金属加工 ものづくり基礎知識

プレス金型とは|構造・部品名称・単発と順送の使い分け

プレス金型は、板材を挟んで押し切ったり、曲げたり、絞ったりするための工具です。同じ形の部品を大量に作る場面で使われ、1つの金型で数十万〜数百万個の部品を生産できます。

金型を発注する側の設計者にとっても、構造や部品の名称、クリアランスの考え方を理解しておくと、金型メーカーとの見積もりや仕様のやり取りがスムーズになります。今回は、プレス金型の構造と部品名称、単発型・順送型・トランスファー型の使い分け、そして品質を左右するクリアランスの考え方を解説します。

プレス加工とは?

プレス金型とは

プレス金型は、上型と下型が対になった構造をしています。プレス機がこの2つを近づけ、間に置かれた材料に力を加えることで加工が進みます。

切削加工が材料を削って形を作るのに対し、プレス加工は材料を変形させて形を作ります。削りくずが出ないため材料の歩留まりがよく、1回のストロークで加工が終わるため、加工速度も速くなります。この2点が、量産で選ばれる理由です。

反面、形状ごとに専用の金型が必要になります。金型費が先に発生するため、生産数量が少ないと1個あたりのコストは切削加工より高くなります。どこで逆転するかが、工法選定の判断軸になります。

プレス金型の構造と部品の名称

抜き型を例に、構造を見ていきましょう。部品の数は多く見えますが、役割で3つに分けると整理できます。

上型は、プレス機に取り付けるパンチホルダを一番上に、パンチの背面を受けるバッキングプレート、パンチを保持するパンチプレートの順に重なり、その下からパンチが突き出す構造です。下型は、パンチに対になるダイを保持するダイプレートと、プレス機の下側に取り付けるダイホルダが重なっています。上型と下型の間には、材料を押さえるストリッパプレートがあり、両端を貫くガイドポストが上下の芯を合わせています。

製品形状を決める部品

パンチとダイの2つだけです。パンチが雄型、ダイが雌型にあたり、この2つのすきま(クリアランス)が切り口の品質を決めます。金型の性能を語るとき、実質的にはこの2つの話をしています。

材料を扱う部品

ストリッパプレートは、材料をダイに押し付けて動かないようにし、抜き終わったあとにパンチから材料を引き離します。ばねで動く可動ストリッパと、固定式のものがあります。可動式のほうが材料の押さえが効くため、平坦度が求められる部品に向きます。

位置と力を受け持つ部品

残りのプレートは、パンチとダイを正しい位置に保ち、加工の力を受けるためのものです。

部品 役割 押さえておくこと
パンチプレート パンチを保持し、水平方向の位置を決める 軸方向の力は受け持たない
バッキングプレート パンチの背面を受ける 細いパンチがホルダにめり込むのを防ぐ
パンチホルダ/ダイホルダ プレス機に金型を取り付ける台 金型全体の剛性を支える
ダイプレート ダイを保持する 抜きカスを逃がす穴が下に続く
ガイドポスト・ブシュ 上型と下型の芯を合わせる ここが狂うとクリアランスが片寄る

表1 主なプレートの役割

ガイドポストとブシュ、上下のホルダをまとめてダイセットと呼びます。市販の規格品を使うことが多く、金型メーカーはこの上にパンチとダイを組み付けていきます。

工程方式による3つの型

プレス金型は、1つの型でいくつの工程をこなすかで分類されます。同じ製品でも、生産数量によって選ぶ型が変わります。

単発型は「抜き→曲げ→仕上げ」のように1工程ごとに金型を変え、そのたびに段取り替えをします。順送型は帯状の材料を送りながら1つの型の中で複数工程を連続して行い、材料はつながったまま進みます。トランスファー型は材料を切り離してから搬送装置で工程間を移動させ、複数の工程をこなします。

選び方の軸は生産数量です。試作や少量生産なら単発型、量産なら順送型、深絞りが入るならトランスファー型が候補になります。ただし順送型は金型費が大きいため、必要数量に届かないと1個あたりの単価はかえって高くなる点に注意が必要です。

方式 1型あたりの工程 金型費 向いている場面
単発型 1工程 安い 試作、少量生産、大物、形状変更が想定される部品
順送型 複数工程 高い 量産。帯材のまま連続加工でき、人手が少なくて済む
トランスファー型 複数工程 高い 深絞りなど、材料をつないだままでは加工できない形状

表2 工程方式の比較

単発型

1つの型で1つの工程だけを行います。抜き、曲げ、絞りをそれぞれ別の金型で加工し、工程ごとに段取り替えが必要です。金型費は抑えられますが、工程数だけ人と時間がかかります。

試作や少量生産、形状変更の可能性がある部品では、この方式が現実的です。あとから寸法を直すときの改修も、順送型より簡単に済みます。

順送型

1つの型の中に複数の工程を並べ、帯状の材料を一定ピッチで送りながら順に加工します。材料は最後まで帯につながったまま進み、最終工程で切り離されます。

1台のプレス機で完成品まで作れるため、量産では圧倒的に有利です。ただし金型費が大きく、工程を並べる分だけ型が大きくなります。また、材料を送るためのつなぎ部分(キャリア)が必要になり、そのぶん材料の歩留まりは落ちます。

トランスファー型

材料を先に切り離し、搬送装置で工程間を移動させます。順送型のようにつなぎ部分を残さないため、深い絞りや、材料が大きく動く形状に対応できます。搬送装置を含めた設備が必要になるため、導入のハードルは高くなります。

クリアランスが品質を決める

クリアランスは、パンチとダイのすきまです。板厚に対する百分率で表され、材質と板厚によって適正値が変わります。金型の良し悪しを分ける、もっとも基本的な数値です。

切り口は4つの層でできている

プレスで抜いた断面は、材料の入口側から順にだれ、せん断面、破断面、かえり(バリ)の4層になります。パンチが食い込んでせん断面ができ、そのあと刃先から入ったき裂がつながって材料が分離するため、破断面ができます。

適正なクリアランスでは、パンチ側とダイ側から入ったき裂がきれいにつながります。このときせん断面は板厚の3分の1から2分の1を占め、かえりも小さく収まります。

小さすぎる場合と大きすぎる場合

  • 小さすぎる:上下のき裂がつながらず、2次せん断面が出る。抜き荷重が増え、刃先が欠けやすくなる
  • 大きすぎる:だれとかえりが大きくなり、そりも出る。抜き荷重は小さくて済むが寸法精度が安定しない

どちらに振っても不具合が出るため、金型は摩耗を見込んで、適正範囲の中でも小さめの値で作るのが一般的です。使ううちに刃先が摩耗し、クリアランスは自然に大きくなっていきます。

金型に使われる材料

パンチとダイは、材料を切り続けても摩耗しない硬さと、割れない靭性の両方が求められます。生産数量と被加工材の硬さで選び分けます。

材料 主な用途 特徴
冷間ダイス鋼(SKD11など) パンチ、ダイの標準 耐摩耗性と靭性のバランスがよく、もっとも広く使われる
高速度工具鋼(SKH) 細いパンチ、衝撃のかかる部位 靭性が高く、欠けにくい
粉末ハイス鋼 高精度・長寿命が必要な部位 組織が均一で、摩耗と欠けの両方に強い
超硬合金 モーターコアなど超量産 摩耗に非常に強いが高価で、衝撃に弱い
一般構造用鋼(SS400、S50Cなど) ホルダ、プレート類 刃物ではないため熱処理せず使うことが多い

表3 プレス金型に使われる主な材料

プレート類にも役割に応じた使い分けがあります。バッキングプレートのように面圧を受ける部品は熱処理した鋼を使い、位置決めだけが目的のプレートは熱処理せずに使います。

まとめ

プレス金型は、一度作ったあとでは形状変更に改修費と時間がかかる工具です。上型・下型の構造、パンチとダイのクリアランス、単発型・順送型・トランスファー型の特徴をおさえておくと、金型メーカーとの仕様確認や見積もりの精度が上がります。

生産数量や部品形状によって最適な工法は変わるため、迷ったときは金型メーカーに具体的な条件を伝えて相談することをおすすめします。とくにバリの許容値やクリアランスの基準は、社内標準や取引先の実績に沿って早い段階で決めておくと、後工程での手戻りを減らせます。

よくある質問

Q. 単発型と順送型はどこで切り替わりますか

生産数量で判断しますが、境目は部品の形状と工程数で変わるため、一律の目安はありません。工程数が多いほど順送型の優位が早く出ます。金型費と加工賃の両方を含めた1個あたりのコストで、両方式を試算して比較するのが確実です。

Q. プレス金型と樹脂金型はどう違いますか

プレス金型は板材を変形させる工具、樹脂金型は溶かした材料を流し込んで固める型です。プレス金型には材料を流す流路がなく、パンチとダイのすきまで形を作ります。求められる性質も異なり、プレス金型では耐摩耗性が、樹脂金型では表面性状と冷却性能が重視されます。

Q. 金型のメンテナンスは何をしますか

主に刃先の研磨です。パンチとダイの刃先は使ううちに摩耗し、クリアランスが広がってバリが大きくなります。所定のショット数ごとに刃先を研ぎ直し、寸法を戻します。研磨を繰り返すと部品が短くなるため、いずれ交換になります。

Q. 金型の寿命はどのくらいですか

材料、板厚、金型材質、メンテナンスの頻度で大きく変わるため、一般的な数値は示せません。金型メーカーに保証ショット数を確認し、それを前提に更新計画を立ててください。

Q. 抜きカスが上がってくるのはなぜですか

カス上がりと呼ばれる不具合で、抜いたカスがパンチに付いて戻ってくる現象です。クリアランスが大きい、パンチ先端が平ら、カスが磁気を帯びているなどが原因になります。パンチ先端に突起を付ける、真空で吸引するといった対策があります。