塑性加工 金属加工

塑性加工って何? 他の加工法にない特徴とは

塑性加工は金属加工法の一つで、機械加工や鋳造にならび、よく用いられる方法です。材料に対して力を加えて変形させ、製品の形を作っていきます。赤く熱した鋼の塊をハンマーで叩きながらつくる、日本刀をイメージするといいでしょう。今回は塑性加工の概要とよく使われる種類、その製品例などについて解説します。

塑性加工って何? 他の加工法にはないその特徴

塑性加工とは? 人類が手にした最も古い金属加工法

塑性加工とは? 人類が手にした最も古い金属加工法

塑性とは、材料に力を加えて変形させ、力を取り去った後もその形が残る性質のことをいいます。対義語は弾性で、変形させてもバネのように戻る性質のことをいいます。材料に力を加えていくと、まず弾性による変形が起こります。この場合、力を取り去れば材料は元通りの形状に戻ってしまいます。しかしさらに力を加えていくと、ある程度以上の力を加えたところから塑性による変形が始まります。その変形では、力を取り去ってもその形が残ります。この性質を利用して製品の形を作っていく加工法を、塑性加工といいます。

はじめに触れた日本刀をつくる加工法は鍛造といわれ、塑性加工の代表的なものです。金属加工法としては最も古く、紀元前3000年頃の古代エジプトの遺跡からも、鍛造によって作られた装飾品が発掘されています。現代でもゴルフクラブのヘッドやエンジンのクランクシャフト、ロケットの部品など、日用品から特殊な製品まで、幅広く使われています。

塑性加工のメリット、デメリット

塑性加工のメリット、デメリット

塑性加工には次のようなメリット、デメリットがあります。

メリット

  • 材料の性質が改善される
    材料が大きく変形されるため、材料内部に残っていた残留応力などの欠陥を減らせたり、金属材料がもつ加工硬化という性質によって強度が向上したりします。また切削加工などのように材料の組織を切断しないため、最終製品としての強度も高く、大きな力がかかる部品の製造に適しています。
  • 加工時間が短い
    同じ形状をつくる場合には型を使うことも多く、大量生産に向いています。
  • 材料歩留まりがいい
    切削加工などのように、大量の削り屑が発生しません。必要な原材料の量が減るため低コスト化につながります。
  • 塑性加工でないと作れないものがある
    製鉄所で作られている板材のように、塑性加工ならではの製品もあります。

デメリット

  • 加工設備のコストが大きい材料に大きな力をかけて変形するため、大掛かりな加工機械や材料の加熱装置が必要なことが多いです。また型などの製作費用やメンテナンス費用も必要です。
  • 寸法精度がそこまで高くない塑性加工の種類や部品の形状にもよりますが、一般的に切削加工などと比較すると寸法精度は劣ります。このため、大まかな形状を塑性加工によって作り、精密な寸法が求められる場所については追加で切削加工を行うことも多いです。

主な塑性加工の種類とその製品例

主な塑性加工の種類とその製品例

塑性加工には主に次のような種類があります。

  • 鍛造加工
    金型や工具を用いて、製品の形状に成形を行う加工法です。加工には鍛造プレスやエアハンマーなどが使用されます。製品としては、家庭でも使うスパナなどの工具から、自動車用エンジンの部品、ロケット用の大型部品など、力がかかる製品を中心に幅広くあります。
  • 圧延加工
    回転する圧延ロールの間に材料を通して、潰しながら延ばして成形を行う加工法です。加工には圧延機が使用されます。製品としては、製鉄所で作られている板材、比較的太い棒材や管材などがあります。
  • プレス加工
    プレス型などを用いて、板材を製品の形状に成形を行う加工法です。加工にはプレス機が使用されます。製品としては、スチール製の家具やケース、自動車のボディなど、幅広くあります。
  • 押出し加工
    材料を圧力に耐えられる小部屋に閉じ込め、ダイスとよばれる製品の断面形状の穴があいた金型からところてんのように押し出して、一定の断面形状をもった長い製品に成形を行う加工法です。加工には押出しプレスが使用されます。製品としては、アルミサッシのフレームや、航空機の部品などがあります。
  • 引抜き加工
    押出しとは逆に、材料をダイスの外側から引っ張ることで断面積を減少させ、一定の断面形状をもった長い製品に成形を行う加工法です。加工には伸線機や抽伸機などが使用されます。製品としては、ワイヤーや、角材、パイプなどがあります。
  • 転造加工
    転造ダイスとよばれる、回転する工具を同じく回転する材料に押し付けて成形を行う加工法です。加工には転造盤などが使用されます。製品としては、ボルトなどのおねじをもったものや歯車など、強度が要求される大量生産品があります。

まとめ

塑性加工の概要とその種類、製品例について解説しました。塑性加工がもつ、少ない工程で一気に最終形状近くまで成形でき、強度ももった製品を低コストに大量生産できるといった特徴は他の加工法にはないものです。加工法を選ぶ際には、製作する部品の形状や機能を考えて、塑性加工もぜひ選択肢に入れてみてください。


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