前回、コミュニティの話をしましたが、
今回は、3DCADのコンセプトから始まり、そのトレンドについて話をしていきます。
3DCADのコンセプト
iCAD SX
私が、日本製3DCADの代表と考えるiCAD SX(iCAD株式会社)では、
iCAD SX製品コンセプト(iCAD社Webより転載)
本エンジンは、
他の3次元CADシステムに搭載されているエンジンと比べ200倍の高速処理性能を持ち、100万部品の大規模な機械装置においても0.2秒で処理することが可能となります。
このエンジンにより、
「設計情報を活用したデジタル立会い」と「メカ・電気・制御の融合設計」が可能となり、開発リードタイムの短縮と品質向上を図ることができます。
とあります。
更には、この3DCADの特徴として、機械・装置設計への用途を対象にしているので、
- 平面と円筒形状の部品を対象としている
- 数千~数万もの部品構成を対象としている
というのも特徴になっています。
- いかに早く描画できるのか
- いかに軽いデータとなるのか
- いかに安定しているのか
これらを探求したiCAD SXであるからこそ、
実際の運用場面でも、3DCADが「ビジー状態」にならないこの3DCADの品質と優位の高さを、私は感じています。
iCAD社にしてみれば、きっと「当たり前のこと」なのでしょう。
更には、「メカ・電気・制御の融合設計を実現」というキーワードがあります。通常、メカ設計と電気設計が別々のシステムで行われています。そのため、それぞれのデータ連携による効率化は容易ではありません。
そこに着目したiCADは、メカ・電気・制御設計を同一システムで行う融合設計環境を実現することで、設計情報の一元化と、メカ・電気・制御設計の各々に最新情報を参照が出来ることや、並行検討を可能にしました。このように、設計シーンでの活用度を深めていることも大きな特徴です。
これが実現できるのも、「データハンドリング性の高さ(早い・軽い・安定)」が実現できているからこそなのでしょう。
SOLIDWORKS
一方、世界で最も売れている3CADと言われている3DCAD SOLIDWORKS(ダッソー・システムズ ソリッドワークス社)ではどうでしょうか。
SOLIDWORKS 3D CADを選ぶ理由(SOLIDWORKS社Webより転載)
製品の開発方法と製造方法を飛躍的に改善します。
SOLIDWORKS® 製品開発ソリューション スイート全体の基盤であるSOLIDWORKS CADパッケージは、設計、シミュレーション、コスト見積り、製造可能性チェック、CAM、環境配慮設計、データ管理に対応しています。
とあります。
また更には、
とあります。
その詳細について、私なりに解釈してみると、次の一言に要約できます。
「単なる設計のためのツールではなくて、製造業全ての領域で使用されるもの」
製品の基本機能においても、そのデータ軽量化技術や、3DCAD自体の安定性を向上させていると同時に、PLM(Product Lifecycle Management)として、他ソリューションへの効果というものに注力していると言えます。
どのような3DCADを選ぶかは、更に3DCADの特性を理解した上で、自社の課題解決につながる、自社の運用に適した3DCADをベンチマークによって、選定すべきです。
ベンチマーク
私は3DCADで評価すべき機能を次のように考えます。
1.機能性
- 必要とするパーツモデリング機能
- ヒストリー/ノンヒストリー
- 自由曲面の必要性
- 干渉チェック
- 断面表示機能
- アセンブリ手法
- 拘束条件の付け方
- 2D図面化手法
- 3Dと2Dとの連携性(新規/修正時)
- 2D図面作成機能の充実(規格との準拠)
- 部品表(BOM)作成機能
- 部品表の拡張性(MISUMI inCAD等との連携性)
- 操作性能(操作性・GUIの使いやすさ)
- マウス操作のしやすさ
- コマンド表示の見やすさ
2.コスト
- 製品本体価格
- 製品レベル(製品仕様)による価格バリエーション
- 保守費用
3.連携
- 他3DCADとのデータ連携性
- 他ソリューションとの連携性有無と連携強度
- CAE
- CAM
- 3DCADデータ管理 PDM(Product Data Manegement)
- 3Dプリンター
- ハードウェアとの適合性
- Windows OS(オペレーションシステム)対応
- CPU、グラフィックス
- 3Dマウスなど操作性向上となる製品との連携
4.運用
- データハンドリング性能の高さ
- バージョンアップ頻度
- サポート体制(メーカー/代理店)
- コミュニティの充実(ユーザーグループ(会)の存在)
というように、その評価項目は少なくありません。
高額な3DCADを選定するのですから、定性的ではなく、定量的な評価を行うことが大切です。
ここで挙げた3DCAD以外にも、
- Inventor(AUTODESK)
- Fusion360(AUTODESK)
- Solid Edge(SIMENSE)
など、評価すべき3DCADはたくさんあります。
さて、トレンドのお話を進めたいのですが・・・
デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーションって何が違うの
製造業のみならず、「デジタルトランスフォーメーション(英:Digital transformation 略称 DX)」という言葉をよく聞くようになりましたが、いかがでしょうか。
このデジタルトランスフォーメーションですが、その解釈は、
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものです。
この3DCADもデジタル化されたツールであり、このデータを用いてCAEやCAMなどといった連携を図ると共に、そのデータはPDMシステムによって一元管理されます。
これらは、デジタライゼーション(英:Digitalization)の一つですが、
デジタルトランスフォーメーションは、デジタライゼーションとは異なるものです。
以下のようにまとめてみました。
製造業で言えば、デジタライゼーションによって、製品に対する付加価値を高める努力をしてきています。
最近では、IoT(Internet of Things)やクラウドシステムを使用することにより、業務の効率化も図られていますが、どうやら、デジタルトランスフォーメーションは「その次」を示しているようです。
「どうデジタル化するのではなく、どう仕事のやり方を変えるのか」という、もっと大きな枠組みのようです。
なんだか「モヤっと」しますが・・・
私は、製造業におけるデジタルトランスフォーメーションとは、
- 開発設計・製造段階でデジタル化されてきたものが繋がる
- 手書き図面→2DCAD→3DCADというデジタル化
- 3DCAD⇔CAEという開発手法
- 3DCADデータ→CAM
- 3DCADデータ→3Dプリンター
- 3DCADとIoTとクラウドによりもたらされるデジタルツイン
- 3DCADデータからのAR(拡張現実)・VR(仮想現実)による可視化
- 3Dデジタルデータの管理
- 自社・顧客における製造管理
「これらが全て繋がっていく中で、そしてさらに、営業やサプライチェーン、顧客に至るまで、仕事のやり方や業界の在り方さえも変えてしまう」ものじゃないかなと考えています。
デジタルトランスフォーメーション DXは今後のトレンドとして外せないようです。