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試作品や少量生産品は3Dプリンタで加工できるか?

3Dプリンタは、バーチャルで作られた3D形状を、樹脂や金属などで現実に作り上げる機械です。未来的な機械として注目度も高く「何でも作れる機械」として扱われることもあります。一部の航空機や高級車などを中心に、最終製品を製造しているというニュースも見聞きします。しかし実際には精度などの面から「できないこと」も数多く存在します。特にサンプル部品の作成など、趣味以外で使用する場合には注意すべき点があります。今回は3Dプリンタにできることと、できないことや、注意点などについて紹介します。

3Dプリンタだからこそ可能になる形状

3Dプリンタだからこそ可能になる形状は少なくありません。例えば、金型を用いた樹脂加工では難しいアンダー形状や、テーパーのない高い立ち壁などの成形が可能です。また樹脂材料3Dプリンタでも、金属材料3Dプリンタでも、軽量化のために構造物の中の肉をメッシュ構造にするなど、従来の加工方法では作れなかった形状が作成できます。そのため、入り組んだ部品を一体化して成形したり、構造物の中に入り組んだ流路を作成するような加工は3Dプリンタの得意分野になります。また金型を必要としないため、試作などを目的とした数個からの少量生産にも向いています。

3Dプリンタの課題

一方で、3Dプリンタにも課題があります。精度の低さや、後処理を含めた工数の問題です。
3Dプリンタの発達は目覚ましく、3Dプリンタで成形された部品の精度は年々良くなっています。しかしやはり、従来の射出成形や切削などに比べると、難しさが残るのが現実です。積層のピッチは細かくなり、誤差も少なくなってはいますが、やはり積層に伴う層状の凹凸や誤差をなくすのは困難です。樹脂材料の光造形でも、ツルツルとした表面の部品を得るためには、成形後に研磨などの後処理を行わなければいけません。そのため、追加工をせずに他の部品と組み合わせるのは、まだ難しいのが現実です。映画などで描写されるような「3Dプリンタで作られた兵器がすぐに動いて戦力になる」という状況は、実際にはまだ不可能なのです。
溶けた樹脂を積層する以外の方式、樹脂溶液をレーザーで硬化させたり、金属や樹脂の粉末をレーザーなどで硬化させる方式の場合、硬化させていない部分の材料の除去も必要になります。特に粉末材料で複雑な形状を作成した場合には、吸引機などを使い、丁寧に残った材料を除去しなければいけません。
また特に金属材料の3Dプリンタの場合においては、成形中に部品がバランスを崩してしまわないよう、サポートと呼ばれる治具のようなパーツを同時に成形しなければならないケースが多くあります。このサポートの除去にも多くの手間と時間がかかります。
このように、3Dプリンタには、成形だけでなく、その前後にも多くの工数が必要です。そのため、成形そのものは早かったとしても、実際に使用できる部品を作成するには、多くの時間とそれに伴うコストが発生します。

3Dプリンタを使う前に知っておくべきこと

3Dプリンタには「出力サービス」を行っている企業も多くあります。他の樹脂加工や金属加工を行う加工業者と同じように、データを渡せば、その通りの形状を作ってくれます。出力サービスを利用すれば、3Dプリンタに扱い慣れていない人でも、3Dプリンタを購入することなく、3Dプリンタで成形した部品が入手できます。小ロットの生産や試作を行う際などに便利なサービスです。しかし前述のように3Dプリンタでの成形も、実はかなり多くの工数を必要とします。そのためコストが他の加工に比べて劇的に下がるケースは、そう多くはありません。「何か便利そう」という、漠然としたイメージで始めるのではなく、加工製品の必要性や手間・コストなどを理解した上で始めると良いでしょう。
3Dプリンタを購入する際にも注意が必要です。前述のように3Dプリンタにはできないことや、苦手とする加工もあります。また、より精度をよく仕上げるためには、ノウハウの蓄積なども欠かせません。さらに材料費や後処理にかかるコストなども決して低くはありません。そのため、せっかく購入した3Dプリンタでも、存分に活用できないままになっているケースもあります。

まとめ

「何でもできるすごい機械」というイメージをもつ3Dプリンタですが、実際には他の加工機と同じようにメリットやデメリットがあり、製品として使える加工品を作成するには様々な条件をクリアする必要があります。試作での活用は進んでいるものの、製品としての使用には、まだまだ多くの課題を残しています。また、加工前後の工数やノウハウの蓄積なども欠かせません。簡単に使えそうなイメージで取り掛からず、特徴を理解した上で活用しましょう。


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