ものづくり基礎知識 金属・樹脂の材料

焼き入れ不要の高硬度鋼材NAK材をご存知ですか?切削プレートの素材紹介

高硬度鋼材イメージ

高硬度鋼材の一つに「NAK(ナック)材」があります。大同特殊鋼が販売しているSCM系のプリハードン鋼で、金型の材料などにも使われる鋼材です。「硬い」「早い」「安い」という3大特長をもつNAK材について解説していきます。

NAK材が分類される「高硬度」鋼とは

素材の分類にはさまざまな方法が、ありますが、そのうちの一つに材料の「硬度」で分類する方法があります。NAK材は硬度による分類で「高硬度」分類される素材です。

硬度とは材料の変形しにくさや傷つきにくさを表す数値

材料の機械的性質には、強度(引っ張り強さや圧縮強さなど)や靱性の他に「硬さ」という項目があります。硬さとは「変形のしにくさ」を表すものですが、強度や靱性などは材料全体に荷重を加えるのに対し、硬さの評価では、材料表面に局部的に荷重を加えるのが特徴です。

金属の硬さの主な評価方法

金属の硬さの試験には押し込み試験法と動的試験法の2種類があります。押し込み試験法では圧子とよばれる硬いパーツを試験片に押しつけ、できたくぼみの大きさを測定します。動的試験法では重量物を試験片に落下させ、跳ね返りの大きさを測定します。
硬さ試験で使われることが多い4つの評価を紹介します。

  1. ロックウェル硬さ(押し込み試験)
    円錐または球の圧子を使い、くぼみの深さを測定する試験です。圧子はダイヤモンドや超硬合金で作られています。小さな圧痕で測定できるのが特徴で、ロックウェル硬さはHRCと表記されます。
  2. ブリネル硬さ(押し込み試験)
    球形の超硬合金の圧子を使い、くぼみの表面積を測定する試験です。大きなくぼみができるため、面が粗い材料でも測定できるのが特徴です。ブリネル硬さはHBと表記されます。
  3. ビッカース硬さ(銅、亜鉛)
    ダイヤモンドで作られた四角錐を使い、くぼみの対角線の長さを測定します。とても小さな圧痕で測定できるのが特徴で、ビッカース硬さはHVと表記されます。
  4. ショア硬さ(動的試験法)
    ダイヤモンドチップを埋め込んだハンマーを試験片の表面に落下させ、ハンマーの跳ね上がり高さを測定します。小さな測定機で試験片に傷を残さず測定できるのが特徴です。ショア硬さはHSと表記されます。

 高硬度鋼の定義

高硬度鋼とは、ロックウェル硬さ(HRC)では28~48HRC、ブリネル硬さ(HB)では270~450HBのものを指します。炭素鋼よりも硬く、焼き入れを行った鋼よりはやわらかいと考えておくといいでしょう。

【硬度の比較と該当する代表的な素材例】表1
ロックウェル硬さ(HRC) プリネル硬さ(HB) 代表的な素材例
軟材 110~125 アルミ合金A5052
中硬度 ~22 160~235 炭素鋼S50C
高硬度 28~48 270~450 プリハードン鋼NAK55
超高硬度 52~65 (500) ダイス鋼 SKD11
軸受鋼SUJ2(焼き入れ)

硬度の高い材料は素材自体の価格も高く、加工にも時間がかかるため、コスト負担が大きくなりがちです。そのため、硬さは必要としつつも削り量の多い加工を行いたい場合や、超高硬度鋼ほどの硬さが必要ではない場合には高硬度鋼を選択するといいでしょう。
プリハードン鋼は調質鋼ともよばれ、熱処理が施された材料でありながら切削などの機械加工が行いやすい材料です。プリハードン鋼は、ほとんどの素材においてHRC40~45程度になっており、プリハードン鋼は高硬度鋼の代表的な素材になっています。

NAK材の特徴は、硬い、早い、安い

NAK材は大同特殊鋼が販売しているプリハードン鋼で、SCM材に熱処理を施したものです。樹脂の射出成形用の材料として広く使われており、なかでもNAK55とNAK80が特によく知られています。NAK材の特徴を下記にまとめます。

硬い

NAK55(NAK80)の硬度は37~43HRCで、高硬度鋼の中でも比較的高い硬度をもっています。樹脂の射出成形に使われる金型は、高温下で繰り返しの荷重に耐えたり、繰り返しの摩擦に耐えたりする機能が求められるため、NAK材のような硬い素材が多く使われます。

【NAK材と熱処理品の比較】

材質 熱処理(℃) 機械的性質の代表値 物理的性質の代表値
引張り強さ
(N/mm2)
耐力
(N/mm2)
伸び 硬度 比重
(20℃時)
(g/cm3)
線膨張係数
(20~100℃)
(× 10-6/℃)
HRC HB
NAK55 1255 981 15% 37~43HRC (344~400HB) 7.8 12.5
HPM1 1215 1010 10% 37~41HRC (344~381HB) 7.8 11.4
S50C 焼きならし 810~860 空冷 610以上 365以上 18%以上 (8~22HRC) 179~235HB 7.87 11.7
焼鈍 約800 炉冷 (0~10HRC) 143~187HB
焼入れ 810~860 水冷 740以上 540以上 15%以上 (18~29HRC) 217~277HB
焼戻し 550~650 急冷

※上記特性値は参考値であり保障値ではありません。
※括弧は硬さ換算表(SAE J 427 * 1983年改訂)

早い

NAK材は、熱処理済みの素材であり、高い硬度を持ちながら、切削性に優れているのが特徴です。そのため、焼き入れ材などに比べて切削加工や仕上げにかかる時間を短縮できます。
また、すでに熱処理が行われた状態で納品されるため、加工後の熱処理も必要なく、短時間で製品を完成できます。

【NAK材と熱処理品の加工工程の違い】

NAK材と熱処理品の加工工程の違いイメージ

安い

NAK材は、短時間で加工できるのが特徴です。そのため加工にかかるコストも抑えることができます。一般に材料は硬度が上がるとコストも上がりますが、NAK材であれば全体のコストが抑えられ、結果として安く製品を作ることができます。

【NAK材の加工条件】

D:工具径

加工 加工工程 工程材質 切削速度
m/min
送り
mm/1刃
切込深さ
mm
旋削加工 荒加工 超硬(コーディング) 40~60 0.7mm/rev 6~8
仕上げ 超硬(コーディング) 40~60 0.7mm/rev 2~3
フライス加工 荒加工 超硬 80~90 ≦0.12 ≦3
超硬(コーディング) 100~120 ≦0.15 ≦4
エンドミル加工 荒加工 超硬 30~35 ≦0.12 0.25D(径方向)
2D(軸方向)
仕上げ 粉末ハイス 20~25 ≦0.10 0.2D(径方向)
2D(軸方向)
ドリル加工 Co系ハイス 12~15 0.05~0.2
タップ加工 高V系ハイス 5

meviy「切削プレート」における、商品規格

自動見積もり可能サイズと納期

最小サイズ  10mm × 10mm × 5mm
最大サイズ 300mm × 300mm × 70mm

自動見積もり可能サイズと納期イメージ

【その他の注意点】

  • 表面処理品は対応しておりません
  • 材質は以下を使用します(確実納期実現のため)
    - NAK55  メーカー:大同特殊鋼(株) 硬度:37~43HRC
    - HPM1   メーカー:日立金属(株)  硬度:37~41HRC

※MSDSをご希望の方は、発注後meviyサポートまでご連絡ください。


「NAK材」いかがだったでしょうか?

高硬度を求めるなら熱処理材しかない、納期やコストがかかるのを諦めていた。
熱処理材ほどの硬度は必要ないが、ちょうどいい硬度の鋼材を知らない。
硬度材を調べる時間がないから、摩耗が激しく交換頻度が高いいつもの素材を採用。

そんな想いや悩みを抱えている方には、とってもおすすめの「NAK材」です。 ぜひ、ご利用ください!


まとめ

NAK材は大同特殊鋼が販売するプリハードン鋼の一つで、高硬度鋼に分類される金属材料です。熱処理済みの材料で硬い一方、切削加工がしやすいのが特徴です。そのため、加工にかかる時間が早く、結果として安く製品を作ることができます。

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