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図面管理の方法と留意点

図面は、設計の最終成果物として日々増え続きます。また図面は設計、生産技術、購買、製造、品質管理などの各部門での情報共有手段としても使われていますので、社内で大変重要な位置づけになっており、その管理は完璧でなければいけません。図面管理の方法や注意すべきポイントについて説明します

図面管理とは

図面管理とは、製品や部品の設計図面を効率的に整理・保存し、必要に応じて速やかに共有できるようにする手法や仕組みのことです。紙図面であれCADデータであれ、図面を適切に保管して常に最新の状態を維持することが目的となります。

製造業では、図面は設計部門の最終成果物であると同時に、生産技術、製造、品質管理、購買など多くの部門で参照される重要な情報資産です。そのため、図面管理にはバージョン管理やアクセス権限の設定、改訂履歴の記録といった要素も含まれます。

図面管理の重要性

適切な図面管理を行うことで、次のメリットがあります。

業務効率向上

図面を一元管理すると検索時間を大幅に短縮でき、設計・製造リードタイムを圧縮できます。また、共有基盤を通じて協力会社とも同じ図面を閲覧できるため、部門間コミュニケーションがスムーズになり、確認作業の往復も減少します。

ミス・手戻りの防止

最新版のみが配布・利用される仕組みを敷くことで、旧版図面による製造ミスや設計変更の周知漏れを防止できます。結果として再加工・クレーム対応のリスクが低減し、余分な材料費・工数も抑制されます。

情報資産の保護

図面には自社のノウハウや特許情報が含まれます。適切なアクセス権限と定期バックアップを組み合わせれば、漏洩・紛失・災害時のデータ消失を最小化でき、知的財産を長期的に守れます。

図面管理の方法とポイント

図面データの集中保管

図面ファイルは部署を問わずアクセスできる共有フォルダやデータベースに集約し、個人PC内や紙のファイルでバラバラに保管されている状態を避けます。一か所にまとめて管理することで、必要な図面をすぐに見つけられ、常に最新のデータを全員が参照できます。

バージョン管理と履歴の徹底

図面を更新する際は、最新版と旧版を明確に区別し、旧版も履歴として保管します。ファイル名に通し番号を付ける、変更履歴を記録するなどにより、誤って古い図面を使うリスクをなくし、いつ誰が何を変更したか追跡できるようにします。さらに、最新版以外を誤用しないようフォルダを分けるなどの運用ルールを設けることが重要です。修正理由をデータとして残しておけば、後任者でも改訂の意図を速やかに把握できます。

アクセス権限と変更フローの管理

図面の閲覧・編集権限は職務や部門ごとに細分化し、無許可の閲覧・改変を防止します。変更時は承認者を明確にしたワークフローを通過させ、作業履歴を記録することで、複数人が同時に編集して最新版が不明になる事態を回避できます。さらに、CADデータは設計部門など必要最小限のメンバーに限定し、アクセス制御を徹底することが重要です。

明確な運用ルールの整備

図面の登録・更新・配布に関する社内ルールや手順を文書化し、担当者全員に周知徹底します。例えば、図面番号の付与方法や改訂時の承認フローを標準化することで属人的な管理を排除し、担当者が変わっても一貫した管理を行えるようにします。

現在では多くの企業がデジタル図面の管理システムを活用しています。小規模なうちはエクセルで管理台帳を作ったり、ネットワークフォルダで手動管理したりすることもありますが、人手に頼る管理は限界があるため、可能であれば専用のPDM(製品情報管理)システム導入を検討すると良いでしょう。この後述する「原図庫」や「PDM」の考え方が、図面管理を実現する具体策として重要になってきます。

原図庫とは

手書き図面の時代には、出図後の最終図面はマスターとして原図庫と呼ばれる大きい金庫のような図面用の倉庫に厳重に保管されました。設計者といえども原図庫の図面を取り出すためには貸し出し手続きが必要となり、全ての貸し出し履歴も記録されます。筆者の設計者時代は図面の軽微なミスでも修正手続きが面倒で、上司にもバレるので、出図前の検図には緊張感がありました。また厳重に管理するため、図面配布の為のコピーも勝手にできません。コピー依頼を行う必要があり、コピー履歴も記録されます。

現在の原図庫とは

現在は製図器のドラフラーからCADに道具が進化したので、紙の図面を保存せずCADデータやPDF化した図面データを保存します。図面管理の要件として原図庫のセキュリティーは必要で、貸し出し、コピーなどを厳格に管理する必要があります。この原図庫機能を再現したのがPDM(Product Data Management)と呼ばれるツールで、下記の管理作業を行います。

  • 出図と入庫
    検図をパスした最終図面は、PDMで出図処理されることで書き込み禁止ファイルに自動変更されるので、誤って削除したり、変更上書き保存される事なく確実に保管されます。閲覧は自由ですが、書き込み権が無いので変更はできません。
  • 設計変更
    設計変更のためにPDMで設計変更のために図面を貸し出してもらう場合には、チェックアウトを行います。簡単にいうと、原図庫から図面を取り出し自分の机で変更することです。PDMは何時、誰がチェックアウトして、何時、変更して戻したかを自動的に記録します。またチェックアウト中の図面は、排他制御で担当設計者以外は一切変更する事ができません。
  • 最新版管理
    設計変更が多い場合でも、PDMはリビジョン(改訂番号のようなもの)で履歴管理を行いますので、つねに最新版の図面を利用することができます。したがって古い図面を誤って配布することがありません。また過去の図面も全て保存されていますので、履歴を遡って確認できます。

CADではPDMが必須です

CADを利用するすべての会社で、図面管理にPDMを導入している訳ではありません。理由は、図面をプリントアウトして、以前の原図庫管理に類似した図面管理を行うことができるからです。しかし2D CADから3D CADに道具が変わってくると、図面とセットで3次元アセンブリ管理を行う必要があり、手動での管理では限界が来てしまいます。PDMを利用すれば面倒な図面管理から解放され、設計本来の業務に集中することができます。

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