こんにちは。工作ライターのたばねと申します。
近年では、3Dプリンターなどの新技術により、誰もがそれぞれ作りたいものを製作できるようになりました。3Dプリンターや切削機械などが設置されたFabスペースが、全国的に続々と生まれています。かく言う私も、よくお世話になっているうちの一人。当meviyブログでは<Fabスペース探訪>シリーズとして、各工作施設をご紹介していきます!
今回お邪魔したのは、品川ソニー本社にある社内Fab施設「ソニー・クリエイティブラウンジ」! スタイリッシュな内装デザインに期待が高まります。
案内してくれたのは、ソニーの新規事業創出部所属で施設の立ち上げに携わった田中章愛(あきちか)さん。学生時代はロボットの製作に明け暮れていたそう!
いったいどんな施設なの?
はじめまして!さっそくですが、こちらはどういったFabスペースなのか、その特徴を教えていただけますか?
ソニーの社員たちが、新しい製品やビジネスのアイデアを実践的に試せる場所です。ソニー社内には「Seed Acceleration Program(SAP)」という新規事業創出プログラムがあるのですが、いいアイデアでも実際にモノを作ってみないとどうなるかわからない。じゃあ、まずは試せる場所を作ろう!という思いで生まれました。
社内にそんな仕組みがあるんですね! これどう?ってなったら、考え込むよりすぐに作れちゃうわけですね。手を動かしながら考えられる場所っていいなぁ。こちらは社内の施設ですが、外部の人も利用できるんですか?
完全に解放しているわけではありませんが、ソニーグループ関連社員の紹介があれば一般の方でも利用登録ができます。たくさんの人が集まることで、異業種の人とアイデア出しをしたり、ここで知り合った人と協力して試作品を作ったりすることもありますね。
私も入りたい……! モノを作るだけでなく、幅広いつながりが生まれるってステキです。あれ? 何かほかにもたくさん製品が展示されていますね。
施設内で作られた試作品を展示しています。ここからすでに製品化されたものもありますよ。
そうです。施設内で試作品を作り試行錯誤を重ね、見事製品化を果たしました。
ちゃんとプロトタイプも展示されているとは! 他にもHUISとか、話題になった革新的な製品もここから産まれてるのか……。試作品ってなかなか見ることがないので新鮮ですね。
どんな設備があるの?
話題のアイデアや製品の種が生み出されるクリエイティブラウンジ。いったいどんな工作設備が揃っているのでしょうか? その施設や設備をご案内いただきました。
ここは最近作られた受付カウンター。取材時はクリスマスの季節だったため、ツリーが飾られていました。ソニー・コンピュータエンタテインメントのマスコットキャラクター「トロ」がちょこんと座って出迎えてくれます。
機材の予約等もタブレットで管理しています。グーグルカレンダーで一覧になっていると、把握しやすいですね。
Fabスペースといえば、鉄板アイテムの3Dプリンター。FDM式はもちろんのこと、紫外線効果方式(ポリジェット方式)の3Dプリンター(画像2枚目)も稼働していました。手厚い〜!
他にもCNCやレーザーカッター、基盤加工機まで!
こちらは、アクリル板や金属など様々な素材の表面に印刷できる「UVプリンター」。取材時も稼働していました。
ラベルを作れるプリンターまである! 普段見たことのないたくさんのプロ向け機材が、所狭しと並んでいてワクワクします。
こちらは真空成型器。加熱したプラ板を空気圧で型に密着させて型取りができる機械です。
これを使えば、ブリスターパッケージまで作れちゃうかも! 本当に何でも作れる気がしてきました。
こちらはハンダ付けなどができる作業台。田中さんいわく、ハンダゴテなどはこだわって良い機材を用意しているそうです。
ネジなどのパーツは、社内で不要になったものを使用。それぞれ種類ごとにラベルで管理されており、あのネジが足りない!なんて悩むことは少なそうですね。
近所の町工場から寄付された端材などが置いてある一角も。会社の垣根を超えたものづくりの交流にロマンを感じます。
取材に行ったのは平日の夕方だったのですが、実際に作業中の方も多く、活発な場所だな〜と感じました。
実際に作業されている方にお話を聞いてみました。
こちらはいったい何を作られているのですか?
Raspberry Pi(ラズベリー パイ)で、AIカメラみたいなものを作っています。まだプロトタイプですが。
利用者として、こちらのスペースはどのような場所だと感じていますか?
私はもともと外部でものづくりをしていたのですが、田中さんに紹介してもらってこの場所に入り浸るようになりました。機材が揃っているのはもちろん、みんなが「作るぞ!」というバイタリティにあふれており、声を掛け合いながら作業ができるのが魅力ですね。
作業されていた吉田顕一さんが製作していたAIカメラはこちらで記事になっているようです!
いろいろ聞いてみました
いろいろ案内していただき、ありがとうございました! 機材を中心に見ようと思ったのですが、和気あいあいと製作する人の多さに、”モノ”よりも”人”に意識がいきました。ここにいると仲良い人もできそうですね。
実際にモノを作っている人同士で交流があったり、チームができることもありますね。交流を目的としたイベントもあります。音楽関係など、まったく別部署の人がふらっと遊びに来たりもするので、新たな共鳴も生まれていく余地があると思います。
別部署や別事業の方の繋がりを作る場所でもあるんですね。
そうですね。規模が大きいからできたことですね。無線職人とかリチウムバッテリーに詳しい人とか、なかなか世の中では見かけない人も社内にはいるので。
大企業だけどもベンチャーのような取り組みができるのは、いいとこ取りですね!
最近だと、他社と一緒にワークショップや事業コンテストを開く機会も増えました。今までも個人レベルの勉強会はあったのですが、コンテストのような大きな規模で交流できるのはこの場ができてからですね。
風通しが良くなった、と。このクリエイティブラウンジができてから、社内でどんな変化がありましたか?
そうですね、気軽に作って試せる場所ができたことで、「やってみよう」「作ってみよう」という人が顕在化したと思います。もともと、そういう精神の人は今までもいっぱいいる会社だったのですが、より見えるようになったというか。
なんでも試せる場所があるってわかりやすいですもんね!
以前はそういった課外活動的なことは「机の下活動」なんて呼ばれていたのですが、最近は机の下じゃなくても……。
机の上でも!(笑)
まさに。あと逆に、紙の上だけでは実現性が測れなかったアイデアが、自分で作ることで具体化できて、より様々なことに挑戦できるようになりました。
確かに、アイデアは面白いけど実現性がない!で終わっちゃうこともありそうですからね……。
そういったことの繰り返しで個人のスキルアップが見込めたり、会社としてもいい事業案が出て来やすくなったりしたかな、と思います。
いいことづくめだ〜!
社内Fabスペース、今後の展望は?
今後この場所をどうしていきたい!といった展望はありますか?
大きく変えていきたいというのは、いまのところないですね。あまり混み合って今の利用者が満足に使えなくても困りますし。
なるほど、この規模だから維持できている良さもありそうですよね。
あとは、ソニーの別拠点のビルでもこのクリエイティブラウンジのような機能を持った場所が増えてきているので、そのロールモデルになれたらいいなと思います。例えば他のビルでこのような場所を作っても、そこにいる人の属性が合わないとうまく機能しない場所になってしまうので、そういうところを大事にしつつ、ノウハウを提供できたら。
環境だけポンと置いてあっても、そこにいる人と合わないと廃れちゃいますもんね。
そういうところで言うと、これからどんどん発展させたいというよりは、こういう場所を地道に続けられるといいなと思っています。
地味だけど大事なことですね。Fabスペースという概念を一過性のブームで終わらせず、持続可能な拠点になればってことですね! 本日はありがとうございました!
まとめ
社内Fabスペースを初めて訪問したのですが、こんなにもいい影響を内外に与える場所だったとは、想像をはるかに超えていました。と同時に、ものを作りたい!という創作意欲にあふれる人がソニーにはいっぱいいるんだなと感じ、これからのSAPの展開も楽しみになりました。
こんなふうに自由なモノづくりができるところが続けばいいな〜! 以上、現場からたばねがお届けしました。
取材・文:たばね 編集:ノオト
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