金属加工

皿穴、皿ザグリとは?加工方法や設計の注意点を紹介します。

皿穴とは、ねじ穴のふちの周囲をねじの頭の大きさよりも大きく削った穴のことです。これにより、ねじの頭が製品面よりも外に飛び出さないようにできます。薄板や、樹脂に埋まりこんでいるようなねじを使う際には欠かせない形状です。このような、頭が出ないねじは皿ねじといって、頭部が円錐形状になっています。皿ねじを使うときには、皿穴という専用の形に加工しなければなりません。今回は、皿穴について加工方法や設計の注意点を交えながら解説します。

皿穴、皿ザグリとは?加工方法や設計の注意点を紹介します

皿穴とは?

皿穴には皿ザグリ、皿モミの2種類があります。
皿穴には皿ザグリ、皿モミの2種類があります。

  • 皿ザグリ
    皿ザグリとは、穴のふちを円錐形状に大きく面取りしてある穴のことです。ねじやボルトには、頭部が円錐状のものがあります。これを皿頭形状といいます。皿頭形状のねじやボルトを通す穴も、同じように円錐状に加工する必要があります。そうすることで、皿頭形状のねじがすっぽり穴におさまり、板の面から飛び出ないようになるからです。皿頭形状のねじやボルトは、ひっかかりなどがないようにするために使われます。
    例えば、みなさんがよく使っているPCの裏面や底面を見てみてください。外装カバーをねじでとめていて、ねじが飛び出ないように皿穴となっているものもあるでしょう。
  • 皿モミ
    皿モミとは、穴を円錐形状に大きく面取りする作業のことです。皿モミの形状はJISで決められています。円錐の角度をどのようにするのか、深さや直径など、使用する皿頭形状のねじやボルトの大きさによって決まっています。

皿穴に関連するJIS規格

JIS B 1017に皿ねじ用皿穴の形状の寸法が記載されています。円錐の角度は90±1°です。そのほかに、円錐部の直径、ストレート部の直径、ストレート部と円錐部の同心度が指示されています。JIS B 1013では、皿ねじの頭部の形状について示しています。

皿穴の加工方法

皿穴の加工方法はいくつかあります。加工方法は、板金や軸など対象の材料によって異なります。コストや、寸法精度にも違いがあるため、以下に主な加工方法と特徴を紹介します。

  • 切削加工
    切削加工で面取りをします。ボール盤に皿穴用のドリルを取り付けて削っていきます。専用のドリルを使って、円錐部の角度や、穴径などをJISの寸法どおりに削ります。皿穴用のドリルを使わないと、きちんと皿ねじが収まらない形状になるため注意しましょう。金属の軸や切削加工の樹脂、ステンレスやアルミのブロックなどは切削加工が多いです。板金加工やプレスで使われる薄板でも使われることがありますが、加工コストが上がってしまいます。
  • バーリング加工
    バーリング加工は、薄板の穴の外周を円筒形状に突き出す加工です。板金加工や、プレス加工で使われる加工方法です。バーリング加工は位置決め用のエンボスの代わりに使ったり、厚みが薄い板で、有効ねじ深さを得るために使われたりします。
    バーリング加工で皿穴形状に加工することが可能です。皿バーリングと言われています。 皿バーリング用の型を使うことで成形できます。また、タップをつけることで皿ねじ用の穴として使えます。
  • パンチング加工
    パンチング加工は、金属の薄板の穴を皿モミする加工方法です。パンチング加工は、専用の型を使って穴のふちを変形させることで面取りを行います。板を削っているわけではないので面取り部は肉を周辺の平面によせています。そのため、皿穴周辺の面がゆがむことがあります。高精度な平面が必要な箇所では注意しましょう。

 

皿穴の加工や設計時の注意点と問題

皿穴の加工や設計時の注意点と問題

皿ねじを使うときには必須な皿穴ですが、加工、設計上の注意点があります。よくあるものを紹介します。

  • アンダーカットになってしまう裏ザグリは加工困難
    裏ザグリとは、下穴を通した裏側からザグリをする加工方法です。ドリルを通す側にザグリを入れるのは表ザグリ、逆が裏ザグリです。裏ザグリで皿モミをすることも可能で、専用の工具があります。ですが、通常とは加工工程が異なっており、コストが高くなります。下穴を空けた後に、刃物がついていない回転軸を通して、穴の裏側から先端に刃物を取り付けます。皿モミをしたあと、刃物部だけを外して、軸を抜くので手間がかかります。
    例えば、カタカナの「コ」の字のような形をしたブロックで、片面だけ内側から皿ザグリを入れたい場合、裏ザグリとなります。逆側には、「コ」の字のもう一方の面があるため、ドリルを入れることができません。
  • 皿ねじの飛び出し
    皿ねじは、ゆるんでしまうと、板の面から飛び出てきてしまいます。皿ねじは、円錐部をねじと穴が接触することで締結されます。しかし、タップの軸線とねじを通すための皿穴の部分の軸線がずれていると、円錐部は面で接触せずに、点または線で接触してしまいます。そのため、タップ穴、皿穴ともに位置ずれがないように厳しい公差を指示しなければなりません。
    別のゆるみ対策として、接着剤が使われます。接着剤は、「ロックタイト」が有名です。ねじ締め前に塗布して、ねじ締めすると固まります。

まとめ

皿穴について、加工方法や設計上の注意点を紹介しました。皿穴の寸法は、JISや使用する皿ねじの寸法を確認して、飛び出しがないようにしましょう。また、皿ねじがゆるんで飛び出てこないように、位置精度には注意しましょう。

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