ものづくり基礎知識 機械設計 機構設計

ベアリングのはめあいとは?はめあい公差と種類を徹底解説

ベアリングは動力機械によって発生した回転運動をスムーズに伝達させるために欠かせない部品で、いろいろな機器で利用されています。ベアリングを取り付ける際の軸やハウジングは、規格によって指定された「はめあい寸法」で加工する必要があり、高い加工精度と知識・熟練のスキルが必要です。
この記事では、ベアリングを取り付けるときのはめあい公差と種類について解説していきます。

また、下記の記事では機械要素の基本となる軸やベアリング・キー・ピンのはたらきについて詳しく解説しているので、併せて読んでみてください。

機械要素の基本!軸、ベアリング、キー、ピンのはたらきを解説

ベアリングのはめあいに関する基礎知識

ベアリングを使用する軸やハウジングを設計・加工する際は、使用するベアリングのサイズや形状・はめあいに関する基礎的な知識が不可欠です。
また、使用される環境・荷重方向によっても軸やハウジングの寸法を調整し、はめあいの種類を使い分ける必要があります。

以下で、軸やハウジング加工における「はめあいの重要性」についてみていきましょう。

ベアリングのはめあいとは

「はめあい」とは、軸とベアリングの内輪またはハウジングとベアリングの外輪が取り付けされるときの硬さ(抜けにくさ)を示す用語です。一般的には、ベアリング内輪に対して軸の外径が大きいほどはめあいの硬さが強く、小さいほど抜けやすくなります。
逆に、ベアリング外輪に対してハウジング内径が大きいほどはめあいの硬さはゆるくなるため、はめ込み時の負担は小さくなりベアリング摩耗時の交換が容易です。

使用する機器の「荷重方向の回転または固定」「内輪回転と外輪回転」を考慮して、適切なはめあい寸法(すきまやしめしろ)を選定してください。

はめあい公差とは

はめあい公差とは、軸とベアリング内輪・ハウジングとベアリング外輪の組み合わせを設計するときに使用する数μm単位の寸法(誤差または許ししろ)を「H7・h7」などのアルファベットと数字で表したものです。軸の加工には小文字アルファベットと数字、ハウジング(穴)の加工には大文字アルファベットと数字の表記が一般的に使用されます。

はめあい公差を使用することで設計図の可読性(読みやすさ)が向上するため、寸法の読み間違いなどによる加工ミスを防止する対策としても効果的です。

はめあいの種類について

前述の通り、はめあいの選定は使用される機器の目的や荷重方向によって適切な選択をおこなう必要があります。

一般的に使用される「はめあいの種類」は、以下の3種類です。

すきまばめ

「すきまばめ」は、穴と軸の間にすきま(寸法の差)がある状態でのはめあいで、挿入した軸をスライドさせたり軸のみを回転させたりする機器の設計で採用されます。
すきまばめは、その目的に応じてすきまの大小を変更できるため、高温の状態で軸径が膨張しても「動かせる」すきまを確保することが可能です。すきまがあるので組み立てなども容易ですが、精密な回転運動が要求される部分などは「すきまを小さくする」必要があります。

しまりばめ

しまりばめは「穴に対して軸が大きい」ときのはめあいで、高トルクで同軸度が要求される部分などに使われます。組み立ての際は高い圧力が必要なため、ベアリングの挿入には専門的な知識や技術が必要です。
しまりばめの場合は、一度はめ込むと非破壊での解体は困難で、分解には「プーラー」などの専用工具を必要とします。ベアリングを挿入する際は、プラスチックまたは木製のハンマーを使用し、部品に傷をつけない配慮も必要です。
また、しめしろが大きい場合は人力での組み込みが難しいので「圧入機」を使用したり、穴を加熱して膨張させる「焼きばめ」という方法を採用したりします。

中間ばめ

中間ばめは、すきまばめとしまりばめの間を取ったはめあいのことです。わずかなすきまとしめしろがあるため同軸度が高く、高精度でも高いトルクを必要としない部分に使われます。

  • わずかなすきまがあり、グリスなどの潤滑剤を使えば手で動かせるもの
  • ほとんどすきまがなく、解体・挿入にはハンマーや圧入機を使うもの
  • わずかなしめしろがあり、解体や挿入時に強い力が必要なもの

など、目的や機器の使用環境に応じて使い分けが可能です。

また、解体の際には「しまりばめ」のような強い力は必要なく、部品を損傷させずに分解できるので、ベアリング交換などのメンテナンス性も高まります。

はめあい公差選択の重要性

はめあい公差の選択は、ベアリングの性能や寿命に重大な影響を与えます。適切な公差を選定することで、摩擦や摩耗を最小限に抑え、最適な動作を実現できます。一方、不適切な公差を選択すると、過度な摩擦や発熱が生じ、部品の早期劣化や故障を引き起こす可能性があります。
さらに、不適切なはめあいは振動や騒音の増加を招き、機械システム全体の安定性を損なう恐れがあります。そのため、設計者は使用環境、運転条件、および負荷特性を総合的に考慮した上で、最適な公差を設定する必要があります。

G6公差の特徴

はめあいの規格では、「G6」は穴寸法の「すきまばめ」に該当します。
例として、穴径120mmの場合は「+0.014~+0.039」で、はめあい規格E8からG7までの中では最もすきまが小さく高精度が要求される規格です。すきまばめに該当しますが、軸と穴の寸法差が小さく手作業では挿入が難しいので「穴側にわずかな段差」を設け、ベアリングを挿入しやすくしている場合があります。
また、ハウジング側の底面コーナー部やベアリング内輪に接する軸の段差部分に「逃げ」加工を施せば、ベアリングの取り付け精度が高まるのでおすすめです。

図1 ハウジングの逃げ加工部位

図1 ハウジングの逃げ加工部位

上図の通り、ハウジングの口元にφ+0.1~0.2mm・深さ数mm程度の段差を設けることで、ベアリング挿入時のガイドとして機能し、より正確かつ容易な組み付けが可能となります。

この手法は、すきまばめ・中間ばめ・しまりばめなど、全てのはめあいに適用できます(段差の深さはベアリングの寸法に応じて適宜調整してください)。
また、コーナー部には、スローアウェイ工具のノーズR除去用のヌスミ加工を施すことで、ベアリングとワークのコーナー干渉を防止します。これにより、軸・ハウジングの加工面とベアリングを高精度に位置決めすることが可能となり、高い同軸度・振れ精度が要求される製品にも対応できます。

なお、メビーでは、G6(6級公差)などの高精度加工に対応しており、各種ベアリングとの組み合わせや組付けに最適な製造が可能です。

メビーのログインはこちらから

はめあいの調整に関して

はめあい寸法の選択は、使用する機器の目的や環境に応じて調整・検討する必要があります。焼きばめの際の「加熱による軸のひずみ」「組成・硬度の変化」を避けたい場合や、そもそも加熱ができない場合などの条件では、重要になるのが「しめしろの適切な選択」です。

以下に、はめあいが不適切だった場合の弊害について、詳しく解説していきます。

はめあいがきつい場合

【ハウジング】

  • ベアリングの外輪部や内部構造に過剰な負担がかかる
  • 内輪がスムーズに回転しなくなる

【軸】

  • ベアリングの内輪部や内部構造に過剰な負担がかかる
  • 外輪がスムーズに回転しなくなる

そのほか、過剰なしめしろによるハウジングや軸の損傷も考えられます。

はめあいがゆるい場合

【ハウジング】

  • ベアリングの外輪部が滑りにより損傷・異常発熱・振動が起こる
  • すきまが大きいため、目的とする精度が出ない
  • ハウジング内部の焼き付きや、摩耗粉によるベアリング内部損傷

【軸】

  • ベアリングの内輪部が滑りにより損傷・異常発熱・振動が起こる
  • すきまが大きいため、目的とする精度が出ない
  • 軸側の損傷・折損

はめあいがゆるい場合、騒音や軸の回転振れ拡大にもつながるため、工作機械の主軸などでは加工精度・真円度・面相度の低下につながります。

ベアリングのはめあいに関連した画像

まとめ

はめあいは、サイズや機器の使用目的・荷重方向・回転トルクの大きさによって最適な「はめあい公差」の選択が重要になります。
また、ハウジング側の素材やベアリング外輪に接する肉厚によっても調整する必要があるため、設計をおこなう方は「加工や組み立てに関する知識」が必要不可欠です。一般的には、軸と比較してハウジングの加工は困難であり穴精度もよくないので、外輪とのはめあいはゆるくしてください。
また、中空軸や肉厚の薄いハウジング、アルミ鋳物などの軽合金製ハウジングの場合は、通常のものよりも硬いはめあいを選択することをおすすめします。

ベアリングを使用している機器の剛性や精度だけでなく、メンテナンス性も含めた最適なはめあいを選択してください。

関連記事

機械要素の基本!アクチュエータ、センサーの働き

機械要素の基本!カム、クラッチ、ブレーキの働き

機械要素の基本!ねじ・ボルトのはたらきを解説

機械要素の基本!歯車、チェーン、ベルトの働きを解説

ワッシャーの役割・設計上のポイントとは? M4サイズを元に解説