今年もダッソー・システムズ ソリッドワークス主催のSOLIDWORKS WORLD2019(開催期間2月11日~13日の3日間)(以下SWW2019)に参加しました。そのレポートをお届けします。
今回の開催地はテキサス州ダラスです。
2月9日(土)成田空港は雪になり、出発は1時間ほど遅れましたが、11時間30分のフライトの後、ダラスフォートワース空港に到着しました。
寒波の影響か、とても寒いアメリカでしたが、その寒さもSWW2019会場の熱気によって熱くさえ感じるものと変わっていきます。
ハッシュタグ #SWW19
開催前日、3DEXPERIENCE®Platoform Exploreという新たな認定試験を受けました。事前にe-learningにより勉強していきました。この勉強がSWW2019では、役に立つこととなります。今回のSWW2019のテーマは、「Where Possibility Takes Form」です。日本語訳をすれば、「可能性が作られる場所=3DEXPERIENCE®プラットフォーム」でしょうか。
今回のSWW2019では、3DEXPERIENCE®が強調されていました。
SOLIDWORKSユーザーや他の3DCADユーザーにも、あまり“馴染み”のない言葉でしょう。ダッソー・システムズでは、この言葉がこれまでも良く使用されてきています。
コミュニティの形成、情報・データ管理、3Dモデリング、Simulationがひとつのプラットフォーム上で動いていくことを意味しています。開発設計テーマを例にとって言えば、こんな感じです(私の解釈)。
「こんな製品があったらいいな」とある人が考えたとします。
その人は、その製品のためのコミュニティを作ります。開発チームとも言えますが、そのチームは社内だけではなく、社外の知見者も集めることができます。
構想段階からスケッチや3Dモデルがクラウド上にある場所で共有され、アノテーションが加えられるなど更新されていきます。詳細設計もデスクトップだけではなく、クラウド上で機能するものもあります。Simulationも同様です。
これはローカルマシンのスペックに依存しないことにもなります。
Simulationに関しては、例えば構造解析と言われるCAEだけではなく、「現物が出来る前の検証」として様々な検証が行われることになります。
さらには、全ての工程を検証することも、調達を行うことも、更には企業のリソース管理まで、3Dデータベース、デジタルデータとして行うことになるでしょう。
PLM(Product Lifecycle Management)と言うのかもしれませんが、私はPLM以上に3Dデータというものは主役となっている“プラットフォーム”だと考えています。
これまでも、SOLIDWORKSは競合他社に先駆け、“仕掛け”をしてきていますが、今回のSWW2019で発表されていくものは、ダッソー・システムズとよりシームレスに、より強固に連携されたものだと感じるものとなりました。
その具体的な製品群が、3DEXPERIENCE®.WORKSとなります。この3DEXPERIENCE®.WORKSとは、簡単に説明すると、
- 生産工程のデジタル化支援:DELMIA WORKS
- 製品情報のデジタル化支援:ENOVIA WORKS
- ハイエンド解析連携:SIMULIA WORKS
- そして3DCAD SOLIDWORKS
というものが、製品(ソリューション)として連携していくことを示しています。(私の解釈)
新たな製品の詳細な提供時期や提供方法は不明ですが、これまで大企業中心で運用されてきた“ハイエンド”な製品を、多くの中小企業(北米では、数ライセンスを所有する小規模なSOLIDWORKSユーザーが多いと聞いています)、SOLIDWORKSユーザーが利用できる世界が近づいてきているということが言えます。
従来のデスクトップ型といわれるSOLIDWORKSユーザーにとってみれば、“もしかしたら”クラウド上で運用されるかもしれない新たな製品については、SOLIDWORKSブランドに対する単純なに不安や、クラウドという仕組みに対しての運用課題もあるかもしれません。
しかし、この動きもまた北米を中心にSOLIDWORKS社とそのユーザーの中で、数年をかけて議論されてきたと思われることから、今後の“可能性”の広がりに期待がもてるものになるのではないでしょうか。
このようなSOLIDWORKSの3DEXPERIENCE®戦略を象徴する内容が発表されました。
次回開催地はテネシー州ナッシュビル(2020年2月9日~12日)という発表でしたが、「SOLIDWORKS WORLD」という慣れ親しんだ名前から、「3DEXPERIENCE®WORLD」という名前に変更されています。
これは驚きでもあり、3DEXPERIENCE®というイメージを、この発表を機会に、SOLIDWORKSユーザーにも深く印象付けるものとなりました。
SWW2019以降、さらに詳しい3DEXPERIENCE.WORKSの情報が、発信されていくことでしょう。
今回は残念ながら、展示会会場でMISUMI USAさんの展示はありませでしたが、SWW会場の近くで「Rapid Design Experience」というイベントが開催され、ご厚意により、参加させていただくことができました。
会場は、SWWに参加する多くのSOLIDWORKSユーザーや代理店の方々であふれ、日本では見ることのできないパーティー形式のイベントには、「日本でもこんな感じのイベントがあったらいいのに・・・」と思いました。
日本のカンファレンスと言えばスーツ姿ですが、SWWもMISUMI USAさんのイベントもビジネスカジュアルです。これもまた北米ならではということでしょうが、リラックスした雰囲気の中の会話もはずみ、ネットワーキングもまたスムースに進んでいきます。
このような中でMISUMIというブランドも浸透していくのでしょう。
北米でもSOLIDWORKSユーザーのinCADコンポーネンツのダウンロードは伸びているとのことです。
今後の課題とすれば、北米のユーザーが
- いかに合理的な設計を目指すか
- 合理化の中で新規設計に集中する設計スタイルへの変革
ということになるのかなと、同じ設計者としては考えます。
日本では、ミスミさんのカタログ配布から始まったことによるミスミブランドの定着に対し、3DCADとの連携による北米でのMISUMIブランドの定着と、その運用がこれからのテーマになることでしょう。ぜひ私も、協力していきたいと思います。
このような状況からも、日本の“あらゆる”3DCADユーザーも“うかうか”していられないでしょうね。
SWW2019では、以前から話題に上っている調達との連携を行うソリューションMARKET PLACEの具体的な紹介がありました。
これもまた北米では小規模な企業をユーザーにもつSOLIDWORKSの特徴かもしれません。
さて、日本での展開はどうなるのか。
調達部門を持たない小規模の企業で、複数社の見積もりと選定、発注~決裁までできるのであれば、まさにAmazon®のような世界が3DCAD連携で実現する可能性がありますね。
SOLIDWORKSのこの戦略は、競合ではなく連携としての可能性が大きいことを私は考えています。まずは、これからのMISUMI USAさんの展開が楽しみなことと、期待をしています。
3DEXPERIENCE@WORLDで、ご一緒に発表できたらいいですね。
いや発表するべきでしょう!!