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銅について – 特徴、銅合金、記号や切削加工のポイント

銅は非鉄金属の中でもアルミと並んで非常によく使われる金属です。この記事では銅の特徴や用途、代表的な銅合金の種類や、切削加工のポイント、銅合金の表記方法について解説します。

銅について - 特徴、銅合金、記号や切削加工のポイント

非鉄金属の代表格、銅とは

銅(Cu)は非鉄金属の一種で、工業的にはアルミと同様に非常に多く使われています。歴史的には鉄よりも古くから使われ、現在も金や銀と並んで硬貨やメダルとしても利用されています。

銅の特徴

銅は高い熱伝導性と、高い導電性をもちます。また金属としては比較的やわらかく、展延性と加工性が高いのも特徴です。リサイクルしやすく、低温環境下で脆化しないというメリットもあります。
独特の美しい色彩をしており、建材などの装飾に使われることもあります。また、表面に酸化銅の保護被膜を形成し、耐食性にすぐれるのも特徴です。また抗菌作用もあるため、人の手が触れる場所や水回りにも使用されます。
一方で鉄よりも比重が高く、重いです。

純銅とは

純銅とは工業用の銅合金の中でも、銅の割合が99.90%以上のものです。
純銅は、含まれる酸素の量によって、無酸素銅、タフピッチ銅、脱酸銅に分けられます。無酸素銅とは酸素をほとんど含まない、純銅の中でも特に純度の高い銅です。タフピッチ銅は微量の酸素を含み耐食性や耐候性が高い銅です。脱酸銅は、リンなどの非金属の脱酸剤を微量に含む銅です。水素脆化のリスクが少ないのが特徴です。

純銅の特徴

純銅は銅合金の中でも特に導電率や熱伝導率が高くなります。また磁性がなく、磁石には引き寄せられません。

機械的性質

純銅の機械的性質は次の通りです

項目 単位
比重 8.89~8.94
引張強さ N/mm2 355
硬さ HV 85以上
ヤング率 kN/mm2 117
導電率 %IACS 100
熱膨張率 ×10-6 /℃ 16.8
熱伝導率 W/(m・k) 398
融点 1083
沸点 2360

純銅のメリットとデメリット

純銅の長所には次のようなものがあります。

  • やわらかく加工しやすい
  • 酸やアルカリにも比較的強い
  • 導電性、熱伝導性が高い

短所

  • 重い
  • 腐食を防ぐためにはメッキ加工が必要
  • 柔らかいため切削加工に注意が必要

純銅の用途

純銅は、高い熱伝導率を活かし、エアコンや冷蔵庫の伝熱管に使われます。また磁気観測装置にも使用されています。

銅合金の種類

銅は融合性が高く、他の金属と混ぜて合金として利用されることも多いです。主な銅合金を下記に紹介します。

黄銅(真鍮)

黄銅とは、銅と亜鉛の合金で真鍮ともよばれます。
純銅に比べ展延性、熱間鍛造性、被削性に優れ、軽いのが特徴です。
金にも似た美しい金属光沢をもつ金属で、5円硬貨や電気部品、精密機械、楽器、装飾パーツなどにも使われます。

白銅

白銅とは、銅に10%~30%程度のニッケルを混ぜたものです。
毒に耐食性に優れ、展延性も高いのが特徴です。
ニッケルの割合が多くなると、銀のような美しい金属光沢をもつようになります。50円硬貨、100円硬貨や熱交換器、食器などに使われます。

青銅

青銅とは、銅に錫(すず)を加えたものです。大気中で少しずつ酸化し、表面に緑青(ろくしょう)が発生するのが特徴です。
純銅よりも硬い一方、融点が低いため、古くから金属として使われてきました。
10円硬貨や日用品に使われています。

高銅合金

高銅合金とは、銅合金の中でも銅の比率が96%以上のものです。
純銅と同じような熱伝導性や導電性をもちながら、強度や耐熱性を増しているのが特徴です。
パソコンやスマートフォンなどの精密機器や、自動車の部品にも使われています。
また高銅合金は、添加される金属により性質が変わり、ベリリウム銅合金は導電性とバネ特性を備えた材料になります。

銅合金を使った切削加工のポイント

純銅や銅合金は、やわらかい金属です。そのため超硬合金のような削りにくさはない一方、やわらかい故に削りにくくなる場合があります。

粘り気が強くバリが出やすい

銅はやわらかいだけでなく展延性も高く、粘り気のある金属です。そのため切削加工においても、削られた材料が離れていく際に粘るため、バリが出やすくなります。

切削時の熱で溶着しやすい

やわらかく粘り気があることに加え、融点が低いため、加工熱によって切粉が融解することがあります。そうすると工具の先に溶けた切粉が付着する、溶着が発生することがあります。切削にともなって発生する熱を逃がすため、クーラントを使用する必要がありますが、このときに水溶性のクーラントを使用すると腐食によって変色してしまう場合があります。油性のクーラントを使用するといいでしょう。

切削の際の注意点

粘り気のある金属のため、切削抵抗を少なくするのがポイントです。
そのため切れ味が鋭く、すくい角の大きい工具を使うといいでしょう。また切削速度を上げ、高速での切削条件に設定するのも効果的です。

銅合金の表記

銅合金の材料表記は、Cuの頭文字であるCからはじまり、4桁の数字と記号によって表されます。この4桁の数字は合金系と合金番号を表し、それに続くアルファベット記号は形状と製造条件を示します。その後にハイフンを付けて調質記号が入ります。

銅合金の材料表記は、Cuの頭文字であるCからはじまり、4桁の数字と記号によって表されます。この4桁の数字は合金系と合金番号を表し、それに続くアルファベット記号は形状と製造条件を示します。その後にハイフンを付けて調質記号が入ります。

銅記号

銅を意味するCです。銅合金の材料表記は全てCからはじまります。

合金番号

主成分と主要添加元素を表します。頭の数字で合金の種類がわかります。

1000番台:純銅、銅合金系
2000番台:Cu-Zn系合金、一般的な黄銅はここに含まれます
3000番台:Cu-Zn-Pb系合金、快削黄銅といわれる切削性に優れた黄銅です
4000番台:Cu-Zn-Sn系合金、すず入り黄銅とよばれます
5000番台:Cu-Sn-P系合金、りん青銅とよばれる素材です
6000番台:Cu-AL-Fe-Mn-Ni系合金、アルミニウム青銅という素材です。強度が高く、耐食性・耐海水性・耐摩耗が高いのが特徴です
7000番台:Cu-Ni-Fe-Mn系合金、白銅とよばれる素材です

形状・製造条件記号

材料の形状を表す記号です。記号と形状は次のようになっています。

P:板、円板
PC:合わせ板
PP:印刷用板
B:棒
H:箔
W:線
T:管
TW:溶接管
FD:型打鍛錬品
FH:自由鍛錬品

調質記号

材料を製造した後に施された調質を表す記号です。

-F:製造のまま
-O:焼きなまし
-H:加工硬化
-1/4H:1/4硬質
-1/2H:1/2硬質
-OM:ミルハードン材 軟質
-HM:ミルハードン材 硬質
-SR:応力除去

まとめ

銅はアルミと並んで非常によく使われる非鉄金属です。銅は高い熱伝導性と、高い導電性をもちリサイクルしやすいのが特徴です。また独特の美しい色彩をもっています。
銅合金には純銅、黄銅、白銅、青銅、高銅合金があります。切削加工においては、やわらかく削りやすい一方でバリが出やすいなどのデメリットもあります。銅合金の材料表記は、Cuの頭文字であるCからはじまり、4桁の数字と記号によって表されます。
meviyでは切削丸物の材質として銅を取り扱っています。この記事を参考に、材料の候補としてC3604-LCd(真鍮・黄銅)も検討していただければと思います。

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