」「設備用架台」の3種類について、役割と特徴を見ていきましょう。
機械用架台
機械用架台は工作機械など大型・振動機器を安定させ、高精度加工と安全を支えます。高い強度と剛性が求められ、厚い鋼材や鋳鉄、コンクリートなどが使用されます。運転時の振動を吸収・緩和し、機械の安定性と加工精度の維持にも効果的です。据え付け面は平坦に仕上げられ、ボルト穴などで正確に固定できるよう設計されています。
装置用架台(検査・ロボット・半導体装置など)
装置用架台は、制御盤やサーバーラックなどの比較的小型で精密な機器の設置に用いられます。装置の精度・安定を支え、省スペースと保守性も両立します。
機械用架台ほどの剛性は不要であるものの、装置の重量や形状に見合った強度設計が求められます。素材には鋼材やアルミニウムが使われ、軽量で加工しやすいのが特徴です。配線ケーブルや配管の取り回しを考慮した機能的な工夫や、装置の効率的な配置、保守点検のしやすさのための構造も採用されます。
設備用架台(配管・空調・太陽光パネル)
設備用架台は、空調機器、ポンプ、太陽光パネルなどの建物付帯設備を設置するために使用されます。建物設備を長期に安全・安定設置するために架台が必要です。機器本体の適切な設置だけでなく、建物構造への荷重伝達と保護の役割も果たします。
耐震性や耐風性が重視され、屋上や屋外に設置される場合は耐候性・防錆性の高い素材が用いられます。メンテナンス性を考慮したレイアウトや点検口の配置、設備の重量や設置環境に応じた最適な材質(鋼製・ステンレス製・アルミ製など)の選定も大切です。
架台に使用される材質
ステンレス
ステンレスは、錆びにくく耐熱性にも優れる特性を持つため、クリーンさが求められる食品・医療業界の装置架台でよく使われます。一般的なオーステナイト系ステンレスのSUS304が汎用材料として知られており、より腐食に強いSUS316や、溶接性の良いフェライト系のSUS430も架台材料に採用されます。
ステンレス架台は、防錆処理なしでも高い耐食性を発揮できるため、薬品を扱う装置や屋外設備架台など、錆対策が重要な環境で有効です。鉄鋼に比べると材料コストが高い点や、加工硬化しやすい(加工中に硬くなる)点には注意しましょう。
鉄鋼
鉄鋼(スチール)は、最も一般的な架台材質であり、自動車分野から建築分野まで、あらゆる構造物に用いられる汎用材料です。機械架台でも多く使われており、安価ながら高い強度・剛性が得られる点が魅力です。
種類としては、一般構造用圧延鋼材(SS材、例:SS400)や溶接構造用圧延鋼材(SM材、例:SM400)などがあり、必要に応じて機械構造用炭素鋼(S45Cなど)も使われます。
鉄鋼架台は加工性・溶接性に優れ、大型から精密フレームまで幅広く対応可能です。鉄は無処理では錆びやすいため、防錆塗装やメッキ処理を施して使用するのが一般的です。
アルミニウム
アルミニウムは、鉄に比べて軽量で比強度(重量当たりの強さ)が高く、半導体製造装置や光学機器架台など、重量の削減が求められる分野で使用されています。代表的な材質としては、中程度の強度で溶接性も良い5000番系(A5052など)や、押し出し材に多い6000番系(A6063など)が挙げられます。
加工性が良く、複雑な形状の部材も製造しやすい反面、強度面では鉄鋼に劣るため、同等の強度を出すには断面を大きくするなどの設計上の工夫が必要です。
設計者が押さえるべき架台設計・製作ポイント
荷重・耐荷重計算と安全率
架台には、搭載機器の自重や運転時の動荷重、さらには作業者が加える力など、さまざまな荷重がかかります。荷重を正確に見積もり、安全率を加味して必要な断面・板厚を決定します。
強度と剛性を満たす構造にすれば、重量物を支えても変形せず、安定性を確保できます。必要に応じて、FEA(有限要素解析)などを用いて、応力分布やたわみ量を検証するのも良いでしょう。
振動・固有振動数と防振設計
工作機械など振動を伴う機器では、架台側で振動を吸収・隔離する防振対策が不可欠です。架台に重量と剛性を持たせて共振を避ける設計とすると同時に、架台と床の間に防振ゴムやスプリングダンパーを挟み込む方法が一般的です。
振動エネルギーを熱に変換して減衰させ、機械本体や周囲環境への振動の影響を低減できます。機械用架台には、運転時の振動・衝撃を緩和して機械の安定性を確保する役割があるとされています。
耐震・転倒防止
架台を建物や基礎に固定して設置する場合、地震に対する安全性も考慮しなければなりません。アンカーボルトやケミカルアンカーで床面に堅固に固定し、必要に応じてブレース(筋交い)を架台フレームに追加して水平剛性を高めます。
建築設備の架台では「建築設備耐震設計・施工指針」に基づき、高い耐震性が求められます。設備用架台では、構造体に合わせた耐震性が必須となるため、設計段階で想定される地震力に対する強度評価を行っておかなければなりません。
表面処理・塗装・防錆
架台の腐食対策(防錆)も欠かせません。屋内使用でも長期的には錆が発生する可能性があるため、表面に塗装を施したりメッキ処理を行ったりして素材を保護します。鉄鋼架台ならば下地に亜鉛メッキを施し、塗装も加えると耐食寿命を延ばせます。
ステンレスやアルミニウムは素材自体が錆びにくいものの、屋外での使用時は「もらい錆」や腐食環境に注意が必要です。環境に応じた適切な防錆仕様は、架台の寿命と安全性の向上につながります。
設計者が直面しがちな課題Q&A
架台の強度・剛性を確保するにはどうすればよいですか?
搭載機器の重量と運転時荷重を考慮し、必要な断面寸法や板厚を計算します。静的荷重だけでなく動的荷重も考慮し、安全率を乗じて設計することが重要です。
強度だけでなく剛性も重要で、厚肉の鋼材や鋳鉄製ベースで高い強度・剛性を確保するのが一般的です。必要に応じて補強リブやブレースで補強し、応力集中やねじれを防ぎましょう。
架台の防錆・表面処理はどう選べば良いでしょうか?
最適な表面処理は、使用環境と耐久年数によって異なります。屋内や湿気の少ない環境では簡易塗装が適しており、屋外や水・薬品がかかる環境では溶融亜鉛メッキが効果的です。
ステンレス製架台は通常無塗装でも錆びにくく、塩害環境ではSUS316の選択や塗装追加が検討されます。美観と防食性を両立したい場合は、無電解ニッケルメッキやアルマイト処理が効果的です。
振動が問題となる機器の場合、架台設計でどんな対策が取れますか?
振動対策では、架台の固有振動数を機器の振動数とずらすことが重要です。架台を頑丈にして固有振動数を上げるか、質量を増やして固有振動数を下げる方法があります。
重い架台は振動を吸収しますが、コストと搬送性に配慮した設計が必要です。防振ゴムやスプリングアイソレータを介し、振動の吸収と伝搬を低減します。
meviyマーケットプレイスでの架台製作
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装置用の精密架台やフレームをはじめ、さまざまな架台製品の見積取得から手配まで可能です。ステンレスやアルミ・表面処理などのバリエーションはもちろん、最大12,000mmの加工など、あらゆる架台製作のニーズに対応しています。
製作事例
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【産業機械業界向け】フレーム | |
材質 | SS400 | |
数量 | 1個 | |
サイズ | 板厚19t×X600×Y800×Z800mm | |
工程 | 溶接、機械加工仕上げ | |
単価 | 170,000円/個 | |
出荷日 | 20日目 |
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【産業装置業界向け】架台 | |
材質 | SS400 | |
数量 | 1個 | |
サイズ | 板厚3.2t×X2,000×Y800×Z2,000mm | |
工程 | 溶接 | |
単価 | 230,000円/個 | |
出荷日 | 15日目 |
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【産業機械業界向け】架台 | |
材質 | SS400 | |
数量 | 1個 | |
サイズ | 板厚70t×X2,300×Y1,600×Z600mm | |
工程 | 溶接、機械加工仕上げ | |
単価 | 550,000円/個 | |
出荷日 | 30日目 |
※2025年7月時点の情報
まとめ
架台は、機械や設備を支える「縁の下の力持ち」です。適切な設計・製作は、装置全体の性能や安全性に直結します。本記事では、機械用・装置用・設備用の架台の用途や特徴の違い、主要材質ごとの特性について解説しました。
強度計算から防振・耐震・防錆に至る設計上のポイントにも触れているので、設計者は内容を参考にして、扱う機器と使用環境に応じた架台を設計しましょう。架台製作の依頼先をお探しの際は、meviyマーケットプレイスをご活用ください。