ものづくり基礎知識 金属・樹脂の材料

フラットバー(平鋼)とは?【後編】加工で変わる表面仕上がりと精度|フラットバーの特長

フラットバー(平鋼)とは?【前編】では、フラットバーでコスト削減できる理由や、「4F材」「6F材」との使い分け例をご紹介しました。後編では、加工やフラットバーの種類で変化する「表面仕上がり」について、画像付きでご紹介します。今後のフラットバー選定にお役立てください。

「表面仕上がり」と「精度」 フライス加工の有無で比較

下記の【1】と【2】の部品は、どちらもマシニングセンタ(加工機)で製作した切削部品です。写真をクリックすると、部品表面と側面の仕上がりの違いがわかります。

【1】と【2】の部品、どちらがフラットバーから製作した部品だと思いますか?

【表面】
※クリックで拡大

「表面仕上がり」と「精度」 フライス加工の有無で比較_表面

【全体】
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「表面仕上がり」と「精度」 フライス加工の有無で比較_全体

【側面】
※クリックで拡大

「表面仕上がり」と「精度」 フライス加工の有無で比較_側面

答え:【1】がフラットバーから製作した部品です!

【1】 【2】
フライス加工
してある面
フライス加工してある面_切断面の2面 フライス加工してある面_切断面の6面
表面仕上がり フライス加工の加工痕なし フライス加工の均一な加工痕(図1)あり
精度 (【2】に比べ不均一) (均一な平面で精度が高い)

フラットバーの「表面仕上がり」と「精度」について

フラットバーの「表面仕上がり」と「精度」は、フラットバー自体が製作される際の塑性加工(※1) によって違いがあります。今回は、その塑性加工によって、どのような違いがあるかをご紹介します。

※1 金属を目的のかたちに変形させる金属加工のこと

次は、フラットバーの代表的な種類をご紹介!
「表面仕上がり」と「精度」をその種類で比較します。

フラットバーの仕上がりを左右する加工工程

フラットバーの金属や加工の種類、表面仕上がりが分かれるフラットバーの塑性加工についてご紹介します。

フラットバーの種類について

フラットバーの金属や加工の種類についてご紹介します。

フラットバーの代表的な金属の種類

代表的な種類として「鉄:SS400」「ステンレス:SUS304」「アルミ:A6063」があります。

フラットバーの代表的な金属の種類_SS400
フラットバーの代表的な金属の種類_A6063
フラットバーの代表的な金属の種類_SUS304

加工の種類

金属からフラットバーが作られる加工方法は、以下(オレンジ箇所)の部分です。

【A】フラットバーが作られる塑性加工の工程(1)圧延(2)押出し・引抜き【B】フラットバーを使った部品製作の工程_切り出し→削り出し→その他の加工(図中左側)フラットバーの加工工程|フラットバーの表面仕上がりはここで決まる!

フラットバーが作られる代表的な加工方法は大きく分けて、(1)圧延加工と(2)押出し・引抜きがあります。この加工方法によってフラットバーの中で「表面仕上がり」に違いがでます

表面仕上がりが分かれる!フラットバーの塑性加工について

(1)圧延加工と(2)押出し・引抜き加工がフラットバーの「表面仕上がり」にどう影響するのかを以下でご紹介します。

(1)圧延加工について

【圧延加工イメージ】
圧延加工イメージ

材料をロールとロールで挟み、圧力を加えて伸ばして材料をフラットバーの形状にする加工です。ロールとロールの間隔を変えて板厚を調整します。

圧延加工には、「熱間圧延」と「冷間圧延」の大きく2種類あり、それぞれ特長が変わります。以下に特長をまとめました。

熱間圧延と冷間圧延の比較表

圧延加工種類 加工方法 特長 表面
仕上がり
精度
熱間圧延 硬化を生じない温度で
圧延する加工
  • 硬化しない温度のため、比較的小さい圧力で加工できる
  • 残留歪が小さく、コストを抑えやすい
  • 黒皮(ミルスケール)と呼ばれる酸化被膜の表面が生成される

規格表記例:黒皮材・HOT材・SPHCなど


表面が不均一。
光沢をもたない
×
冷間圧延 室温で圧延する加工
※冷却するわけではない。
  • 熱を加えないため、加工の作業性はよい
  • 硬度が高くなる
  • 硬化している状態で加工するため、残留歪が大きい
  • 熱間に比べ加工性が劣り、コストは上がりやすい

規格表記例:ミガキ材・COLD材・SPCCなど


表面が滑らか。
光沢がある

※〇△×は熱間圧延と冷間圧延との比較です。

熱間圧延されたフラットバーを利用する場合、 表面仕上がりや精度は落ちますが、コストメリットがあるため、コストを重視する際に利用されやすいです。また、 冷間圧延されたフラットバーを利用する場合、 寸法精度が高く表面が滑らかな仕上がりになるため、外観や精度を重視する際に利用されやすいです。

(2)押出し加工と引抜き加工について

圧延加工と同様に塑性加工の方法として「押出し加工」 「引抜き加工」があります。「押出し加工」は材料を押し出して加工する方法、「引抜き加工」材料を引き抜いて加工する方法とい違いがあります。

【押出し加工イメージ】
押出し加工イメージ

【引抜き加工イメージ】
引抜き加工イメージ

押出し加工と引抜き加工の比較表

加工種類 加工方法 特長 表面
仕上がり
精度
押出し 圧力をかけ金型(ダイス)の隙間から材料を押し出す加工
  • 押し出された表面は滑らかできれい
  • 破断しやすい材料でも加工ができる
  • 断面が複雑なものも成形できる

規格表記例:押出材など

引抜き 材料の先端をつかみ、金型(ダイス)から材料を引っ張りだす加工
  • 表面は光沢があり滑らかできれい
  • 材料を加熱しないため、強度低下を防げる

規格表記例:引抜き材・SUS304-Dなど

※引抜き加工されたフラットバーは「-D」と表記。

※〇△は押出し加工と引抜き加工との比較です。

引抜き加工は表面仕上がりや精度がよく、一方で押出し加工は加工性がよい特長があります。特に押出し加工は、複雑な形状や破断しやすい材料に採用されることが多いです。加工方法の特長と材質の特性などによって加工方法が選択されます。

フライス加工有無の表面の違いを比較

メビー切削角物では各種フラットバー材質に対応していますフライス加工した部品との表面の違いを、画像で確認して選定に役立ててください。

メビー切削角物のフラットバー
材質 加工種類 納期 イメージ図
SS400-D 引抜き 標準納期6日目出荷
(最短3日目出荷)
メビー切削角物のフラットバー_SS400-D
S45C-D メビー切削角物のフラットバー_S45C-D
アルミ A6063S 押出し メビー切削角物のフラットバー_A6063S
ステンレス SUS304-D 引抜き メビー切削角物のフラットバー_SUS304-D

SS400-D

加工種類:引抜き
表面処理:四三酸化被膜
SS400_加工種類:引き抜き

表面比較※クリックで拡大
SS400_四酸化酸化被膜

【1】 【2】
材質 SS400-Dのフラットバー SS400
フライス加工 なし あり

S45C-D

加工種類:引抜き
表面処理:なし
S45C_加工種類:引き抜き

表面比較※クリックで拡大
S45C_表面処理なし

【1】 【2】
材質 S45C-Dのフラットバー S50C(相当)
フライス加工 なし あり

A6063S

加工種類:押出し
表面処理:黒アルマイト
A6063S_加工種類:引き抜き

表面比較※クリックで拡大
A6063S_黒アルマイト

【1】 【2】
材質 A6063Sのフラットバー A6061
フライス加工 なし あり

SUS304-D

加工種類:引抜き
表面処理:なし
SUS304_加工種類:引き抜き

表面比較※クリックで拡大
SUS304_表面処理なし

【1】 【2】
材質 SUS304-Dのフラットバー SUS304
フライス加工 なし あり

メビーはフラットバーが標準6日目出荷!
お手元の設計で試してみませんか?

フラットバー規格対応表

メビーの切削角物で利用できる材質別のフラットバーの規格は以下の通りです。

  • 材質:SS400-D・S45C-D・SUS304-D・A6063S
  • サイズ:全長(X) 10≦X≦500
  • 出荷日:標準6日目出荷・最短3日目出荷
    (表面処理あり:標準8日目出荷・最短4日目出荷)
  • 加工:面取り・穴形状のみ対応。
    ※ポケット形状はフラットバー以外の材質を利用ください。

フラットバーXYZ説明用イラスト

※詳しくは、技術マニュアルをご確認ください。

※保存や印刷が可能な、PDFのダウンロードはこちらをクリックしてください。

フラットバーの見積方法

  1. 3D CADデータをアップロード後、「切削」を選択してください。
  2. 「基本情報」のタブ・「材質」の項目をクリックするとプルダウンが表示されます。
  3. 材質内にある「SS400-D」・「S45C-D」・「SUS304-D」・「A6063S」のいずれかを選択してください。

※プルダウンに表示されない場合は、規格の寸法に対応していないため、「フラットバー規格対応表」をご確認ください。

フラットバーの見積方法

今回の事例で紹介した左記形状の3D CADデータをアップロードして納期の差を確認してみませんか?
>>サンプル3D CADデータのダウンロードはこちら

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