設計注意点その三

| 金型設計『虎の巻』【第四巻】

meviyブログをご覧になっている皆さんご無沙汰しております。 

ご無沙汰している間に日本列島に上陸した台風21号。私の住む地方にももの凄い暴風雨が吹き荒れ、改めて台風の恐ろしさを認識させられました。皆さんご無事でしたでしょうか。

久しぶりの記事ですが前回に続き機構部品の成立性をメインに設計注意事項を紹介していきます。特に製品内側のアンダーカット形状の処理に用いることが多い傾斜コア機構について詳しく紹介していきます。傾斜コア機構は製品形状に影響される部分が多く干渉などの見落としが発生しやすい機構なので過去の不具合事例を含め4つのパートでご紹介します。 

【一】角傾斜コア 

通常傾斜コアは、コアに傾斜ロッド(傾斜ピン)を組み付けるタイプが主流ですが、製品形状や型構造上の制約等により、コアに傾斜ロッドを組み付けるだけの幅が取れないケースがあります。 

このような時は足回り部まで一体になった板状の角傾斜コアを採用します。 

逃げ穴の上下にガイド部が必要ですので、可動主型底面にガイドブロックを取り付けます。ロッド付傾斜コアのようなポケットが存在しないので、製品面の成形圧力で角傾斜コア全体が沈み込み易く、棚をつける等の配慮が必要と思われます。尚、角の傾斜は丸いロッドに比較して基本的に動きが悪いので、ロッド付傾斜よりも安全な設計が求められます。

【二】アンダーカットの製品部が薄い傾斜コアの折損対策

製品形状のアンダーカット部の中が狭いために、傾斜コアのアンダーカット部形状が薄くなってしまう場合があります。

図1のケースでは薄くなった部分が片持ちのはりとなり、上面に成形圧力を受けるので折れ易くなってしまいます。このケースでは次のような対策を取ります。

  • 傾斜コアの凹角の部位にRを付け、折れ易い部分への応力の集中を避ける。
  • アンダーカット部形状を別部品として柔軟性を持たせ、最悪折れても交換し易くする。

 

図2のケースではアンダーカット部形状の奥がバリ切り(形状が抜けている)となっています。この場合はアンダーカット部形状の奥に傾斜コアの受け面を設定します。こうすることで傾斜コアのアンダーカット部形状は、一端固定一端支持のはりとなり確実に強度が増します。ただしこの場合、受け面の距離分アンダーカット量が増えることに注意が必要です。この距離分をアンダーカット処理ストロークに足さなければなりません。

また、各々の対策の併用も有効でしょう。

【三】傾斜コア・倒れコアへの製品の取られ対策 その一

アンダーカットの形状にもよりますが、成形品の傾斜コア・倒れコアに対する喰い付力は想像以上に大きく、突出しの際成形品が、他の押出ピンや直押出コアの上を滑って傾斜コアに追従してしまう(製品が取られる)場合が考えられます。

アンダーカット部位の、アンダーカット処理方向への抜き勾配を極力大きく取ることは勿論ですが、製品形状によってはそれ以外にも金型の機構で、製品の取られを止めてやる必要が生じる場合があります。何個かある傾斜コアが全て同じ方向を向いているケース等はこの典型と言えます。

図1.のケースでは付近の押出ピン先端外周を削って製品裏面に浅いリング状のリブを設けることで取られ防止としますが、別途製品設計者との打合せが必要となります。図2.のケースでは付近のリブに押出ピンを掛け、図3.のケースでは製品の段差形状に押出ピンを掛けることで取られ防止をします。図2.・図3.のケースでは直押出コアでも有効でしょう。いずれのケースもアンダーカット形状との距離が近いほど効果的と言えます。

取られ防止の機構は、アンダーカット形状・製品形状により実に様々な方法が考えられます。状況に応じた柔軟な発想が大切です。

【四】傾斜コア・倒れコアへの製品取られ対策 そのニ

アンダーカットの箱形状の中に、製品の補強のための縦リブ、横リブ、あるいはその両方が入っているような場合等は、成形品の傾斜コアに対する喰い付力は大変に大きなものがあります。

このように大きな離型抵抗を持った傾斜コアの取られ対策としては、付近の押出ピンを利用して取られ防止したとしても、図1.のように箱形状そのものが変形して傾斜コアに追従する可能性があります。このようなケースでは傾斜コアから箱形状を、突き出し機構で直接引き剥がす必要があります。

図2.の機構では直押出コアを箱形状に引っ掛けて取られ防止しています。この傾斜コアと直押出コアとのバリ切り面には、平面的にも断面的にも合わせの角度が必要になります。また、傾斜ロッドと直押出ロッドが至近距離で交錯することになるので、両者の干渉あるいは押出板での足廻り部品同士の干渉に注意が必要です。

以上、第四巻『設計注意点その三』でした。

先日meviyちゃん(川野さん)から連絡をもらい『虎の巻』三巻で約5000ビューの観覧があったと聞きました。ご観覧頂いた皆さんありがとうございました。引き続き皆さんのお役に立てる情報を発信していきますので、これからも宜しくお願いします。

(石田吉樹/モールデック)

 

この記事の著者

モールデック
石田吉樹

1981年生まれ、愛知県出身。

学生時代、製図の楽しさに目覚め設計会社の株式会社モールデックに入社。金型設計を学び、大小様々な製品の設計業務を経て3D設計化プロジェクトに着手。現在は3D設計化の支援をメインに活動中。
最近ではスマートものづくり指導者として学んだIoT、AI技術を設計現場にどう活かしていくか?をテーマに活動中。

見事に中年になってしまった体に鞭を打ちマラソン、スノーボード、草野球と体を動かすことが好きです。格言は【未来と自分は変えられる】。

meviyを使ってみる

ピックアップ記事 ピックアップ記事