製造現場から褒められる部品設計の秘訣連載記事

製造現場から褒められる部品設計の秘訣【第15回】
アルミ合金の特徴や設備部品での選び方を解説(後編)- フラットバー、フレーム材など

生産設備や装置の設計者さん向けに、“タメになる”部品設計の秘訣について、製造現場目線で情報を共有させていただくシリーズ第15回の後編です。

※※アルミ合金の特徴、アルマイトについて、ブロック材やプレート材、丸棒材、丸パイプ材の特徴は「アルミ合金の特徴や設備部品での選び方を解説(前編)」をご覧ください。

6. アルミ合金の板材の特徴

アルミ合金材料のうち、主に板金部品に用いられる板材について解説します。

アルミ合金の板材の特徴

アルミ合金の板材は主に板金部品で多用されます。
アルミ合金は、鉄(SS400など)やステンレス(SUS304など)と比較すると溶接加工が難しく、加工費や品質の安定性を考えた場合には考慮が必要です。

板金部品同士の接合には、溶接の代わりにリベット締結や、スポット溶接なども良く利用されます。特に航空機部品はリベット締結が主流であることは良く知られていますね。リベット締結も、一般的にはブラインドリベットを活用する場合が多いと思います。

一方向からの挿入で複数の部品を締結できるため、組立工数の低減に役立ちます。

図6-1 ブラインドリベットの外観(POPオープンタイプリベット)

図6-1 ブラインドリベットの外観(POPオープンタイプリベット)

参考:MiSUMi-VONA POPオープンタイプリベット AD ABS

図6-2 ブラインドリベットによる締結イメージ

図6-2 ブラインドリベットによる締結イメージ

参考:MiSUMi-VONA POPオープンタイプリベット AD ABS(ポップリベットの締結方法)

ブラインドリベットには、適正な合計板厚、穴径、材質(マンドレル、ボディ)などの選択項目がいくつかありますので、設計内容に応じて適正な仕様を選定してください。ブラインドリベットの締結は、裏側に若干の突起形状が残りますので、その空間的余裕も見込んだ設計が必要となります。

また、板金部品のネジ部の形成には、直接雌ネジを形成すると強度不足が懸念される場合が多々あると思います。そのようなときは、ネジ穴周辺を盛り上げてから雌ネジ加工を施す「バーリング」や、圧入ナット(またはクリンチングナット)の利用をお勧めします。

バーリングは、図6-3のように元々の母材にネジ穴をあけるよりも、ネジ部を深く確保することが可能です。板厚とネジの規格で形成できる範囲が変わりますので、加工部門に確認をしながら設計を進めてください。

図6-3 バーリング

図6-3 バーリング

圧入ナットは、ステンレスや鉄製のナットをワークに押し込み、雌ネジとして機能させる方法です。ワークにアルマイト処理を施す場合には、アルマイト処理後に圧入ナットを取り付けます。

図6-4 圧入ナット外観

図6-4 圧入ナット外観

参考:MiSUMi-VONA カレイナット(ステンレス母材用)SS-SS

アルミ合金板材の抜き加工では、材料が柔らかいためタレットパンチ加工に向いていますが、レーザーカットにはあまり向いていません。加工現場でどの程度の板厚まで対応可能か、事前に確認しておくと良いでしょう。

また、曲げ加工については、鋭角曲げになるほど曲げの外側部分にひび割れが生じやすくなります。曲げRが大きいほどひび割れは緩和されますが、加工現場の型のラインナップを確認する必要があります。板厚が厚く、硬い材料程ひび割れが生じやすいためです。

5,000番台ではこのひび割れを防ぐために、O材を利用することも多いようです。ひび割れを防ぎたい場合は、材質と曲げR、曲げ角度の組み合わせについて、事前に加工現場に確認するようにしましょう。

図6-5 アルミ合金 板材の曲げ部

図6-5 アルミ合金 板材の曲げ部

アルミ合金の定尺板材は、メーター板(1,000mmx2,000mm)、4×8板(1,250mmx2,500mm)が一般的です。

板厚は、1.0mm、1.5mm、2.0mm、3.0mmが流通している材料ですね。
材質もA5052(質別はO材、H34、H112)が最も流通している材料となります。

それ以外の板材は、切り板として手配することになります。他にも、材料の時点でアルマイト処理の施されている、「アルマイト板」があります。加工による切断面はアルミ合金の素地のままとなりますが、アルマイト処理の工程を省けるため、大変使い勝手の良い材料とも言えます。 

7. アルミ合金のフラットバーの特徴

アルミ合金材料のうち、簡易的な継ぎ手やブラケットなどに利用されるなどのフラットバーについて解説します。

アルミ合金のフラットバーの特徴

フラットバーは、一定の厚みと幅を持った長尺の材料で、所望の長さで切断することにより手軽にプレート形状の材料として活用でき、主に加工精度の必要ないブラケット類に多用されます。大変使い勝手の良い材料ですので、ぜひ規格寸法を覚えておき、設計に役立てていただければと思います。

表7-1 アルミ合金材料フラットバーの標準寸法

表7-1 アルミ合金材料フラットバーの標準寸法

材質: A6063

表7-1 アルミ合金材料フラットバーの標準寸法※材料業者公開情報より、筆者にて作成

材料業者公開情報より、筆者にて作成 

 

8. アルミ合金の形材の特徴

アルミ合金材料のうち、主にフレーム形状部品に用いられるアングルや角パイプ、フレーム材などの形材について解説します。

アルミ合金の形材の特徴

アルミ合金の形材は、後述のアルミフレーム材の一般化と共に、製缶用の部材としては活用の機会が少なくなっていると思います。それでも、それぞれの形状をうまく活用すれば、合理的な設計も可能ですね。ぜひ標準となる規格寸法も把握しておきましょう。

以下の表に、アルミ合金の角パイプ材、アングル材、チャンネル材の標準寸法表を示しておきます。

表8-1 アルミ合金材料角パイプの標準寸法 正方形

表8-1 アルミ合金材料角パイプの標準寸法 正方形

材質: A6063-T5

表8-1 アルミ合金材料角パイプの標準寸法 正方形※材料業者公開情報より、筆者にて作成

材料業者公開情報より、筆者にて作成

 

表8-2 アルミ合金材料 角パイプの標準寸法 長方形

表8-2 アルミ合金材料 角パイプの標準寸法 長方形

材質: A6063-T5

表8-2 アルミ合金材料 角パイプの標準寸法 長方形※材料業者公開情報より、筆者にて作成

材料業者公開情報より、筆者にて作成

 

表8-3 アルミ合金材料 アングル材の標準寸法 等辺

表8-3 アルミ合金材料 アングル材の標準寸法 等辺

材質: A6063-T5

表8-3 アルミ合金材料 アングル材の標準寸法 等辺※材料業者公開情報より、筆者にて作成

材料業者公開情報より、筆者にて作成

 

表8-4 アルミ合金材料 アングル材の標準寸法 不等辺

表8-4 アルミ合金材料 アングル材の標準寸法 不等辺

材質: A6063-T5

表8-4 アルミ合金材料 アングル材の標準寸法 不等辺※材料業者公開情報より、筆者にて作成

材料業者公開情報より、筆者にて作成

 

表8-5 アルミ合金材料 チャンネル材(溝形鋼)の標準寸法

表8-5 アルミ合金材料 チャンネル材(溝形鋼)の標準寸法

材質: A6063-T5

表8-5 アルミ合金材料 チャンネル材(溝形鋼)の標準寸法※材料業者公開情報より、筆者にて作成

材料業者公開情報より、筆者にて作成

これらの材料の標準寸法は、一例に過ぎません。多くの材料メーカーから様々な形状の材料が流通していますので、入手可能な材料メーカーのラインナップを確認しておくようにしましょう。

9. アルミ合金のフレーム材の特徴

アルミ材料は鉄やステンレスのように、製缶加工によるフレーム構造を用いられることは限定的ですが、押出材の特徴を生かした「アルミフレーム」を活用して、装置の躯体を製作するなどの事例が増えています。

ここでは、アルミフレーム材の特徴についてご紹介します。

アルミ合金のフレーム材の特徴

アルミフレームは押出材により、図9-1のような特徴的な断面を持った材料です。

図9-1 アルミフレーム材の断面(ミスミ:HFS8-4040)

図9-1 アルミフレーム材の断面(ミスミ:HFS8-4040)

このような形状は、剛性を保ちながら軽量化するのはもちろんですが、特筆すべきは各辺に形成されている「T溝」と呼ばれるT型の溝形状を備えている点です。

ここに図9-2のようなアルミフレーム用ナットを挿入することで、容易にネジ穴を付加することが可能となり、ブラケット等での組み立てや、機構部品などを取り付けることに利用することが可能となります。

図9-2 アルミフレーム用ナットの例(ミスミ:HNTT等)

図9-2 アルミフレーム用ナットの例(ミスミ:HNTT等)

アルミフレーム用ナットは、各種材質、ネジ穴寸法が選べるほか、「後入れ」「先入れ」や位置決め用のロックナットを備えたタイプ、ずれ防止用のばねナットなど様々な種類が提供されています。組み立ての手順や、用途などに応じて選定すると良いでしょう。

アルミフレームや各種アクセサリーパーツを活用すると、容易かつ安価に装置などの架台や躯体といったフレーム形状を製作することができます。アルミフレームを専用のブラケットで締結しただけの、最もシンプルなフレーム形状の例を図9-3に示します。

図9-3 アルミフレームによるフレーム形状の例

図9-3 アルミフレームによるフレーム形状の例

アルミフレームは、このような締結用のブラケットだけでなく、様々なアクセサリーパーツが充実している点も魅力ですね。

装飾性を向上させるために断面を隠すキャップや、溝を埋めるための溝カバーもあります。アルミフレーム専用に設計されたパネルや扉部品、アジャスタを活用すると、作業用ブースなども容易に設計・製作できます。取っ手やキャスターなども取り付けられますので、可搬式の小物装置の躯体としても活用できますね。

アルミフレームはこのT溝を利用することで、様々なアクセサリーパーツを容易に脱着でき、大変拡張性に優れた素材であると言えます。どのようなアクセサリーパーツが存在するか、ぜひWEBサイト等で確認してみてください。

参考:MiSUMi-VONA アルミフレーム・アクセサリー部品のカテゴリ一覧

MiSUMi-VONAでは、各種アルミフレームのラインナップが充実していて、アルミフレーム自体も、各種サイズ(溝サイズ、フレームサイズ)と、形状タイプ(標準、軽量、高剛性)、表面処理(白アルマイト、黒アルマイト、クリア塗装、焼付塗装)などが選べるようになっています。

アルミフレームは4面全てにT溝が入っているタイプが一般的ですが、T溝が1面、2面、3面にのみ入っているタイプ、断面が傾斜しているタイプなど、様々な種類が存在します。アルミフレームの標準寸法を表9-1に示しますので、ぜひ設計の参考にしてみてください。

表9-1 アルミ合金材料 アルミフレーム材

表9-1 アルミ合金材料 アルミフレーム材

材質: A6N01SS-T5

シリーズ W A B 溝数
A部
溝数
B部
5シリーズ 6 20 20 1 1
20 40 1 2
20 60 1 3
20 80 1 4
25 25 1 1
25 50 1 2
40 40 2 2
40 60 2 3
40 80 2 4
6シリーズ 8 30 30 1 1
30 60 1 2
30 90 1 3
30 120 1 4
3 300 1 10
60 60 2 2
60 90 2 3
60 120 2 4
50 50 2 2
50 100 2 4
100 100 4 4
8シリーズ

 

10 40 40 1 1
40 80 1 2
40 160 1 4
80 80 2 2
80 160 2 4
8-45シリーズ 10 45 45 1 1
45 90 1 2
45 180 1 4
50 50 1 1
50 100 1 2
90 90 2 2
90 180 2 4

「MISUMI-VONAアルミフレームWEBカタログ」より筆者にて作成

10.まとめ

今回は設備部品で良く使われる材料の一つである、アルミ合金の特徴や選び方について解説しました。

アルミ合金は、鉄系材料やステンレスと比べて軽量で切削性に優れているという特徴があります。一方、柔らかくて溶接性には劣るため、ネジの形成や曲げ加工時のひび割れ対策などに注意や工夫が必要な材料でもあります。

このような特性の違いはもちろんですが、アルマイト処理やアルミフレームの存在など、他の材料にはない特徴も備えています。大変使い勝手の良い材料と言えますので、ぜひ今回の内容を踏まえて、設計の幅を広げていただければと思います。

 

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この記事の著者

小川製作所
小川真由

1980年生まれ。慶應義塾大学 大学院 理工学研究科にてシステム工学、航空宇宙工学を専攻。

前期博士課程修了後、富士重工業株式会社 航空宇宙カンパニーにて、航空機の開発業務に関わる。

家業を継ぐため、同社退職後、株式会社キャムブレーンにて、最先端の5軸加工を含む切削加工の営業、技術、製造、品質保証の実務経験を積みながら、実践的な中小企業経営のノウハウを学ぶ。

現在は、株式会社小川製作所にて、大企業と中小企業両方の視点を生かした、以下のモノづくり業務を展開中。

・職人にしかできないアナログ金属加工
・最先端の加工技術と企業ネットワークによる先端部品の供給
・3D CADを活用した機械装置の設計、開発支援

また、ブログ等を通じて、加工技術のみならず、中小企業経営、日本経済に関する情報も発信中。

・株式会社小川製作所:https://bangking-yeah.com/
・小川製作所ブログ :https://bangking-yeah.com/blog/
・MONOist 連載記事:https://www.itmedia.co.jp/author/231905/

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