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図面にはいろいろな役割がある​

図面の役割は、部品形状を表現する以外にも色々あり、部品の設計や手配において重要な設計伝達手段として利用されています。3次元単独図への置き換えがなかなか進んでいないのも、図面が多く利用され続けている事を裏付けています。

この記事では、全社で流通している情報の共有化に活用されている図面の役割について解説します。

図面とは?​

図面とは部品の形状を2次元(紙上)で表現したもので、図面を見るだけで部品形状、加工情報、検査方法、その他の情報を読み取ることができます。また図面の表現方法はISOやJISなどで規格化されており、世界共通言語として流通させることもできます。

​図面の一般的な役割​

図面の役割は、製作する部品の情報を関係者が確認し共有できるための情報表現ですが、詳しく解説するためにその役割を4つに分類します。

① 部品形状の表現

​図面に三角法などの投影方法を使って、部品の形状を正面、平面、側面の各方向からの視点で描くことで、第3者に部品形状を正確に伝達することができます。
また必要に応じて3平面では表現できない部分は、断面図、詳細図、等角投影図などを追加することで正確に伝達することができます。

② 部品の手配

部品を手配する場合は図面が利用されます。どのような部品形状を製作するかを相手に100%伝える必要があるためです。購買部門は図面を利用してメーカに製作の可否を問い合わせたり、見積もりを取ったりしますので、図面の描き方次第で見積もり金額が大きく変動する場合もあります。たとえば寸法公差を厳しくすると部品形状が同じでも見積もり金額が跳ね上がります。

③ 契約書

購買部門は図面を利用して部品を手配しますので、図面は契約書としても機能します。図面の通りに部品を製造する必要があるのです。もし寸法などが図面通りになっていない場合には契約違反として部品の納品を拒否することができます。

④ 測定指示書

図面には寸法公差、幾何公差、表面荒さなどが指定されています。例えば幾何公差は部品の測定方法を暗に示しているので測定指示書の役割も果たします。幾何公差で振れが指定されたら測定用治具を利用してダイヤルゲージで部品を回転させてながら測定しなさいという指示になります。

図面の注意点

情報の共有手段という図面の役割を詳しく解説してきましたが、大きく4つの注意点があります。

① 図面読み取りスキル

図面から部品形状を読み取るには練習が必要です。三角法を理解して3方向の視点から描いた3つの絵を見て、頭の中で3次元の形状を正確に作り上げる必要があり、個人のスキルのばらつきで同じ図面を見て各々が違う形状を想像してしまう事があります。

② 投影図

三角法で部品の投影図を描く時は、頭の中の3次元部品を3方向の視点で分解して正確に描く必要がありますが、これには練習が必要です。誤った投影(ありえない形状)を描いてしまった場合には検図で指摘されますが、ありえる形状で投影を誤った場合にはそのまま手配されてしまいます。

③ デフォルメ図面

設計が忙しい場合には、長さ違いの類似部品の図面を描く際に部品の外形図の長さを書き換えずに長さ寸法だけ編集することがあります。これは図面として成立するのですが、加工現場、製造現場を混乱させる原因となります。

④ 3次元での検図

アセンブリや部品に対して検図ポイントを指定して監視することができます。設計変更や流用設計時にも設計基準と適合しない変更を行うと自動的に警告を出しますので、設計ミスを未然に防ぐことができます。

まとめ

製品開発から量産にかけて重要な役割を持つ図面ですが、近年は図面レスが加速して2D図面がその役割を終えようとしています。図面に取って代わるのがMBDと呼ばれる3D図面です。図面が伝えてきた情報を、図形や文字から3Dモデルとプロパティや属性に置き換えて関連するアプリケーションがダイレクトに情報を読み取ります。まだMBDの検討をしていないなら、そろそろ準備を始めることが必要です。

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