前回はクラウドについて話をしました。
このクラウドの代表的なものとして、Amazon が提供するクラウドコンピューティングサービスAmazon AWS(正式にはAmazon Web Service)があります。
クラウドコンピューティングでは、インターネットを介して、サーバー・ストレージ・データベース・ソフトウェアといったコンピューターを使った様々なサービスを利用することができます。ユーザーはインターネットとPCさえあれば、利用量に応じて費用を支払うことでサーバーや大容量のストレージ、高速データベースが利用できるわけです。
これに対して、「主記憶装置」はメモリのことをいいます。CPUが直接読み書きできる記憶装置ですが、電源を切ってしまうと、その記憶は残っていません。
例えば、ひとつの3Dモデルパーツデータは「パーツ名」「ファイル名」「型式」「メーカー」「材料」「表面処理」「製図者」といったデータを持ちますが、大量のパーツデータを保存して、単一の選択肢(例えばパーツ名)や、これらの組み合わせからパーツを選択することが、データベース管理システム(DBMS)によって行われます。
クラウドに対して、オンプレミス(on-premises)があります。
クラウドが自社外にあって、サーバーやソフトウェアなどを自社で保有しなくてよいものであるのに対し、オンプレミスは、自社内に設置して、ユーザー自身が管理運用する方式のことを言います。
クラウドが登場するまでは、ほとんどの会社がこの運用方法を採用していました。今でもこれを使用している会社が多いのではないでしょうか。
運用やカスタマイズの自由度、運用コストなど、クラウドとオンプレミスのメリットとデメリットについては、またどこかで話をしようかと思います。
さて、今回のメインテーマになるプラットフォームですが、CADユーザーのひとりの私から見た時、前回話した3DCADのFusion360やOnshapeといったクラウド製品戦略と、3DExperience Platformに代表されるプラットフォーム戦略にはどのような違いがあるのか、まるで雲(クラウド)の中にいるように、「モヤっ」とします。
「クラウドプラットフォーム」という言葉もあったりします。果たしてプラットフォームとは何でしょう。
CADベンダー・ITベンダーからは次のようにプラットフォーム戦略が発表されています。私の解釈でまとめてみました。
・ ダッソーシステムズ:3DExperience(エクスペリエンス)Platform
3DCAD、Simulation、製造工程シミュレーション(デジタルマニュファクチャリング)、データの一元管理化システムにより構成されている
・ PTC:ThingWorx(シング ワークス)IoTプラットフォーム
IIoT(Industrial Internet of Things 産業IoT)向けに、3DCADデータ、センサー、クラウドをつなぎサービスを提供する
・ シーメンス:Modeling Technology Platform
構想設計・詳細設計、製造に至るまでのすべての工程をサポートして、最も生産性の高いプロセスを実現するもの
・ オートデスク:プロダクト イノベーション プラットフォーム
IoT を含むテクノロジーによって設計・製造プロセス全体をつなぐ仕組み
・ 富士通:COLMINA(コルミナ)Platform(COLlaborative MONOZUKURI INnovation Agentの略)
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤となる。設計・製造プロセスや製造現場からデータ収集、企業間生産管理情報などをつなぐことができる仕組み
プラットフォームでは、そのベンダーが持っている製品間に単一のインターフェースを持ちます。その結果、データの授受が双方向(インタラクティブ)に可能になります。このプラットフォームによって製造業の場合、マーケティングや営業、エンジニアリング、保守に至るまで、企業のすべての部門がそのデータを活用することができます。
簡単に言えば、すべてが繋がる「仕組み」と「場所」がプラットフォームと呼ばれるのでしょう。
私が実際に見たことがある3DExperience PlatformとCOLMINAは、製造業の広範囲の工程をプラットフォーム化したもので、あまりにも壮大すぎるとも感じるものでしたが、どのようにスモールスタートをとるのか、企業内でアジャイル開発を行うことができれば、効果を得ることも可能だと感じました。
また、COLMINAは、富士通が製造業の中で培った実績のある技術だとすれば、日本企業の文化の中でもその効果は期待できるものでしょう。AIやVR技術にも注目できます。
私も最近まで気がつかなかったのですが、iCAD-SX(iCAD株式会社)は、COLMINA 設計製造支援 iCAD SXとして紹介されています。ちょっとびっくりです。
ThingWorxはIoTを重要視していて、PTC社はCADベンダーからIoT企業となったのではとも思えるものです。
各ベンダーで共通的なデジタルツインですが、また、あらためて話をしましょう。
さて、ここで疑問が……これって最近はあまり聞かれなくなった(私が勝手にそう思っているだけかもしれません)、PLM(Product Lifecycle Management/プロダクト ライフサイクル マネジメント)と何が違うのでしょう。調べてみると、「PLMプラットフォーム」なんていう言葉も見つかる始末です。
PLMは、自社製品のデータを企画段階から廃棄、リサイクルに至るまで共有管理するシステムのことを言います。
かつてPLMを構築するには、その規模もそのための投資金額も大きなものになり、開発やカスタマイズが必要になる基幹システムに、様々な企業の様々な製品がぶら下がるような形でシステムが構築されていたという印象を私は持っています。
そのことから考えると、モヤっとしていたプラットフォーム戦略とは、「単一のベンダーによってPLMの仕組みが作られた」と考えれば良いのではないでしょうか。
ユーザーのメリットには、
・ ユーザーは一貫的なソリューションの提供を受けることが可能
・ インターフェースの心配はいらない
・ サブスクリプションでサービスを受けることも可能になった
がありそうです。ベンダー側とすれば、「取りこぼしがなくなる」ということになります。
こんなことから考えると、プラットフォームはオンプレミスでもクラウドでもどちらでもいいわけです。プラットフォームは「一気通貫的にデータを授受する空間と仕組み」を示して、オンプレミスとクラウドは「物理的な場所」と解釈すればよいのでしょう。
このように、製造業向けソリューションのプラットフォーム化の傾向がある中で、これまで話をしてきている「部品表」もインタラクティブに用いられることが求められるでしょう。
「統合化部品表」の話を初めて聞いたのは、製造業のプラットフォームという語句を聞くことがなかった2004年です。ものづくりの情報を一元管理化するための統合化部品表は、どう利用されていくべきなのでしょうか。
(次回に続く)