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3D CADでできる強度を意識した機械設計

3D機械設計では基本的な強度計算を行いますが、どうしても強度不足が原因の不具合は無くなりません。これは、個々の部品の強度を完璧に計算していない事が理由です。しかし、設計者が計算を忘れたのではありません。計算できなかったのです。その対策として、3D CADを使うと部品の強度を意識した機械設計を行うことができます。

部品の強度とは

強度の定義は材料が持つ変形や破壊に対する抵抗力です。簡単に言うと樹脂部品は手で撓ませることができますが、同一形状の鉄製の部品は手では撓みませんので強度があると言えます。機械設計に関わる学問に“材料力学”がありますが、強度に関わる要素として“応力”と“ひずみ”があり、計算方法も確立しています。

なぜ強度が計算できないか

機械を構成する部品で完璧に強度計算されている物は少数です。“歯車”、“ボルト”、“梁”などです。理由は材料力学の公式で簡単に計算できる単純形状だからです。しかしその他の部品形状は単純ではありませんので、公式が使えません。そこで設計者は経験と勘で強度を推測して、最後に試作実験で推測が正しいかを検証するのです。その結果、推測を間違う度に設計変更が必要となり開発期間が伸びてしまいます。

下図の例で説明すると、左の板金部品は単純形状なので公式で計算することができますが、穴が空いている2つの板金部品は強度を計算することができません。それではこの部品の中央に荷重が加わった場合、穴が1つの場合と2つの場合でどちらの強度が高いでしょうか?

3つの板金部品穴が少ない方が、面積が大きく強度が高いと推測できますが本当でしょうか? 設計者は日々この様な判断を、経験と勘に基づいて行います。
実際の強度をCAEで解析した応力分布で下記に示します。穴が1つの板金部品穴が2つの板金部品

穴が1つの板金部品が色の濃い応力が高い部分が多く、強度が低いことが判りました。実は推測とは逆の結果だったわけです。

3D CADで強度を可視化する

経験と勘による強度検討は、対面での診察だけで体内の病巣を言い当てるようなものです。実際の医師はレントゲン、MRIなどを利用して体内の病巣を可視化することで正確に診断を行います。
3D CADではCAEと呼ばれる解析ツールが利用でき、上図のような部品の応力分布を可視化することができます。これで経験と勘に頼らずに正確に診断ができますので、強度を意識した設計が可能になります。

常に強度を意識した設計

設計途中の部品形状は日々変化します。3D CADと連動したCAEは部品の変化に合わせて強度を可視化することができますので、設計者は常に強度を意識した設計ができ、手戻りの削減と品質向上により開発期間を短縮できます。

*現在のCAEは設計者が電卓代わりに利用できるほど操作が簡単になったので設計者に積極的に利用される設計者CAEと呼ばれます。

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