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パンチングメタルとは?特徴や種類、規格などを紹介

パンチングメタルは、穴がたくさんあいている金属の板で、家電、自動車や建築物、機械などさまざまな用途で使われています。
身近な例としては、パソコンの吸気口のように丸い穴がきれいに並んでいるパンチングメタルをイメージしやすいでしょう。ですが、用途に応じてさまざまな形状の穴をあけたものがあります。
本記事では、パンチングメタルの種類や特徴、規格や使用事例などを紹介します。

パンチングメタルとは?特徴や種類、規格などを紹介

パンチングメタルとは?

パンチングメタルについて、定義や加工方法、メリットについて見ていきましょう。

パンチングメタルの定義

パンチングメタルは、金属板に金型で規則的に穴を開けた製品で、軽量化と強度を両立します。穴の形状、大きさ、配列パターンは多様です。

主に鉄やステンレス、アルミニウムなどの金属材料が使用され、建築や自動車、家電といった幅広い分野で利用されているのです。穴を開けて文字や絵を表現できるなど、デザイン性と実用性を兼ね備えた素材として評価されています。

パンチングメタルの加工方法

パンチングメタルは、金属板にプレス機を使用して穴を開ける「パンチング加工」によって製造されます。金属板を固定し、上部から高速で打ち抜く金型(パンチ)を押し下げ、下部の受け金型(ダイ)との間で金属を切断します。この作業を規則的に繰り返すことで、均一な穴のパターンが形成されるのです。

加工時には、材質や板厚、穴の形状や大きさ、配列パターンなどを考慮し、最適な条件で行われます。高度な精密加工技術により、多様なデザインや機能を持つパンチングメタルが生産可能です。

パンチングメタルのメリット

パンチングメタルの主なメリットは、以下の3つです。

  • 軽量化と強度の両立
  • 通気性・通光性の確保
  • デザイン性の高さ

軽量化により構造物の重量が削減され、容易に取り扱えるようになります。

通気性と通光性は換気や採光が必要な場所での使用に適しており、省エネルギー効果も期待できます。穴の形状や配列パターンを変えれば、多様なデザインが可能となるため、建築や製品デザインの自由度を高めます。

上記の特性から、パンチングメタルは機能性とデザイン性を両立させた素材として、幅広い分野で重宝されています。

パンチングメタルの材質

パンチングメタルで用いられる主な3つの材質ステンレス、アルミ、鉄について、詳しく解説します。

ステンレス

パンチングメタルの材質として優れた特性を持っているステンレスは、耐食性に優れているため、食品設備や建築物の外装、化学施設といった腐食環境下でも使用可能です。SUS304やSUS316Lなどの一般的なステンレス鋼に加え、二相ステンレス鋼も使用されます。二相ステンレス鋼は従来のステンレス鋼と比較して約2倍の強度を持ち、耐孔食性や耐応力腐食割れ性に優れています。

ステンレスパンチングメタルは塗装が不要で、美しい外観を保てるため、デザイン性を重視する用途にも有効です。耐久性の高さも特徴で、長期にわたってメンテナンスが不要というメリットもあります。

アルミ

パンチングメタルの材質に使用されるアルミニウムは、軽量性が最大の特徴です。取り扱いが容易になるため、構造物の重量削減にも役立ちます。加工性と耐食性に優れているため、さまざまな形状や用途に対応可能です。

一般的に使用される材質としてアルミニウムの純度が高いA1100やA1050があります。アルミパンチングメタルは、内外装のパネルやパーテーションなどによく使用され、建築や製品デザインの自由度を高めます。アルマイト処理を施せば、強度が増し腐食しにくくなるだけでなく、着色も可能となってデザイン性の向上が可能です。

鉄やステンレスと比較すると強度が劣るため、用途に応じて適切な選択が必要です。

鉄(スチール)は、パンチングメタルに最も広く使用されている材質です。価格面での優位性と高い強度、優れた加工性が特徴で、SPCC(冷間圧延鋼板)やSPHC(熱間圧延軟鋼板)、SECC(電気亜鉛めっき鋼板)などが用いられます。SPCCは常温で圧延されたもので、SPHCは高温状態で圧延され表面に酸化被膜が生じています。SECCは薄鋼板に電気亜鉛めっきを施したものです。

鉄製のパンチングメタルは、錆びを防ぐために塗装やめっき処理が必須です。カラー鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板など、さまざまな表面処理を施すことで、耐候性や意匠性を向上できます。鉄製パンチングメタルは、その強度と経済性から、建築、自動車、家電など幅広い分野で活用されています。

パンチングメタルの種類

パンチングメタルの種類は、穴の形状や穴の配列によってさまざまです。ここからはパンチングメタルの穴の形状(丸穴、長穴、角穴)と、穴の配列について解説します。

丸穴

丸穴は、パンチングメタルの中で広く使用されている穴の形状です。丸穴パンチングメタルは、建築の内外装や自動車部品、音響機器のスピーカーカバーといった幅広い分野で活用されています。穴の大きさは微細なものから大きなものまで多様で、用途に応じて選択可能です。

丸穴は美しい外観を持っており、光の透過や通気性にも優れているため、デザイン性と機能性を両立させたい場合に特に適しています。丸穴と十字型の穴を組み合わせた「〇十(まるじゅう)」パターンなど、デザインのバリエーションも豊富です。

長穴

長穴パンチングメタルは、長方形の穴が開けられた製品です。主な形状は長方形の角が直角のものと、丸みを帯びた「長丸穴」の2種類です。特定の方向への通気や光の透過を制御したい場合に適しており、建築の外装やルーバーなどに多く使用されています。

長穴の配列には、「長穴(サイド)千鳥」「長穴(エンド)千鳥」「長穴並列(直列)」「ヘリンボン」「長穴綾抜き」など、多様なパターンがあり、それぞれ異なる視覚効果を生み出します。長穴パンチングメタルは独特の外観から、モダンな建築デザインや工業製品のカバーなど、デザイン性を重視する用途でも人気の製品です。

角穴

角穴パンチングメタルは、正方形または長方形の穴を規則的に配置し、シャープで現代的なデザインを実現します。

角穴は、主に「角穴直列」「角穴千鳥」「斜角抜(ダイヤ)」などの配列パターンで製作されます。角穴の特徴は、高い開口率を実現できる点にあり、通気性や透過性が重要な用途に効果的です。光の透過や遮蔽を効果的に制御できるため、建築の外装やパーティション、遮光・採光用のスクリーンなどに広く使用されています。

角穴の大きさやピッチを変えることで、さまざまな視覚効果や機能性を実現できるため、デザイナーや建築家に好まれる素材の一つとなっています。

穴の配列

最も一般的な配列は正三角形の頂点に沿って穴を開ける「60°千鳥(ろくじゅうどちどり)」です。
他には、直角二等辺三角形をベースにした「45°千鳥(よんじゅうごどちどり)」や、縦、横ともにずらさずに並べた「並列」も一般的です。
斜めに並べた「ヘリンボン」「長孔綾抜き」、亀の甲羅のような「亀甲」といったパンチングメタルもあります。

パンチングメタルの規格

パンチングメタルの規格について、以下の4つの視点で解説します。

パンチングメタルの統一規格の不在

パンチングメタルにはJIS規格のような統一された規格が存在しません。穴の形状や大きさ、ピッチ寸法などは各メーカー独自の規格に基づいています。丸穴のパンチングメタルで穴径や並び方が同じように見えても、ピッチの寸法が微妙にメーカーごとに違っている場合があるため注意が必要です。

パンチングメタルの素材サイズの規格

パンチングメタルの穴形状やピッチに規格はありませんが、サイズは各鋼板の定尺品があります。例えば、SUS304であれば1000mm×2000mmといったように素材のサイズがJIS規格で決まっています。市場に流通している量が多いため、同じサイズのパンチングメタルが製作される場合が多いです。

パンチングメタルのカスタマイズの可能性

定尺品を切断して顧客が要望するサイズでパンチングメタルの製作も可能です。パンチングメタルを調達するときは希望する形状や配列、サイズなどの細かい条件を各メーカーに問い合わせて仕様をすり合わせましょう。

パンチングメタルの安全性への配慮

所定の大きさに切断しようとした場合、切断面に穴部分がかかっていると、エッジが残留しやすく、使用者が手を切るなどの危険があります。そのため、材料寸法に対し、穴を開ける部分の余白を設けるなどのアレンジを相談する方法もあります。

パンチングメタルの用途と使用事例

パンチングメタルのおもな使用事例について解説します。

建物の内外装材

建物の内外装にパンチングメタルが使われています。意識して見ないと気づきにくいですが、例えばアパートやマンションのバルコニーに穴のあいたパンチングメタルが外装として使われています。
他には、フェンス、目隠し、ソーラーパネルを固定する部材などにパンチングメタルが使われます。
内装なら天井や壁面のパネル、間仕切り、照明器具やいすの背もたれ、各種インテリアなどに使われています。

自動車の部品

自動車の内部の部品には、パンチングメタルがたくさん使われています。例えば、エアフィルターやオイルフィルター、排気マフラー、スピーカーカバーなどです。
パンチングメタルに求める機能は放熱であったり軽量化、防塵、防音などさまざまで、それぞれ適した形状に設計されています。

家電製品の部品

家電製品は、外装や、内部の部品などにさまざまなパンチングメタルが使われています。
例えば、コンロの換気扇についているレンジフードフィルターはイメージしやすい人も多いでしょう。金属の板で作られており、細かな穴によってホコリやゴミが換気扇に付着しないようにしています。
他には、ストーブグリルやラジエーターグリル、モーターカバーなどがパンチングメタルで作られています。

選別機

パンチングメタルは穀物や種子、鉱物などをふるい分ける機械部品としても使われています。
穴の大きさを調整することで、大粒用、小粒用などと使い分けることができます。
例えば、大豆などの豆の大きさを選別するために、パンチングメタルの穴の径を調節して大きい豆と小さい豆に分けます。
他には、石炭や砂、砂利などを選別する際にもパンチングメタルを活用できます。

プラントのストレーナー

ストレーナーとは、流体が通る配管の中に設置されている部品で、ゴミなどを取り除く役割があります。
ストレーナーは精油や製粉、パルプなどの不純物を取り除くために取り付けられます。圧力損失とゴミを取り除く機能を両立させるために、パンチングメタルの穴形状やピッチを工夫する必要があります。

建設物の付帯設備

パンチングメタルは、工事現場用の防音パネルや建物の保温パネルなどにも使われます。また、トンネル内の喚起用ジェットファンなどにも使われています。

その他

データセンターなどでは、サーバーを置くラックのカバーとしてパンチングメタルが使われています。内部を簡単にさわれないようにしつつ、通気性を上げて冷却しやすくしています。丸穴や長丸穴、長角穴などのパンチングメタルが使われます。
他には、デザイン用途として、モニュメントや看板、グラフィックパンチングとしても使われています。文字部や絵のみに穴をあけて浮き上がらせます。また、逆に文字部だけ穴をあけずに表現することもできます。

パンチングメタルに関するよくある質問

パンチングメタルに関するよくある質問に対する回答です。

パンチングメタルは何のために使うのですか?

パンチングメタルは、軽量化と強度の両立や通気性・通光性の確保、デザイン性の向上などのさまざまな目的で使用されます。金属の強度を保ちながら、穴を開けることで軽量化や機能性を向上させられるため、工業製品から意匠的な建築材料まで、さまざまな分野で重宝されています。

パンチングメタルの開放率とは?

パンチングメタルの開放率(開孔率または開口率)は、金属板全体の面積に対する穴の面積の割合を表しパーセントで示されます。パンチングメタルの通気性や通光性、軽量化の程度を示す重要な指標です。

開放率は穴の直径やピッチ(穴の中心間距離)、配列パターンによって決まり、用途に応じて適切な開放率を選択します。高い通気性が必要であれば開放率の高いものを、強度を重視する場合は開放率の低いものを選びます。

パンチングメタルの穴の大きさは?

パンチングメタルの穴の大きさ(孔径)は、用途や要求される機能に応じてさまざまです。一般的には0.5mm以上から100mm以下の範囲で製作可能で、最も一般的なのは数mmから数十mm程度です。

穴の大きさは、開放率や強度、デザイン性に直接影響します。小さな穴は強度を保ちつつ細かな通気や濾過に適し、大きな穴は高い開放率や独特の視覚効果を生み出します。穴の大きさはピッチ(穴の間隔)と組み合わせて設計され、さまざまな機能や外観を実現します。

メビーのパンチングメタル

メビーは、特注形状の機械加工部品の調達をスムーズかつ効率的に行えるオンラインサービスです。3Dモデルをアップロードするだけで、1分に価格と納期が確認できます。

パンチングメタル(SUS304-BA)の丸孔60°千鳥タイプは、孔径と孔ピッチの組み合わせにより、22.6%から40.3%の開口率を選択できます。標準3日目出荷、最短1日目出荷も可能です。サイズ592 x 194で出荷日3日目の場合の価格は7,628円です。(2025年1月時点)

曲げ加工などの2次加工にも対応しており、カスタマイズされたパンチングメタル部品が調達できます。

まとめ

パンチングメタルは、プレスで金属性の板に穴を開けたもので、工業製品だけでなく、建築用、看板などさまざまな用途で使われます。
特にJISなどで規格が決められているわけではなく、各メーカー毎に仕様が決められています。また、専用の金型を作成すれば、穴の形状やピッチなどをカスタマイズ可能です。
材質や形状、ピッチなどはメーカーによって扱うことができるパンチングメタルが異なるので、事前に仕様の整合をすることが大切です。

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