前回のブログでは、「ちょっと待って。この問題って3DCADで解消するのかな・・・」で、締めくくりました。
私が初めて3DCADに飛びついた理由は、その見栄えでした。
表示されているモデルのカッコよさです。そう思えるのも、直観的に見て理解できる情報量の多さがあるからでしょう。
当時、これからの設計ツールとしての可能性も感じましたが、現在、実感しているものと比べれば、かなり曖昧なものでした。
【1】3DCAD導入の曖昧な動機
「リアルな形状を見ながらの設計が出来る」
設計者の頭の中には、立体のイメージがありますが、これを2次元図面化するには、三面図化しなければなりませんでした。
三面図は、任意の一面を書いたからといって、他の二面が自動作成されるものではありません。要求仕様を満足する設計を行う設計力はもちろんですが、
三面図の配置バランスや、陰線表示、中心線表示など、図面表現のための作図力も求められます。これを厄介とは言えませんね。私自身、作図には気を使っていました。
「美しい図面を書かないといけない」という思いからでした。
美しいという概念も人により異なる曖昧なものです。
当時の私は、3DCADに対して、元々、設計者の頭の中の中にある立体のイメージが、そのイメージのまま設計できるということに、最大の魅力を感じたのでしょう。
しかし、当時の設計力が半人前にも至らない私とベテランの設計者の間には、3DCADに対する考えには異なるものがあったかもしれません。もしかしたら、ベテラン設計者は2DCADを使うことに何も困っていなかったのかもしれません。
最近見たある雑誌にもこんな主旨の事が書かれていました。
「3DCADを使いこなせる若手の設計者と使いこなせないベテラン設計者」
さて、皆さんどう考えますか?
【2】3DCAD運用状況の現実
皆さんの設計環境で、3DCADの運用状況はどうでしょうか?
「3DCADはバリバリ使いこなせて成果もバッチリ出てる!!」
という“すばらしい”会社ばかりだといいのですが。
「3DCADを購入したけど、誰も使っていない」
「3DCADを使っているのは新人だけ、熟練者は3DCADを使おうとしない」
という会社もあるかもしれないし、
もしかしたら、
「3DCADを導入したけど効果が出ていない」
「3DCADに変えた意味があったのかな・・・」
なんていう会社もあるかもしれません。
これから導入しようとしている会社では、
「2DCADで十分だよ」
「3DCADって何か意味があるの?単なるお絵かきツールじゃないの?」
「3DCADって高価なんでしょ?だからうちには無理だよ」
という3DCADに批判的な会社もあるかも。
日本全国で開催される3DCADメーカーさん主催のカンファレンスや、設計製造を対象とする展示会が、いつも満員だということからも、
皆さん、何か困ってる
皆さん、何か探してる
ということが、想像できますね。
何も困っていなかったりしたら、他社のユーザー事例を聞きにくることもないでしょう。何か探していなければ展示会に行くこともないでしょう。
3DCAD市場は拡大しているとさえ、感じることができます。
事例講演でも、「びっくり!!」という講演はまず聞くことはありません。
「ん?昔もこんなこと聞いたことあるよ」ということがほとんどです。
多くの3DCADメーカーさんのカンファレンスの場合、来場ターゲットが
・3DCADをこれから導入したい新規ユーザーさん
・導入間もない既存ユーザーさん
だということを、聞いたことがあります。
「3DCADってなんなのか知りたい」
「他社の3DCAD運用ってどうなんだろう」
「困っている運用課題のヒントを他社の事例からがほしい」
これからどんどん製品を購入していってほしい3DCADメーカーさんとすれば、このような情報提供と来場してほしいユーザーさんと実績のあるユーザーさんとの交流ができるこれ以上の場所はないのかもしれません。
さて、meviyのユーザーの皆さんは、先進的な取り組みをされている方々ばかりだと思いますが、3DCAD運用状況はいかがですか?
【3】なぜなぜ分析で問題の本質を探る
さっきお話しした運用状況に、全て「なぜ?」と付け加えて、整理してみました。
導入した会社
・なぜ、3DCADを誰も使っていないの?
・なぜ、熟練者は3DCADを使おうとしないの?
・なぜ、3DCAD導入の効果が出ていないの?
導入していない会社
・なぜ、2DCADで十分だと思うの?
・なぜ、3DCADって何か意味がないと思うの?
・なぜ、3DCADは高価だと感じるの?うちには無理だと思うの?
“なぜなぜ分析”ってありますね。
問題を「なぜ?」で5回以上掘り下げていくと、問題の本質が見えるというものです。
これは根本原因解析 RCA:Root Cause Analysis の一種です。
「なぜ導入効果が出ていないのか」の“なぜなぜ分析”の一例
ほんの一例ですが、考えてみました。
変わらない市場の中で、品質的に確立されたものを、同じ場所で、同じコストで、同じ時間で製造している会社には問題はありません。
でも、こんな製造業絶頂期と言われる今でも、厳しい競争の中に会社は置かれています。
設計者はそんな市場要求の中で開発設計業務をしなければなりません。変化を求められていますよね。
この例からは、3DCAD導入を考えていた時に、「どう変わるのか」を考えていなかったことに、導入効果を得ることができない原因があったのだと言えますね。
もしかしたら、3DCAD導入を検討した時に、
「設計ツールを2DCADから3DCADに入れ替えるだけで設計が楽になる、良くなる」という曖昧な期待だったのでは・・・。
3DCADは導入するだけで何でも叶えてくれる夢のツールではありません。
でも、「何をしたいのか」を決めて目指せば、それを実現できるツールだと思いますよ。
【4】現実を知ることから始める
私が考える3DCAD導入プランは、まず現実を知ることから始まります。
既に導入して上手く行っていない会社なら、「現実を知る」ことに立ち戻りませんか。まだまだ遅くはありませんよ。
これから導入する会社なら、「現実を知る」ことから始めましょう。
現実を知る目的は、問題を見つけることにあります。
問題を見つけることで、課題を抽出することができます。
問題と課題って違うことは知っていますよね?
問題と課題
問題
問題とは理想と現実のギャップのことを言います
理想とはありたいと思う姿、あるべき姿のことを言います。
現実は今ある姿です。
課題
課題とは理想と現実のギャップ、つまり問題を解決するための取り組みのことを言います。
問題と課題は混同されていることが多いと思います。私もそうでしたが、もう一度認識してみることをおすすめします。
現実を知るにはどうしたらいいでしょう。
人任せにしないで調べるしかないですね。そうヒアリングから始まります。
私はこの作業、決して無駄な作業だとは思いません。自部門のことであれば、自身の目線では、大抵のことはわかります。
また数値として表れていることは明確ですね。
例えば、設計不具合により発生した設計修正工数や対策部品費用などは、これを集計している会社であればわかりますが、ベテラン設計者や新人設計者が現実や理想をどう考えているのかとなると、それはわかりませんね。
そんなことからこのヒアリングは始まり、3DCAD運用に向けて動き始めます。
この続きは次回に。お楽しみに。