連載記事金型設計『虎の巻』

金型設計『虎の巻』【第十四巻】
成形品の突き出しと取り出し

前回に引き続き成形品の突き出し機構について紹介していきますが、今回は突き出し後の製品取り出しについての内容も加えて4パートで紹介していきます。

 

  1. 製品突き出し後の製品保持
  2. 製品自動落下と取り出し機について
  3. 2段押し出し機構 その一
  4. 2段押し出し機構 その二

 

一、製品突き出し後の製品保持

成形機の取り出し機によって製品を金型から取り出し場合、自動落下ではない以上製品を突き出した時落下させてはいけない事になります。この場合突き出し後も製品が落下しない工夫をしなければなりません。

 

製品形状により様々な方法がありますが、意匠形状やリブを利用して直押コアやエジェクターピンで製品を保持する方法が一般的です。しかしあくまでも落下しないための保持なので、抱き付いてしまうような機構は避けなければなりません。

収縮による成形品のコア類への喰い付き力は思いの他強く、取り出し機のチャッキングでは引き剥がせない事が考えられます。

上図の中でも直押コア2のような配置は避けるべきです。

二、製品自動落下と取り出し機について

製品によりますが金型から突き出された後、自動落下で取り出す場合と取り出し機によって取り出しす場合があります。

自動落下の場合、成形機のエジェクターロッドで押出板を叩いて払い落とし、成形機下の箱に収納します。自動車部品のような意匠面の傷にシビアな成形品では取り出し機を使用し、様々なチャッキングで製品やスプルーをつかんで天側から取り出しします。

自動落下か取り出し機かの違いで金型に対する製品のレイアウトに配慮が必要になります。

 

例えば製品の意匠に傾きがある場合、上図のように製品が下向きに伏せている方が、金型の押出ストロークが小さくなり自動落下には有利です。

逆に取り出し機の場合は天側から取り出し機が降りて来ますので下図のように上向いている方が、取り出し機のストロークが小さくなり有利となります。アンダーカット等の諸事情により一概には決められませんが、自動落下・取り出し機の違いに留意する必要があります。

三、2段押し出し機構 その一

製品形状が複雑で傾斜コア・倒れコア・直押コアや角押出ピン等が多数入らざるをえず、製品突き出し後のコア類への抱き付きがあらかじめ予測される場合があります。

その解決策として2段押し出し機構という構造があります。押出板を3枚ないし4枚使用し、1段目の押し出し機構と2段目の押し出し機構を組込みます。

通常傾斜コア・倒れコア・直押コア・角押出ピン等離型抵抗の大きい物は1段目の押出板に組込みます。コア類から製品を引き剥がすのに有効な離型抵抗の少ない押出ピンを選抜し2段目の押出板に組込みます。

上図のようなカム構造を1段目の押出板に組込んで金型の4コーナーに配置し、カムが2段目の押出板を跳ね上げる機構になります。

 

カム構造に係わる部品群はいずれも磨耗が激しく、焼入れ・予備部品に配慮が必要です。通常のツバ付きの押出ピンで、1段目に入る物がない、あるいは少なければ1段目を1枚板にしてしまう事も可能でしょう。

この機構は各方向にスペースを必要とするため設計途中で2段押出に改造していく事は困難を極めます。また機構が大袈裟でコスト高になるので事前の協議が必要と思われます。

四、2段押し出し機構 その二

2段押し出し機構は特殊な機構です。注意しなければならない点が多々あります。

傾斜コア・倒れコアは基本的に1段目に組込まれているため、2段押し出しが始まる時点でアンダーカット処理は完了していなければなりません。

倒れコアは倒れ終わっている、傾斜コアは必要ストローク分動いている状態です。ただし傾斜コアは2段押し出し開始後もストロークし続けるので要注意です。

 

リターンピンは2段目に、押出板戻しスプリングは押出板全体を戻す荷重で1段目に、押出板ストッパーも1段目に設定します。押出板戻しスプリングと押出板ストッパーは2段目に設定するとカムに過大な負担をかける事になってしまいます。

また押出板戻しスプリングとは別に2段目押出板戻しスプリングを、2段目分の押出板を戻す荷重で設定しますが、裏面からの組付けとすると作業性が良いでしょう。

 

エジェクタースリーブピンを2段目に、センターピンを1段目に設定する事も可能ですが、2段目の跳ね上げ量がボス形状の深さを凌駕していなければなりません。

押出板戻り確認リミットスイッチは2段目の戻りを検知するようにします。

 

以上、第十四巻『成形品の突き出しと取り出し』でした。

今回紹介した2段押し出し機構は一例に過ぎません。2段押し出し機構をユニット化した商品もありますので最新の部品情報は“ミスミで検索”してみてください。

次巻も楽しみにお待ちください。

記事にて紹介された部品はコチラで購入できます!

  • 2段突き出しユニット(DCUMX、DCUMY

 

この記事の著者

モールデック
石田吉樹

1981年生まれ、愛知県出身。

学生時代、製図の楽しさに目覚め設計会社の株式会社モールデックに入社。金型設計を学び、大小様々な製品の設計業務を経て3D設計化プロジェクトに着手。現在は3D設計化の支援をメインに活動中。
最近ではスマートものづくり指導者として学んだIoT、AI技術を設計現場にどう活かしていくか?をテーマに活動中。

見事に中年になってしまった体に鞭を打ちマラソン、スノーボード、草野球と体を動かすことが好きです。格言は【未来と自分は変えられる】。

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