デジタルトランスフォーメーションの先をよむ - 今、そこにある未来 -プロフェッショナル連載記事

諏訪圏工業メッセで感じた地方創生-DXと仕事のやり方の変化

先日、私は地元諏訪市で開催された工業展示会を見学してきました。

これまでも、実現しているDXとその先についてシリーズで紹介してきました。第6回ではノーコード開発と地方創生について取り上げましたが、今回は展示会を見ながら改めて感じた「地方創生とDX」についてお話します。

参考:第6回「ノーコード開発によるDXで地方創生を目指す」

地方創生を支える人のつながり

1.3年ぶりのリアル開催!諏訪圏工業メッセ

「諏訪圏工業メッセ」という工業展示会は2002年より開催されています。
新型コロナウィルス流行の影響により、2020年よりオンラインのみの開催になっていましたが、ようやく、3年ぶりにリアル会場開催が実施されました。

  • 主催:諏訪圏工業メッセ2022実行委員会、長野日報社(共催)
  • 会場:諏訪湖イベントホール(旧東洋バルブ(株)諏訪工場跡地内)
  • 開催期間: 10月13日~15日(リアル会場開催)

この展示会には、長野県のものづくり先進地域といわれている諏訪エリアを中心に、県内の他地域、県外から超精密加工・微細加工・電気・光学製品・精密機械・ロボットなどに関わる企業や、学校・教育機関・各種団体が出展しています。

諏訪地域はかつて「東洋のスイス」と呼ばれ、腕時計で世界を席巻しました。時計の本場スイスにもその技術で恐れられていたそうです。この起源は製糸産業が行われていたことにあります。

群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」は、世界遺産に登録され有名ですが、この地域も製糸産業が盛んで、多くの外貨を稼いでいました。

しかし、1929(昭和4)年の世界恐慌や、その後の戦争、化学繊維の登場によりその状況は変化し、その製糸産業は衰退してしまいましたが、その後、時計企業の疎開、また時計の下請け企業がこの地域に名を連ねるようになったことが、「東洋のスイス」と呼ばれた理由になります。

長野県では、他の地域でもカメラやオルゴール、また精密機械産業が発展しました。現在でも様々な企業が名を連ねています。

さて、「魅力あるSUWAブランドの創造」というテーマから2002年に始まった展示会も、2022年から「未来志向企業の創造~新たなメッセプラットホーム~」という新たなテーマのもとに、諏訪地域からものづくりの情報発信が行われました。

  • 出展状況・・・390社・団体(2019年は425社)
  • 来場者数(人)
開催年 1日目 2日目 3日目 合計 メモ
2019年 8,060 9,209 10,572 27,841 確定値
2022年 4,991 5,659 3,903 14,553 速報値
(10/17)

2022年10月17日 諏訪圏工業メッセ実行委員会事務局発表内容

いまだ新型コロナウィルス流行の影響がある中での開催のため、展示規模、入場者数ともに、これまでと比較すれば減少傾向にはあるものの、この展示会会場を見た印象は「活気あふれる展示会」だったといえます。

出展者も来場者もこの機会を待っていたことに間違いありません。

2.展示会で見たDX

この展示会では、DXデジタルトランスフォーメーション)、IoTの展示が行われていたことが、印象的でした。

ミスミmeviy(メビー)展示ブースの様子

ミスミmeviy(メビー)展示ブース

まず、はじめにミスミ「meviy(メビー)」です。
meviyの仕組みは、まさに製造業におけるDXの仕組みです。私もブースを訪ねましたが、多くの参加者から注目を集めていました。

設計業務の効率化や、様々な拠点での生産活動を行う際に必要な設計部品情報に対し、AIが3D CADデータの形状認識を行い、型番(型式)・価格・納期の見積もりをその場で表示します。ブラウザ上でサイズ公差と幾何公差の設定も可能。その仕組みに魅力を感じます。

2D図面作成は製作意図を伝えるための翻訳のようなものと言えますが、汎用的な部品においてその工程を省くことは設計の効率化につながります。私は2D図面設計の必要性を唱えていますが、meviyによって設計者は標準的・汎用的な部品の調達を時間短縮することができ、それ以外の設計に注力できると考えています。

IoT関係では、製造現場で発生するデータを収集し、時系列でグラフ化するなど「データの見える化」を行うことで、製造ラインの稼働状況や遠隔でのモニタリングを行うことや、トレーサビリティのためにデータの蓄積する仕組みの紹介がありました。

これはミドルウェアによる仕組みにより製造ラインの稼働/生産状況をセンサやPLC(シーケンサ)からデータを収集し、異常発生時にアラートを出すような運用ができるようになります。このミドルウェアはIoTのコア技術であるといえます。装置メーカーとしても、その付加価値としてこのようなサービスを提供することが求められることでしょう。

聞くところでは、サーバー機能の種類によってはとても難しい技術があるとのことです。このような開発を手掛ける企業が身近にあることには少々驚きました。

ミドルウェア([英]Middleware)
コンピュータの基本的な制御を行うオペレーティングシステム(OS)と、各業務処理を行うアプリケーションソフトウェアの中間に入るソフトウェアのことをいいます。サーバやデータベースとのやり取りはミドルウェアが行います。

VRシステム開発企業の話をしたことがありますが、あの企業もまた私の地元近郊の企業です。技術力を持った開発企業が、まだまだ私の身近にあることを実感します。

参考:第7回「地方の教育現場から製造業のVRを考える」

3D CAD関連の出展もあり、そのブースはにぎわっていました。そこに来場者の関心があることは地方でも確かのようです。

3D CADの展示はこれまでも行われてきていましたが、iCAD SXの販売企業では、従来品に対しレスポンスやメモリアクセスの処理が改善されたことで、超大規模データの処理速度を向上した最新バージョン「iCAD SX V8」の展示がありました。

iCAD SXデモンストレーション画面

iCAD SXデモンストレーション画面

ソリッドワークス販売企業では、クラウドコンピューティングプラットフォームの「3DEXPERIENCE PLATFORM」の紹介、クラウドベースの「3DEXPERIENCE SOLIDWORKS」の紹介がありました。

地方にもクラウドがやってきましたね。

3DExperienceWorks関連展示

3DExperienceWorks関連展示

それぞれ強みを持つ3D CADについて、さらには、meviyによる3D CADデータ活用の連携性や有効性について、来場者がどのようなイメージを持ったのか、私自身もとても興味を持ちます。

3.人とのつながりとソリューション

地方創生を支える人のつながり

この展示会が新型コロナウィルス流行を受けても続く理由は何でしょうか。
展示会の目的は、「ビジネス機会の創出」です。

この諏訪地域が「ものづくりが根差した地域」であることは重要な要素ですが、産学官などの企業や団体といったニーズシーズを持つ人たちが、場としてのプラットフォームに集まることによって共創が生まれる環境ができているからなのではと私は考えます。

ニーズ:顧客が求める潜在的な欲求
シーズ:企業が顧客に提供できる価値や強み
せっかくなので、この環境やつながりを業務改革に結びつけることはできないのでしょうか。

DXソリューションによる効率化

このような連携の仕組みが業務として活かされ、ITツールを用いたDXにつながっていくと考えるのは、飛躍しすぎではないように思います。

「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への変化について、多くのメディアで聞く機会は著しく増えたと実感しています。

クラウドコンピューティングプラットフォームでは、リアルな対面ではなくても、場所や時間を問わず、それぞれのプロフェッショナルが情報や知識がプラットフォームで共有・集約化していきながら仕事を進めるという「仕事のやり方の変化」が実現します。

設計環境におけるクラウドコンピューティングプラットフォームについては、次の機会にお話しします。

諏訪圏工業メッセ2022では、人のつながりを考え、ソリューションによる効率化がすでに地方でも進んでいくこと、もっと進めていかなければならないことをあらためて考える機会になりました。