平面度の記号は「まっ平らな面!」と覚える
本記事は、グローバル図面に欠かせない幾何公差の意味と図面ルールについて解説する連載記事です。
前回の記事に引き続き、14種類の幾何特性の詳細を取り上げていきます。第6回目となる今回は、「形状偏差」に分類される平面度の意味と、その記号の使い方について詳しく解説します。
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目次
1.形状偏差とは
形状偏差は単独形体に分類され、データムに関連がなく、幾何偏差が決められる形体になります。
形状偏差には次の6つの幾何特性があります。
・真直度
・平面度 ←今回解説する幾何特性
・真円度
・円筒度
・線の輪郭度…形状偏差の場合、データムに関連しない
・面の輪郭度…形状偏差の場合、データムに関連しない
2.平面度とは(JIS B 0684-1:2019)
平面度は「平面形体の幾何学的に正しい平面(幾何学的平面)からの狂いの大きさ」とJISで規定されます。
平面度は形状偏差のグループに属するためデータムを必要としませんが、データムの代わりに“基準平面(平面度曲線に当てはめた平面)”を利用します。
基準平面と平面度曲線(実際の面)の最大値(外側)および最小値(内側)に接し、間隔が最小になる二つの平行平面間を測定します(図6-1)。
3. 平面度の記号と記入のルール
平面度を図面に表現する場合、公差記入枠に平面度の記号と幾何公差値、必要に応じてその他の記号を記入します。公差記入枠は2つの区画のものを使い、データムを記入する左から3番目以降の区画は存在しません(図6-2)。
平面度の対象となる形体は1枚の平面です。従って、その平面形体を包み込む平行2平面の空間が公差領域となります。公差領域から幾何公差値にφを使うことはありません(図6-3)。
注)2023までのJISでは、平面度に中心平面の指示が明示されていませんでしたが、最新のISOやアメリカの規格であるASMEでは平面度を中心平面に指示した図例が明記されていますので、JISでも同様に適用できると考えます。
4. 平面度を適用する形状
平面度を適用する形状は、一般的に平面を持つブロック形状に指示します(表6-1)。
表6-1 平面度を適用する形状例
適用する形状例 | データム | 対象形体 | 補助記号 | ||
1 | ブロック平面
断続平面(同一面) |
不要 | 平面
(断続形体) |
–
(CZ) |
|
2 | 円筒上の平面
断続平面(同一面) |
不要 | 平面
(断続形体) |
–
(CZ) |
|
3 | 中心平面 | 不要 | 中心平面
(断続形体) |
–
(CZ) |
5. 加工で平面度が崩れるパターン
ブロック状の部品をフライス盤で加工する際に、マシンバイスでワークをつかみ正面フライスで平面を切削します。このとき刃物が高速でワークに接することで高熱が発生します。加工後に高温になったワークの表面が冷えていく過程で材料の偏析(鋼材に含まれている合金元素や不純物が偏って分布してること)によって成分のバランスが崩れて反りやうねりが生じます(図6-4)。
図6-4 熱影響によって平面度が崩れるパターン
~ コーヒーブレイク ~ 光明丹(こうみょうたん) 別名:鉛丹(えんたん) 加工中にどの程度凹みが生じているかを簡易確認する手段に光明丹を利用した方法があります。 光明丹は、歯車の歯当たりや平面度の度合いを見るための赤いペースト状のものをいいます。加工現場で平面度の狂いを目視確認する場合、光明丹を定盤に塗り、その上でワークを密着させながらスライドさせると、光明丹が付着する部分とそうでない部分に分かれ、反り具合を簡易的に確認することができます。ワークに均一に光明丹が付けば、平面度はゼロに近いことがわかります。 |
6. 平面度の図面と公差領域
図面に平面度を指示する場合の設計意図と図面指示例、公差領域を解説します。
1)表面に平面度を指示する場合
設計意図
部品①に部品②を取り付ける際、互いの面の反りを最小限にして異物侵入や内部からの漏れを防ぐためにできるだけ密着させたい(図6-5)。
図面指示(部品①)
密着させたい接合面である高さの寸法線の矢と明確に外して平面度を指示します(図6-6)。
公差領域(部品①)
0.1mm離れた平行2平面間の領域で規制されます(図6-7)。
図面指示(部品②)
反って欲しくない接合面である平面の高さ(厚み)寸法の矢と明確に外して平面度を指示する(図6-8)。
公差領域(部品②)
0.1mm離れた平行2平面間の領域で規制されます(図6-9)。
2)断続した表面に平面度を共通領域で指示する場合
設計意図
溝によって分断された複数の同一平面のある部品①に部品②を取り付ける際、互いの面の反りを最小限にして異物侵入や内部からの漏れを防ぐためにできるだけ密着させたい(図6-10)。
図面指示(部品①)
溝によって分断された複数の平面が全体にわたって反ってほしくないとき、分断された平面の高さ(厚み)寸法の矢と明確に外したうえ公差値にφを付けずに平面度を指示し、公差値に続けて記号CZ(共通領域)を追記します(図6-11)。
図6-11 共通領域で指示した例
公差領域(部品①)
2つの溝部分は無視をして、0.1mm離れた平行2平面間の領域で規制されます(図6-12)。
共通領域を使うときの注意点
図6-10に示した図面において、共通領域の記号CZを記入し忘れると個別に平面度を測定することになり、複数の面が同一面である保証が取れなくなります(図6-13)。
図6-13 共通領域の記号CZがない時の指示例と公差領域の解釈
3)中心平面に平面度を指示する場合
設計意図
上下対称形状の部品①が上下どちらの面になっても台座に密着して欲しい(図6-14)。
図面指示
高さ(厚み)の寸法線の矢に幾何公差の指示線を当てて平面度を指示します(図6-15)。
公差領域
中心平面は0.1mm離れた平行2平面間の領域で規制されます(図6-16)。
7. 平面度の検査方法
CNC3次元測定機による表面の評価
平面度を測定する場合、CNC3次元測定機を使用し、下図のように面の複数個所の打点を測定するか、複数の母線を引きずるように測定する“倣(なら)い測定”を選択することができます。共通領域(CZ)の測定は、同一面にない部分を無視した形でデータを採取し測定します(図6-17)。
まとめ
今回は、平面度を指示する際のルールについて解説しました。
平面度をCNC3次元測定機で測定するイメージも知ることができました。
定盤の上に置いて検査をしますが、平面度は形状偏差のグループに属することから定盤との平行を検査するわけではありません。したがって、定盤の上に置いた状態でも傾斜面や垂直面の平面度を測定することが可能です。
次回は、真直度や平面度と同じ形状偏差のグループに属する真円度について解説します。
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