前連載では「3D CADを使ってものづくりは楽しく!」をテーマに、製造業としてのインフラといってもよい3D CADの可能性についてと、今話題のDXの入り口までの話をしてきました。

新連載では、DXの先にある製造業の未来について話をします。

DXの先にはなにがあるのか

1.もっと進めよう日本のDX

デジタルトランスフォーメーション(DX)という用語を聞かない日はありません。
そんなに普及しているのかな?」ということで、調べてみました。

次の図は、2019年と2020年のDX 推進の自己診断による成熟度を示した調査結果です。

図1 DX 推進指標自己診断結果

図1 DX 推進指標自己診断結果

出典:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 (経済産業省)
DXレポート2中間とりまとめ(令和2年12月28日)図2-1 DX推進指標自己診断結果より

企業のDX推進指標について調べてみました。この指標は、図2のような項目を、図3にある0から5までの6段階の基準で評価しています。「3D CADを使って ものづくり は楽しく!」最終回で話したように、DXはIT経営の施策なので、経営層のコミットメント(commitment)から始まります。

コミットメントとは、単なる口約束ではなくて、私はその行動について、ここでは「DXについての経営者の決意とその行動の宣言」だと考えます。

指標値の平均値3以上の企業が先行企業といわれています。

図2 DX推進指標

図2 DX推進指標

出典:「DX 推進指標」とそのガイダンス 令和元年7月 経済産業省 図2「DX 推進指標」の構成

図3 成熟度レベルの基本的な考え方

図3 成熟度レベルの基本的な考え方

出典:2021年6月14日付け 独立行政法人情報処理推進機構
DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート 表 1-2「成熟度レベルの基本的な考え方」

図1から自己診断を提出した企業の約 95%は未着手から一部着手に留まっていて、ごく一部の企業だけが先行していることと、2019年と2020年を比べても著しい変化が生じていないということがわかります。

さらには、この調査結果には、自己診断にも取り組めていない企業は含まれていないことから、日本企業の実態としては、「まだDXは取りかかっていない」、「取りかかり始めたばかり」ということが理解できます。だからこそ、連日、DXという用語が連呼されているのでしょう。

対象となった企業、詳しいDX推進指標自己診断フォーマットは情報処理推進機構(IPA)にあるので、興味のある人はぜひ確認してみてください。

独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター
DX推進指導 自己診断結果 分析レポート(2020年版)
2021年6月14日公開

2.DXはさらに楽しい

この調査結果は製造業だけではありませんが、この調査結果をどう考えたらよいでしょう。また調査結果から見る推進指標は皆さんの感覚と同じでしょうか。私は、「日本はデジタル化により仕事の考え方・やり方を変えるというチャンスがまだまだある」と感じています。私自身のDX推進指標の感覚と調査結果もほぼ同じです。

では、「どんどん進めていきましょう」となるかといえば、DXを受け入れ難く思っている人たちは多いのではありませんか?その理由はなんでしょうか?

答えは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)を体験していないからです。ユーザーエクスペリエンスは、簡単にいえば、製品との出会いによるユーザーの体験です。その製品を使ったことで、「便利だな」「使いやすいな」「感動した」と感じることです。私は、今でも3D CADやCAEの新機能や新製品を体験するたびに、感動します。ミスミのmeviyを使った時も同じです。3D CADデータをmeviyの画面にドラッグ&ドロップ、またはファイル選択ダイアログから3Dデータを選択してアップロードするだけで、簡単に見積もりと型番発行までできた時には、感動しました。「これからも使いたい」と感じた私にとって、ユーザーエクスペリエンスは高かったということになります。

補足ですが、似たような用語にカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)がありますが、

前者が製品の使い勝手やその体験のことをいうのに対して、後者はその製品を扱う企業との経験や関連性も含む広い範囲になります。

これまでの3D CADでは、エコシステムecosystem)とよばれるものが現実的で最新のトレンドだと考えます。エコシステムを言い換えれば3Dソリューションの構築でしょうか。3D CADと連携し、シミュレーション(CAE)を使用することで、シミュレーションの設計検証を行いながら設計品質をより高めていきます。これらによって設計された3DデータはPDM(Product Data Management System)によって管理されます。これらのそれぞれのソリューションは年々機能UPされて高度なものになっていきながらも、設計者のだれもが使うことができるものとして進化してきました。

さらにデジタルツインDigital Twin)が登場しました。IoTInternet of Things:モノのインターネット)ではセンサによって得られるデータがクラウドに集められ、処理が行われ、その情報がユーザーに提供されますが、これをデジタル空間と実体空間で共有できるようになりました。

エコシステムやデジタルツインは、すでにもう始まっている製造業のDXです。これらは、私たちの感動を与えそうなのですが、だれもがそれに感動できているというわけではないようです。DXを推進するために、企業・経営者と推進者や社員との間で共感ができれば、「もっともっと楽しいと感じる経験」をだれもがみな経験することになるでしょう。

3.  DXがもたらす企業の未来とは

この連載では、DXに絡んでこれから次のようなことを考えていきます。

・3D CAD
AI(artificial intelligence:人工頭脳)によって自動設計はできるのでしょうか。また、これによって設計の考え方も変化するのでしょうか。
・CAE
トポロジー解析や他の手法によって構造最適化の手法が用いられるようになりました。この手法による可能性は広がっています。また様々な解析手法が登場しています。
・3D プリンタ
3Dプリンタはモノの造形の対象も広がり、また、生産方式としての活用もすでに先進企業によって実現しています。
・VR・AR・XR
画像を見る技術はヘッドセットなどを使用した没入感の高いものが普及し、個人用途も拡大しています。製造業でもその利用価値を見出してきています。
・ものづくりの現場
デジタルツインでも登場するIoTの用途は身近なところでもすでに始まっています。
ものづくりの現場では何が始まるのでしょうか。
・プラットフォーム
始まっているプラットフォーム。クラウドシステムにより新しいコミュニケーション方法やデータ管理、共有ができるようになりました。
・サプライチェーン
DXが進んでいくことで、サプライチェーンの環境もまた変化することでしょう。
・教育機関
現在、また将来教育機関では何が望まれていくのでしょうか。

アフターコロナ、ニューノーマルといわれる時代が始まっています。
「働き方」「仕事の考え方」はこれから確実に変革を迎えます。
この変革はアナログ思考によって生まれてきます。

今すでに行われているDXから、今始まっている、少し先に普及するだろうDXについて考えることで、その先には、どのような考え方やその環境の変化があるのかを話していきましょう。

お楽しみに。