樹脂加工

成形加工とは?代表的な成形加工(鍛造・鋳造・プレス・樹脂成形)を紹介

世の中に出ていく製品を製造するために、私たちはさまざまな材料をさまざまな方法で加工しています。たとえば材料を切ったり削ったりする切削加工や、材料同士をつなぐ接合なども加工方法の一つです。今回は加工法の中でも型を使用した成形加工(鍛造・鋳造・プレス・樹脂成形)について紹介します。

成形加工とは?代表的な成形加工(鍛造・鋳造・プレス・樹脂成形)を紹介

成形加工とは?

成形加工とは金属や砂で作られた「型」を使用して、金属や樹脂などの材料を加工して製品化することです。成形加工といっても、型の使い方はさまざまで、材料を型で押しつぶして変形させたり、熱して溶かした材料を型に流し込んだりするなどの方法があります。成形加工は、後に紹介する鍛造、鋳造、プレス、射出成形のほか、数々の加工法があり、材料や目指す形状などにより選択されています。

成形加工の歴史は古く、紀元前4,000年頃には、メソポタミアで鋳造が行われていたといいます。かつて金属は装飾品などとして鍛造品がわずかに使用される程度でしたが、型を用いた鋳造の発明により金属製の武器や農具が盛んに作られるようになりました。
さらに成形加工が工業へと変化したのは18世紀にイギリスで起こった産業革命がきっかけです。工場の発展にともない、同じ形の製品を大量に作れる成形加工は、鋳造を中心に世の中が機械化していく過程に大きく貢献しました。
その後、19世紀に入るとプラスチックが発明され、成形加工で作られる製品はさらに増加していきます。

成形加工の最大の特徴は材料を型に入れて加工することです。そのため成形加工で作られるのは、まるでたい焼きのように、型を割って製品を作れるものになります。型を割る際に引っかかりとなる、側面の穴やくぼみのある形状は基本的には作れません。また、型の中に材料を充填させるため、中が空洞の形状を作るためにも特別な工夫が必要になります。

成形加工で作られるのは、まるでたい焼きのように、型を割って製品を作れるものになります

成形加工のメリットとデメリット

どのような加工法にもメリットとデメリットはあり、もちろん成形加工にもいい部分と悪い部分が存在します。成形加工のメリットとデメリットには次のようなものがありますが、「型」に起因する項目が多いのが特徴です。

メリット

  • 大量生産に向いている
  • 品質を一定に保ちやすい
  • 複雑な曲面の加工もできる

型が決まっているため、同じ形状のものをたくさん作るのに向いています。加工の条件を同一に保ちやすいため、品質のばらつきも比較的少なくできます。そのため汎用性のある製品や、出荷個数の多い製品などの製造に向いています。

また、換気扇の羽や自動車のボディのように複雑な曲面を持つ製品であっても、型さえ作ってしまえば、比較的かんたんに加工できるのも特徴です。

デメリット

  • 型を作るのに時間と費用がかかる
  • 作った金型を変更するのは難しく、自由度が低い
  • 加工できない形状がある

金型であっても砂型であっても、基本的には製品の形状ごとに専用の型を作らなければいけません。汎用性がなく、個別で作らなければいけないため、型そのものを作るのに、時間と費用がかかります。そのため少量多品種生産には向きません。

また一度金型を完成させてしまうと、あまり大きな変更はできません。量産後に不具合が発生した場合なども、金型への影響を考えながら改善策を模索しなければならないなど、量産開始後の自由度は低くなります。

さらに成形加工では基本的に、型の中に材料を入れて加工し、型を開けて材料を取り出すというサイクルが繰り返されます。そのため型の開け閉めに支障のない形状でなければ加工ができません。

鍛造(たんぞう)

鍛造としてとても有名なのは、日本刀の加工です。日本刀では真っ赤になるまで加熱した材料をハンマーで叩いて細長く伸ばしていきますが、工業的にはハンマーではなく「型」で叩いて、製品の形状を作ります。

鍛造とは、叩いた圧力を利用する成形法

鍛造は鉄鋼やアルミニウム合金など、金属材料の塑性を利用した加工法です。インゴット状や円柱状の金属の塊をハンマーや型で叩いて大きな力を加え、塑性変形させて形を作ります。
鍛造は大きく分けて「熱間鍛造」と「冷間鍛造」の2種類があり、加工する際の材料の温度によって分類されています。熱間鍛造は、材料によっても異なりますが、鉄系材料ならばおよそ1,100℃~1,250℃、アルミ系材料ならば400℃くらいで加工されます。一方冷間鍛造は基本的に常温下で加工されますが、変形にともなう熱で材料の温度が上昇するため、数百度程度の温度になる場合がほとんどです。
鍛造では、叩くことで素材内部の金属組織が緻密になり、結晶の方向がそろう効果があります。日本刀が鍛造で作られるのは、これにより材料の強度が増すからです。そのため鍛造は、強い力がかかる部品の製造に向いています。
一方で、型を用いて強い圧力を加える必要があるため、プレスする機械も大きなものが必要になります。そのため大がかりな設備が必要になるなどのデメリットもあります。

鍛造のおもな用途

  • 鍛造で作られた製品は、次のような部分に多く使われています。
  • 自動車の部品(エンジンのクランクシャフトなど)
  • 航空機の部品(エンジンのタービンなど)
  • 発電所の部品(タービンの主軸など)
  • 工具(包丁やペンチなど)

鋳造(ちゅうぞう)

鋳造も鉄やアルミなどの金属に対して行われる加工です。鋳造は人類の金属加工の歴史の中で、最も古くから利用されていた加工法ともいわれています。

鋳造とは、液体にした金属を型に流し込む成形法

鋳造とは、加熱して液体にした金属を型に流し込み、冷やし固める加工方法です。型には、金属を使用した金型や砂を利用した砂型、石膏を利用した石膏型などが使われます。液体になった金属を流し込むため、鍛造に比べて型の中全体に材料が充填されやすく、より複雑な形状を作ることが可能です。金型を使用する場合には、型にかかる費用も高くなりますが、砂型や石膏型であれば比較的安価に用意できるため、伝統工芸品のような少量生産にも対応しやすいのも特徴の一つです。
一方で金属を溶けるまで加熱しなければならないため、加熱設備をはじめ、材料を取り扱う設備も大がかりになりやすいのがデメリットです。さらに製品の内部に「巣」と呼ばれる空洞が発生する場合もあります。また鋳造に使われる鉄は鋳鉄とよばれ、炭素量が比較的多い鉄です。そのため鋳造で作られた製品は比較的脆く、あまり高い強度を持っていません。
型を利用して(加熱した)金属を加工するという意味で鋳造と鍛造が比較されるケースも多くあります。材質や形状によっても異なるため絶対ではありませんが、鍛造のほうが丈夫な製品が作れる一方、鋳造のほうが安価で複雑な形状が作れると考えるといいでしょう。

鋳造のおもな用途

鋳造は複雑な形状を大量生産するのに向いているため、以下のような製品に広く用いられています。

  • 自動車部品(エンジンやトランスミッションのケース、タイヤホイールなど)
  • 電化製品部品(パソコンやカメラの筐体など)
  • 日用品(鉄瓶、フライパン、マンホールなど)

プレス

プレス(press)とは英語で「押す」を意味するとおり、プレス加工は型で材料を押して加工する方法です。プレス加工は、たとえばダンボールの中に挟まれている波板やアクリルフードのように、紙や樹脂などに対しても行われていますが、ここでは金属に対するプレス加工について解説します。

プレスとは、薄い板に金型に押し付ける成形法

プレス加工はSPCCのような薄い金属板に金型を押しつけて変形させる加工法で、金属の塑性変形を利用した加工の一種です。金型の形状によって、金属板を切断したり、曲げや絞りなどを行ったりします。鍛造との大きな違いは材料の形状にあり、鍛造では円柱などの塊状の材料を使うのに対し、プレス加工では板状の材料を使用します。また、プレスに使われる金属板の材質は、鉄鋼やアルミニウム合金などが多く使用されます。材料が薄いため、鍛造に比べると大きな力は必要なく、基本的に常温で加工されます。
プレス加工よく似ている加工に板金加工があります。どちらも薄い金属を金型で変形させる加工ですが、プレス加工と板金加工には次のような違いがあります。

  • プレス加工
    専用の金型を使用し、プレス機を使って加工します。同じ形状の部品の大量生産に適しており、機械による自動送りや、深絞りのような複雑な形状にも対応可能です。
  • 板金加工
    直線的な汎用金型を使用し、プレスブレーキという機械を使って加工します。金型に汎用性があるため少量多品種製造に対応でき、設計変更にも柔軟に対応できるのが特徴です。一方、部品を手作業で一点ずつ加工するため、大量生産にはあまり向きません。

プレスのおもな用途

基本的に金属板に対して行われる加工であるため、金属板ならではの軽さが求められる製品に用いられるケースが多いです。

  • ロケットや航空機の部品(外装など)
  • 自動車部品(ボディーやドアなど)
  • 家電製品の部品(洗濯機のドラムや蛍光灯の留め具など)
  • 日用品(スプーンや硬貨など)

射出成形

ここまでは主に金属に対して行われる加工でしたが、射出成形は樹脂に対して行われる加工です。射出成形はプラスチックをはじめ、一部のゴムなどにも使われる加工ですが、ここではプラスチックの射出成形について紹介します。

射出成形とは、溶かした樹脂を型に流し込む成形法

射出成形では、材料である樹脂(プラスチック)を熱して溶かし、圧力をかけながら型の中に射出します。さらにそれを冷やして固め、製品の形状を得ます。材料はペレットや粉末の樹脂です。樹脂の種類は非常に多くの種類があり、製品の機能を向上させるため、材料に添加物や着色料を混ぜる場合もあります。
射出成形に使われる型は基本的にステンレスや専用の金属で作られた金型です。樹脂は金属より温度変化の影響を受けやすいため、金型の中には温度調整のための加熱機構や冷却機構などが備えられます。
型の中に溶かした材料を流し込むという意味では鋳造とも似ていますが、使われる材料が異なります。また金型の中に種類の異なる樹脂を流し込む二色成形(ダブルモールド)や、金属パーツなどをあらかじめ金型の中に配置しておき、樹脂と金属パーツを一体化させるインサート成形などといった複雑な加工も可能です。

射出成形のおもな用途

プラスチック製品は軽さと耐久性を兼ね備えており、射出成形出作られた製品は、私たちの生活のあらゆる場所で使われています。

  • 日用品(食器や文房具など)
  • 容器(洗剤や飲料など)
  • 玩具(外装や内部部品など)
  • 家電製品(外装や装飾部品など)

まとめ

成形加工とは「型」を使った加工方法で、鍛造と鋳造のほか、プレス加工が金属加工の手段として多く用いられています。またプラスチックなどの樹脂に対して行われる射出成形も成形加工の仲間です。
型を使って加工するため、同じ形で同じ品質の製品を大量生産するのに向いています。しかし型の準備に金銭や時間など多くのコストがかかるため、少量多品種生産では型にかかる費用の償却が難しくなります。