ザ・メカニカル・ドローイング 我流と本流 - 製図のお作法 -プロフェッショナル連載記事

温故知新!図面の本質と基本
投影図の⽬的と種類、選択肢から図面の本質を理解する

まだわかりませんか。
大切な投影図がすり替わったのに

読者の皆さんは、図面を描く立場の人、図面を見て何らかの作業(手配や加工、計測など)の立場の人などさまざまだと思います。図面を読み解くには、描く立場の設計者の気持ちになることで、より図面に正しく向き合えるのではないかと考えます。

でも、ちょっとここで問題が発生します・・・設計者あるいは検図する上司の中には、図面の本質的な意義を理解せず、「寸法漏れさえなければいいだろう」と安易に考えている人が少なからず存在します。図面の本質を知るうえで、今回は投影図の種類や考え方について復習しましょう。

1)投影図の目的を再確認

図面を読む立場の第三者にとって理解しやすい投影図を作成するには、限られた紙面の中で、投影形状や寸法線、寸法の公差、表面粗さ記号、各種加工にかかわる記号、注意記事などを如何に見やすく配置できるかというセンスも必要となってきます。図面を描く際の最初のステップが下流工程の担当者から見て読みやすく理解しやすい投影図の選択です。

投影図を配置する際に、図面の基本である投影法のうち、日本国内で一般的に採用されている第三角法で展開することを失念してはいけません。それに加えて外形図だけではなく断面図や部分拡大図、補助的な投影図を積極的に図面に盛り込むことで、読み手の形状理解度が向上します。

2)投影図に使われる用語の定義

普段、なんとなく使っている用語も間違って認識している可能性もあります。
間違った認識で用語を使わないように、JISZ8114:1999 にある投影図に関係する用語の定義を改めて確認してみましょう(表3-1)。

表3-1 投影図に関係する用語の定義

 

用語 定義
投影法 三次元の対象物を二次元画像に変換するために用いる規則
正投影法 正座標面に一致又は平行な一つ以上の投影平面上に、座標面に対して平行なその主要平面に直角に置いた対象物の正投影

※「正座標面」とは、図3-1に示すような直交座標系のことを指します。

第三角法 一つの対象物の主投影図のまわりに、その対象物のその他の五つの投影図のいくつか又はすべてを配置して描く正投影

主投影図を基準にして、その他の投影図は、次のように配置する

− 上側からの投影図は、上側に置く

− 下側からの投影図は、下側に置く

− 左側からの投影図は、左側に置く

− 右側からの投影図は、右側に置く

− 裏側からの投影図は、右側又は左側に置く

※「主投影図」とは、その部品の最も特徴がある方向から見た図のことをいい、設計や加工の現場では「正面図」と呼ぶことが多いです。

第一角法 一つの対象物の主投影図のまわりに、その対象物のその他の五つの投影図のいくつか又はすべてを配置して描く正投影

主投影図を基準にして、その他の投影図は、次のように配置する

− 上側からの投影図は、下側に置く

− 下側からの投影図は、上側に置く

− 左側からの投影図は、右側に置く

− 右側からの投影図は、左側に置く

− 裏側からの投影図は、左側又は右側に置く

矢示法 投影図及び断面図が図面の中で自由に置ける表示方法

個々の投影図及び断面図は、主投影図に見る方向を示した矢印の付近に識別の大文字を繰り返して指示する

主投影図 対象物の形・機能の特徴を最も明瞭に表すように選んだ投影図

(一般的のこの図を正面図とする)

補助投影図 対象物の正座標系と異なる座標系に描いた投影図
部分投影図 投影図の一部を表した図
局部投影図 穴・溝など、対象物の一局部を表した投影図
部分拡大図 図の特定部分だけを拡大して、その図に描き添えた図
断面図 対象物を仮に切断し、その手前側を取り除いて描いた図。切り口に加えて切断面の向こう側の外形を示す
全断面図 対象物を一平面の切断面で切断して得られる断面図を省くことなく描いた図
片側断面図 対象中心線を境にして、外形図の半分と全断面図の半分とを組み合わせて描いた図
部分断面図 図形の大部分を外形図とし、必要とする要所の一部分だけを断面図として表した図
回転図示断面図 描いた図の投影面に垂直な切断面で描いた切り口を90゜回転して、その投影図に描いた図
外形線 対象物の見える部分の形を表す線(太い実線を使用)
かくれ線 対象物の見えない部分の形を表す線(太い、または細い破線を使用)
中心線 中心を示す線(円筒形状の中心に用い、細い一点鎖線を使用)
対称中心線 対称図形の対称軸を表す線(円筒形状以外に用い、細い一点鎖線を使用)
ピッチ線 繰り返し図形のピッチをとる線(細い一点鎖線を使用)
破断線 対象物の一部分を仮に取り除いた場合の境界を表す線(細い実線のスプラインまたは、ジグザグ線を使用)
切断線 断面図を描く場合、その切断位置を対応する図に表す線(細い一点鎖線に加えて両端や曲がり角に短い太い実線を併用)
想像線 a) 隣接部分又は工具・ジグなどの位置を参考に表す線

b) 可動部分を、移動中の特定の位置又は移動の限界の位置で表す線

(細い二点鎖線を使用)

ハッチング 切り口などを明示する目的で、その面上に施す平行線の群(細い実線を使用)
対称図示記号 対称図形の片側だけを描いた場合、その対称中心線の両端に記入する2本の平行な線
切断面 切断図を描くときに、対象物を仮に切断する面
切り口 一つ以上の切断面上における対象の輪郭だけを示す図形

※( )内は、筆者による補足

 

3)平面の投影法の確認

3次元である立体形状を2次元平面上に表す場合、投影図として表します。企業の教育担当者から「最初に第三角法から教えてください!第三角法の存在を知らずに図面を描いている若手設計者がいて困っているんです(>_<)」とよく言われます。

投影図の相対的な位置を表すために第一角法と第三角法の2つの投影法を同等に使うことができますが、JISでは統一を図るために投影法は第三角法を使って説明されています。したがって、一般的に日本企業で作図するほとんどの図面は第三角法に従っているといっても過言ではありません。

例えば、次に示す投影対象物で矢の方向から見た図を「正面」とした場合の配列の規則を考えてみましょう(図3-1)。

図3-1 投影法の違い

図3-1 投影法の違い

図のように投影図は象限を利用して、それぞれの投影図の上下左右がずれないように配置することが基本要件となります。象限(しょうげん)とは、平面を直交する二本の直線で区切ってできた四つの領域のことで、右上を第一象限と呼び、反時計回りに第二象限、第三象限、第四象限といいます。

  • 第三角法は、正面図に対して右から見える図は右に、上から見える図は上に配置します。
  • 第一角法は、正面図に対して右から見える図は左に、上から見える図は下に配置します。

第三角法と第一角法の違いをまとめました(表3-2)。

投影図の名称 第三角法 第一角法
正面図 特徴のある方向から見た図を正面図とする
右側面図 正面図の右側に配置 正面図の左側に配置
左側面図 正面図の左側に配置 正面図の右側に配置
平面図 正面図の上側に配置 正面図の下側に配置
下面図 正面図の下側に配置 正面図の上側に配置
背面図 都合によって側面図の左右どちらかに配置

このように、第三角法と第一角法では正面図が同じでも、周辺に配置する投影図の上下左右が入れ替わるのです。

CADを使って投影図を配置する場合、安易にコピーペーストを使ってレイアウトの最適化を図ろうとすると、自身でも気が付かないうちに第三角法と第一角法が混在した図面が出来上がるので注意しなければいけません!

さらに投影図を描く際、2種類以上の線が同じ場所で重なる場合があります。この場合、以下に示す線の優先順の高い線が最前面に見えるように描きます。

優先1:外形線
優先2:かくれ線
優先3:切断線
優先4:中心線
優先5:重心線
優先6:寸法補助線

例えば、図3-2の左側に示すようなブロックがあった場合、Aの方向から見た投影図は右側のようになります。このとき、投影図の斜線の後方にある同様の斜面の線がかくれ線として存在するのですが、優先順に従い、かくれ線である破線は図示しません。

図3-2 線の優先順位

図3-2 線の優先順位

4)投影面の選択の考え方

第三角法を用いて投影図を配置する場合、正面図の周辺にむやみに投影図を並べればよいというわけではありません。正面図に加えて、その形状を表すのに必要十分な投影図を選択します。

例えば、次に示す投影対象物があった場合、どのように投影図を展開すればよいでしょう?(図3-3)

図3-3 サンプル形状

図3-3 サンプル形状

Aの方向から見た図を正面図と決めたとします。そうすると、正面図で表されない形状は、正面から見て右側にある斜面と正面図に対する奥行き長さです。これらを満足させるために右側面図を追加すれば必要十分な投影図になります(図3-4)。

図3-4 右側面図を追加した必要十分な投影図

図3-4 右側面図を追加した必要十分な投影図

ここで、正面図に対して左側面図を使った場合はどうでしょうか?(図3-5)

図3-5 左側面図を追加した必要十分な投影図

図3-5 左側面図を追加した必要十分な投影図

こちらも必要十分な投影図を満足しており、JISの定める製図の作法として誤りではありません。しかし、正面図に対して左側から見ることによって、右側に見える形状を表す線がかくれ線(破線)となり、読み手に対して見づらい図面となっています。かくれ線は形状を理解することを難しくする傾向にありますので、できるだけかくれ線を使わずに済む投影面を選択すべきなのです。

次に、溝つきの軸の投影図を描く場合を考えてみましょう(図3-6)。円筒形状の場合、正面図と平面図(あるいは下面図)から見た図は全く同じ形状となるため平面図は不必要な形状の繰り返しとなるため省略します。

図3-6 溝つきの軸の投影図

左右の側面図は全く同じ形状になりますが、丸い形を表現するためにどちらか一方は必要な投影図と思われがちです。しかし寸法補助記号「φ:直径」を寸法数値に併記することで円筒形状であることを表現できるため左右の側面図ともに省略します。したがって、段差や溝の有無にかかわらず円筒形状となる部品は、正面図だけで必要十分な投影図になります。

5)投影図の向き

必要十分な投影図を選択すると同時に、投影図の向きにも注意しなければいけません!なぜならば、投影図の向きが加工の向きと一致していない場合、加工者は加工しやすいように図面を上下さかさまにして加工する場合があるのですが、その際に、例えば「6」と「9」、「2」と「5」を読み間違えて誤作する可能性が高いからです。

円筒形状の部品を切削加工する場合は、旋盤(せんばん)を使用して加工することが一般的です。旋盤は円筒素材を水平方向にセットして加工するため、円筒部品の投影図は基本中心線を水平に向けると決まっています。加工者から見て左側にあるチャックで材料を固定し、右側からバイト(刃物)を当てる構造なので、削る量が多い方を右に向けるのが投影図のマナーになります(図3-7)。

図3-7 円筒形状の投影図の向き

板物(ブロック)形状の部品を切削加工する場合は、フライス盤を使用して加工することが一般的です。よく使用される立形フライス盤は、固定した素材の上側に刃物がセットされるので、削る量が多い方を上に向けます。ただし、長尺部品の場合は、横長に向ける場合もあります(図3-8)。

図3-8 矩形形状の投影図の向き a)小さい部品の投影図の向き

図3-8 矩形形状の投影図の向き b) 長尺部品の投影図の向き

図3-8 矩形形状の投影図の向き

6)まとめ

今回は、投影法の種類と特徴、投影図選択の基本的な考え方を知りました。ここで投影図と図面の違いについて簡潔にまとめておきます。

投影図とは、図面に記載されている情報のうち部品形状を表現するための図形のみをいいます。奥行や隠れた部分を表現するために複数の方向から見た図を組み合わせたり、かくれ線などを使ったりして部品形状を把握できるようにした一連の図形群のことです。

図面とは、表題欄をはじめ投影図や寸法情報、表面粗さや各種加工の記号、注意事項などすべての情報を2次元上に表現したものの総称です。

投影図には今回解説しなかった断面図や局部投影図など大変重要なテクニックがありますが、これらについては2クール目以降で実用図面を使って詳しく解説したいと思います。

次回は、⼨法の表し⽅の基本と2010年・2019年に新しく追加された寸法補助記号や寸法配列の種類について解説します。