ワッシャーとは、ボルトを利用して部品(被締結物)を固定するとき、ボルトと被締結物の間に挟んで使用する円盤状の部品です。この記事ではワッシャーの基本や特徴、用途や設計時にワッシャーを選定するポイントなどを解説します。
目次
ワッシャー(座金)の基本
一口にワッシャーと言っても、その種類や材質はさまざまです。
ワッシャーとは
ワッシャーは被締結物との接触面積を広げ、ボルトからの力を分散させる効果があります。
ワッシャーの種類
ワッシャーは大きく次のように分類されます。
平ワッシャー
見出し4平ワッシャーは円盤状の最も一般的なワッシャーです。ワッシャーと聞いて多くの設計者が思い浮かべるのが平ワッシャーです。
スプリングワッシャー(バネ座金)
スプリングワッシャーは円環状の金属板を螺旋状に加工した形状をしています。スプリングワッシャーには緩み防止効果が期待されていますが、実はそれほど効果が高くないとの見解もあります。そのため、緩み防止の目的ではスプリングワッシャーを使用しない設計者もいます。
一方、スプリングワッシャーは被締結物へのボルトのめり込み防止(薄板の場合)や、気密性向上(ガスケットやシールと一緒に使う場合)などの効果も期待できます。
ロックワッシャー
ロックワッシャーは、ボルト座面や被締結部品と接する部分にリブ(うねり)がついているワッシャーです。ボルト締結時にリブがボルト座面や被締結部品に食い込むことにより緩み防止効果を得るものです。
ワッシャーの材質
ワッシャーは、力の分散や座面の安定化という目的から、一般的には金属のものがよく使われます。しかし、耐薬品性や絶縁など異なる性能を必要とする場合には樹脂製のものも使われます。
金属製ワッシャー
金属製のワッシャーとしては以下のような材質があります。
- ステンレス
- 鉄
- チタン
- 黄銅
- アルミニウム
一般的にはステンレス製で十分です。コストを重視する場合は鉄製を、高い耐食性と強度が必要な場合はチタン製を選択します。とはいえ、鉄を処理なしで使用すると耐食性が低いため、三価クロメートや無電解ニッケルメッキ、それにユニクロメッキなどを行って耐腐食性を補っています。
黄銅(銅)の特徴は高い導電性と熱伝導性です。締結と導電を兼ねる場合には黄銅のワッシャーを使います。また、アルミニウムは比較的軟らかいため、締結時にボルト頭によって潰され、被締結物との隙間を埋めるはたらきをします。このため、気密性が高まりオイル漏れなどを防ぐ効果を期待できるのです。
樹脂製ワッシャー
樹脂製のワッシャーとしては以下のような材質があります。
- PVC
- PP
- PEEK
- PVDF
- セラミックス
- PTFE
- EPDM
- PSS
- RENY
- POM
- PC
- ふっ素
PVCはポリ塩化ビニルのことで、いわゆる「塩ビ」といわれている材質です。酸やアルカリに強い一方、有機溶剤に弱いという特徴があります。また、耐熱温度は約80℃とそれほど高くありません。
PPはポリプロピレンの略称です。耐熱温度は120℃以上とPVCより高い温度帯で使用できます。耐薬品性としては酸やアルカリに強い一方、有機溶剤には弱いという特徴を持っています。
樹脂ワッシャーは一般に金属製より強度が低いものの、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は例外です。PEEKは高強度で、優れた耐薬品性と耐熱性を持つため、幅広い用途に適しています。
他にも樹脂ワッシャーがありますが、基本的な使用目的は変わりません。軽量化や耐薬品性の向上、それに絶縁性など、目的と使用環境に応じて選定することが大切です。
ワッシャーM4サイズの特徴
日本国内で使用されるボルトはメートルねじが多く、「M◯」(◯にはサイズを示す数字)のようにサイズを表現します。M4サイズは比較的小さいサイズで使用頻度も高く、一般的によく使われるサイズです。
各々のボルトサイズに対応したワッシャーが用意されているため、M4ボルト専用のワッシャーもあります。
寸法
M4ワッシャーの外径と内径、そして厚さは種類によって異なりますが、次のサイズが一般的とされています。
- 外径D(mm):9.0mm
- 内径d(mm):4.3mm
- 厚さt(mm):0.5mm
用途
ボルトやワッシャーは私達の生活の様々な場面で使用されています。その一例を示します。
機械産業
部材を加工するには旋盤やフライス盤、あるいはマシニングセンタなどの加工装置が必要です。このような装置では振動が加工精度に悪影響を与えるため、制振性が求められます。そこで、制振効果のある合金を使用した制振ワッシャーが使用されます。
自動車産業
自動車は乗員の命にかかわる製品であるため、ボルトの緩みや脱落が大きな事故につながる可能性もあります。そのため、ノルトロックワッシャーという2枚重ねの特殊なワッシャーを使って緩みを防止しています。このワッシャーは他のワッシャーと異なり、摩擦力ではなく軸力を利用して緩み防止効果を発揮します。
電子機器
電子機器において、基板の固定や筐体の締結以外に、絶縁に使用される場合もあります。この場合、金属ワッシャーではなく導電性のない樹脂ワッシャーが使用されます。
ワッシャーの設計上のポイント
部品を選定する場合には使用目的や使用環境への配慮が必要になります。どれか一つが欠けるだけでも使用上の問題が発生します。
材質選択
ワッシャーの使用目的に応じて適した材質は異なります。まず、高い軸力を分散させたいのか、絶縁したいのかによって金属か樹脂かを選択することになります。また、その中でも使用環境や求める耐久性によって詳細に材質を選択します。
ワッシャーの種類選択
材質選択と同様に使用目的に応じたワッシャーを選択しましょう。また、座面の傾斜を水平に補正してくれるテーパーワッシャーなど、使用頻度は低くても重要なワッシャーもあります。
厚さ選定
同じサイズのワッシャーでも厚いタイプの「厚ワッシャー(厚座金)」があります。通常のワッシャーに比べて厚さがあるため、座面の強度アップに役立ちます。ただし、M4など比較的小さいサイズでは、厚ワッシャーのラインナップはあまりありません。
メビーでワッシャーを製作
メビーでワッシャーを製作するメリット
ミスミの総合WEBカタログでは、多種多様なワッシャーを取りそろえていますが、求めている条件に合致するものが必ずあるとは限りません。
ミスミの総合WEBカタログ>ねじ・ボルト・ナット・ワッシャ・カラー
求めている寸法のワッシャーがなかったり、追加工が必要な場合もあるでしょう。そのように図面加工が必要なワッシャーは、メビーで見積もり、製造することが可能です。
材質は金属、樹脂の両方に対応しています。
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加工事例
厚さ1.0mmの樹脂材ワッシャー
厚さ1.0mmのふっ素で製造したワッシャーです。

厚さ1.0mmの樹脂材ワッシャー
メビーは製品設計において長さ、厚み、内径など微細な調整が求められる場合に、3D CADで設計したデータをそのままアップロードするだけで、自動見積もりが可能です。
例えば、仕上がり部品にばらつきが生じやすい箇所や厳密な寸法が求められる場面でも、特定のサイズにぴったりと合わせて製作することができます。
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まとめ
ワッシャーは非常に小さな部品で、ともすればその重要性があまり感じられないこともあるかもしれません。しかし、不必要な機械部品はこの世に一切なく、緩み防止など重要な役割を果たすこともあります。
この記事を通してワッシャーについての知見を広げ、柔軟な設計ができるようになりましょう。