設計注意点その二

| 金型設計『虎の巻』【第三巻】

 

今回の虎の巻では前回の続編『設計注意点その二』を掲載。

前回に続き機構部品の成立性をメインに設計注意事項を紹介していきますが、特に製品内側のアンダーカット形状の処理に用いることが多い傾斜コア機構について詳しく紹介していきます。

傾斜コア機構は製品形状に影響される部分が多く干渉などの見落としが発生しやすい機構なので過去の不具合事例を含め5つのパートでご紹介します。

 

 

【一】アンダーカットの上り下りと傾斜コア

 

製品内側にあるアンダーカットの処理方向に上り下りがある場合、傾斜コアを採用します。押出板にコアの動き方向を制御する台を取り付けます。

 

 

このときの傾斜コアの動きは、下り(図1)の場合、成形機の突出スピードに対してだんだん遅れて行き、上り(図2)の場合、成形機の突出スピードに対して加速が付くように先行して行きます。

 

一般的に上り下りの角度は10°程度が限界と言われています。特に上りの場合、傾斜コア(傾斜ロッド)に対する負担が大きいので注意が必要です。

 

【ニ】傾斜コア・倒れコアと製品との干渉

 

傾斜コアは製品突出し時にコアを横へ動かしてアンダーカットをはずす機構ですが、コアが動き切った先に(コアのアンダーカット処理ストロークの範囲内で)干渉する製品形状がないことが条件となります。

 

 

上図のようなケースは傾斜コア不成立となってしまいますので、傾斜コアの平面的な形状を変形させる等して干渉形状を回避しなければなりません。製品形状次第で臨機応変な対応が必要になります。

 

 

尚、倒れコアはストロークが小さいので傾斜コアほどではありませんが、同様のことが言えます。

 

【三】傾斜ロッドの角度と補助ロッド

 

一般的に傾斜ロッドの角度は12~15°程度が限界と言われています。

 

しかし、アンダーカット処理ストロークが長い等の理由で、その限界を超えて傾けなければならない時は傾斜ロッドにかかる負担が大変大きくなってしまいます。この場合は補助ロッドを使用します。

 

 

補助ロッドは両端を可動主型底面と可動取付板で固定しますが、可動取付板の裏から組み付けができるよう配慮が必要です。また補助ロッド自体は全く作動しないので、押出板との干渉に充分な注意が必要です。

 

【四】傾斜コアと他の突出構造物との干渉

 

傾斜コアは製品突出し時にコアを横へ動かしてアンダーカットをはずす機構ですが、製品との干渉のみならず、一緒に押し上がってくる他の構造物との干渉も避けなければなりません。

 

傾斜コア同士あるいは傾斜コアと倒れコアというように横への動きがある構造物は特に要注意です。

 

 

金型の設計時に、a寸法が傾斜コアのアンダーカット処理ストローク+α取れているかを、断面的にも平面的にも確認しておく必要があります。

 

断面では、その傾斜コアの範囲内で最も高い位置の製品面を描くと良いでしょう。実際に押し上がった状態の絵を描いてみるのも方法です。

 

【五】傾斜補助ロッド

 

製品の形状や型構造上の制約等により、傾斜ロッド中心が、アンダーカット形状中心から平面的に大きく偏芯せざるを得ない時に使用します。

 

 

この補助ロッドは、適正角度より傾き過ぎた傾斜ロッドを補助するためのものではありません。
傾斜ロッドの動き方向と製品の離型抵抗という2つの相反する力によって傾斜コアに発生するねじれを矯正するためのものです。

 

傾斜ロッドの傾きを補助するロッドと違い、コアと反対側の端末はフリーで、傾斜コアと一緒にPL側から組付けます。押出板を押出ストローク分上げ切っても補助ロッドがブッシュと完全に嵌合しているだけの長さが必要です。

 

以上、第三巻『設計注意点その二』でした。

 

設計注意点はまだまだ尽きませんので次回も引き続き『設計注意点その三』を紹介していきます。

モールデック

石田吉樹

1981年生まれ、愛知県出身。

学生時代、製図の楽しさに目覚め設計会社の株式会社モールデックに入社。金型設計を学び、大小様々な製品の設計業務を経て3D設計化プロジェクトに着手。現在は3D設計化の支援をメインに活動中。
最近ではスマートものづくり指導者として学んだIoT、AI技術を設計現場にどう活かしていくか?をテーマに活動中。

見事に中年になってしまった体に鞭を打ちマラソン、スノーボード、草野球と体を動かすことが好きです。格言は【未来と自分は変えられる】。

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