これまでのSOLIDWORKSの年次イベント『3DEXPERIENCE WORLD 』では、開催期間3日間、毎日「ゼネラルセッション」と言われる全体講演から始まっていました。
この講演は、ダッソー・システムズ社(Dassault Systèmes)、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社(Dassault Systèmes SolidWorks)の基本的な考え方「3DEXPERIENCEとは何か」、「製品ソリューションがどこに向かっているのか」を経営陣が示します。
第1弾でもお話しましたが、今回2023年は少し様変わりして、ゼネラルセッションは初日と最終日に行われ、二日目にはドメインセッションと言われるソリューションを、設計・解析・製造として分類したものが行われました。
目次
いよいよ始まる!-DAY1-ゼネラルセッション
ゼネラルセッションでは、様々なゲストスピーカーがデジタル技術分野を中心としたトレンドを話してくれます。
「3D CADを中心としたデジタルの世界」という内容だけではなく、これから私たちにどんな世界が待っているのかを予感できるというものです。
私も2010年の初参加以降、すっかりこのイベントに魅了されてしまいました。
誰もが聞きたい講演なので、開場と同時に参加者が一斉に一番前の座席を目指します。
出展:SOLIDWORKSユーザー グループ ネットワーク(SWUGN)
この風景、日本だとコンサート会場では見られる光景かもしれませんが、講演会場では見たことはありません。この会場にいる人たちが求めるものの意識の高さを感じます。
私ですが、SWUGN(SOLIDWORKS USER GROUP NETWORK)メンバーの座席が準備されているので、他の日本人参加者の方々とは別の座席で話を聞きました。
ネットでLIVE中継も行われていたので、日本から私を「発見!!」というメッセージもいただきました。
出展:ダッソー・システムズ・ソリッドワークス
ゼネラルセッションのトピックとして、デスクトップユーザーのクラウド対応の話をしましたが、なぜこれがトピックなのかお話しましょう。
ゼネラルセッション
デスクトップライセンスのクラウド化がすごい理由
これまでもプラットフォームについてお話をしてきました。
3DEXPERIENCE Platformでは、「Any time/Any Where/Any Device(いつでも/どこでも/どんなデバイスでも)」をかかげて、新しい開発設計環境の構築を進めてきています。
私たちもすでにAmazonといったサービスにより、いつでも・どこでも・どんなデバイスでも商品を購入しています。また、企業でも勤怠システムなどの業務系システムはクラウド化され、そのサービスを利用している人は少なくありません。
これはクラウド上にアプリケーションがあって、ここに接続することでそのサービスを利用しているのですが、そうなるとデスクトップ版のSOLIDWORKSユーザーが3DEXPERIENCE Platformを利用しようとすればこのサービスを別途購入しなくてはなりません。
「自分たちには関係ないかな」と冷ややかに考えていた人もいることでしょう。しかし、デスクトップユーザーの設計現場では、こんな悩みがあります。
- 他拠点や社外設計会社とのデータ共有はどうする?
- 社外解析(CAE)とのデータ共有はどうする?
- サプライヤとのデータ共有はどうする?
- オンプレミスのデータ管理サーバーの維持が面倒
- 外出先からも設計データを確認、編集も編集したい など
今回の発表は、
「新たにデスクトップ版SOLIDWORKSのシートを購入し、保守契約をしたユーザーを対象に、3DEXPERIENCEプラットフォームに接続/連携するためのロール「Collaborative Designer for SOLIDWORKS」を標準提供する」
というものなので、悩みは抱えつつも困っていないように見えているデスクトップ版ユーザーや、別途『Collaborative Designer for SOLIDWORKS』を購入することに難色を示していたユーザーも、新しい形のコラボレーションを行うことができるというチャンスを持ったということです。
このサービスを使用したSOLIDWORKSユーザーは、効果を体験して、3DEXPERIENCE SOLIDWORKSやSOLIDWORKS CLOUDに移行していくことも起こりえるでしょう。
設計ツールとコラボレーションツールをWEBブラウザーにより使用できる
3DEXPERIENCE SOLIDWORKS
クラウドに接続されたSOLIDWORKSとクラウドベースの基本的なロール(製品)を組み合わせたもので、そのグレードにより購入時から3DEXPERIENCE WORKSを利用できる
発表では2023年7月1日にこのサービスが開始されるということでした。日本については時期未定とのことですが、その開始が待ち遠しく感じます。
私もぜひ、クラウド環境でのコラボレーションと「いつでも・どこでも・どんなデバイスでも」という開発設計環境を経験していくことで、コストや管理など、まだまだ3D CADに懸念を持つ人たちにこれを進めていきたいと思います。
製造業のクラウド環境、製造業のDXは業務系のクラウドと同じように進むべきです。
Ring社の製品開発者が語る設計者の未来
初日のゼネラルセッションのゲストスピーカーは、世界初の Wi-Fi ビデオ付きドアベルを開発したRing社のCEO、創設者、主任発明者のJamie Siminoff(ジェイミー・シミノフ)氏の話でした。
この「Wi-Fi ビデオ付きドアベル」開発のきっかけは、「ガレージにいる時にドアベルが聞こえない」というシンプルそのもの。そこから、アイデアを具現化し、スマートフォンから来客者が誰なのかを知るというホームセキュリティーのあり方を変えたということが、製品化だけではないその魅力なのでしょう。
Jamie Siminoff氏から、次の言葉がありました。
Technology has only served to replace the replaceable, those doing repetitive tasks. Engineers with creativity and imagination…you still have a future.
テクノロジーは繰り返される作業にとって変わるものにすぎない。
我々設計者は創造力と想像性と創造性を備えていて、未来がある。
これは今話題になっているAIに創造性と想像力のある設計者の仕事が奪われることはない。
と、言いたかったのでしょう。
ユーザー・サクセスストーリーというだけではなく、エンジニアにとって勇気を与えてくれる講演でした。
3D CADは繋がる
DAY1では、クラウドによる設計共有が始まることが示されました。
これまでクラウドとの間には壁さえ感じていた3D CADデスクトップユーザーも「繋がることができる」ことが示されたことが、衝撃的ともいえます。これは世界の流れです。
この流れはDAY2に行われたドメインセッションに続いていきます。
ドメインセッションでは、設計・解析(設計検証)・製造という3つのカテゴリー毎に講演が行われました。
次回はこのドメインセッションの話をしましょう。