DX(デジタルトランスフォーメーション)は単なるデジタル化ではなく、デジタルにより仕事のやり方を変え、しかも効率化を行うものです。
今に始まったわけではありませんが、製造業においてインフラともいえる3D CADを代表とするデジタル化では、この他にも3Dに関連するデジタル技術を上手に使うことで、仕事の考え方やその方法を変えて、効果を上げている先行ユーザーがいて、こういったユーザーの事例を見る機会は少なくありません。
一方で、DXとは何かイメージさえ持つことができず、興味さえ示さない人たちも存在します。しかし、そんな人たちも「スマートフォンを利用したアプリでDXが実現する」といえば、興味を持つでしょう。
今回から2回にわたり、ノーコード開発によるDX推進についてお話します。
目次
1.中小企業にDXは、むかないのか?
3D CAD関連の取り組みでさえ、「設備投資は高額になるし、その技術ハードルも高いし、そんな人材もいない」と悩まれている企業は多いことでしょう。DX化と聞いて躊躇してしまうのは、中小企業ではなおさらのことと思います。
2000年、日本政府は日本型IT社会の実現を目指すe-Japan構想を打ち立て、
2018年、経済産業省のDX研究会がDX推進のためのガイドラインを策定、
そして、デジタル社会推進会議およびデジタル庁と体制化が進み、
拍車がかかっているのが今日のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
その対象は製造業の開発設計環境だけではなく、営業・調達・経理と多岐にわたりますし、その業種もサービス業や、地方自治体までその範囲は広く、ワークフローの中の様々な工程で、デジタル化により仕事のやり方を変えることで、効果を得ることがかかげられています。
一見、企業全体のことのようにも見えるので、「DXは、経営資源(人材・モノ・金)が必要で、大手企業にはできても、中小企業などでは無理」だと考えている人も多いことでしょうが、果たして、本当にそうなのでしょうか。
8割以上を占める中小企業こそ、DXの恩恵を得るべきだと私は考えます。
2.ノーコードって知っていますか
さて今回のタイトルになるノーコードという言葉をみなさんはご存じでしょうか。
今回、このノーコードによるDXについて、アステリア株式会社の中山様と松浦様からお話を伺うことができました。2回にわたり、ノーコード開発によるDX推進についてお話しすることにします。
アステリア株式会社 中山 五輪男(なかやま いわお)氏 CXO(Chief Transformation Officer/最高変革責任者) 首席エバンジェリスト |
アステリア株式会社 松浦 真弓(まつうら まゆみ)氏 ノーコード変革推進室 副室長 兼エバンジェリスト |
ノーコード(No Code)とは
「ノーコード開発プラットフォーム」のことであり、コードを書かなくてもアプリの開発ができることをいいます。ビジュアルプログラミング言語ともいわれています。 アプリ開発では、各種のプログラム言語を使い、コード(プログラム言語による文字の羅列)作成が必要です。 例えば、WEBサイト作成では、HTML(Hyper Text Markup Language)やCSS(Cascading Style Sheets)といった言語や、ホームページに動きをつける時にはJavaScriptという言語によって作成します。EC(イー・コマース:電子取引)サイトなどでは、Rubyといった言語も使われていると聞きます。 一方、ノーコードとは、文字通り、コードが必要ない(No Code)ことをいいます。機能をもったアイコンを接続していくようなイメージで、アプリケーションの開発をすることができます。その用途としては、WEB作成、業務アプリ、コンシューマ向けアプリ、業務連携や自動化などがあります。 |
テレビCMで、ECサイトを制作できるツールの「BASE(ベイス)」(BASE株式会社)を見かけたことがあるでしょう。これもノーコードといわれるものです。このツールには、出店のための登録や販売のための商品登録などECサイトに必要な内容や設定画面などがあらかじめ用意されているので、必要事項を入力するだけでWEBデザイナーに発注することなく、運用者がECサイトを立ち上げることができます。
私自身も、これまでノーコードに関わったことがないだろうと思いこんでいたのですが、座長をつとめる長野県知的産業技術研究会でIoTを学んだ時にセンサの連携を設定するために使用したアステリア社の「Gravio(グラヴィオ)」という製品や、また同研究会でRPA(Robotic Process Automation:ロボティック プロセス オートメーション)を学んだ時に、自動化したい操作方法をシナリオとして入力するために使用した「WinActor(ウィンアクター)」(NTTアドバンステクノロジ株式会社)という製品もノーコードといわれるものでした。既にこのノーコードは私でさえも、身近にある存在だったようです。
中山様からお話をお聞きしながら、私の実体験として感じたものが、ノーコードはプログラムをしないという考え方でした。
私は、3D CAD運用を行うために、簡単なAPI(Application Programming Interface:アプリケーションプログラミングインターフェース)を作成したりすることはできても、プログラム開発はできません。しかし、IoTやRPAを学んだ時にノーコードを利用した際には、そんなプログラムに関する知識は全く不要で、ワークフローさえ考えることができれば自分用の便利なアプリケーションを作成することができることを体験しています。
これは、ノーコードで「社員自らがプログラムせずに業務アプリを作る」ことで、その結果、効率化を実現して業務変革が可能になるということです。
3.ノーコードからDX化の”ありかた”について考えてみましょう
かつてPLM(Product Lifecycle Management:プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)という言葉が製造業の中で流行しました。今でも使われるこの言葉は、製品に関するマーケティング、設計開発、製造から販売、保守、廃棄までのライフサイクル全般にわたる情報を包括的に管理するものです。
企業全体のプロジェクトになることから、大きな経営資源が必要とされていました。その大企業でさえ、うまくいうかなかったものかもしれないPLMは、大きな経営資源をもたない中小企業にとってのPLMは、「できるはずもないこと」にすぎませんでした。
しかし、そうではなく 大企業のPLM≠中小企業のPLM だったのです。
同じことがDXについてもいえます。
製造業にとって、今日のDXはかつてのPLMにもつながりますが、ノーコードを使ったDXでは大きな経営資源という課題はなくなり、中小企業の懸念は払しょくされるばかりか、大企業でさえもDXとして課題解決できる内容があるはずです。
ノーコードDXからDXについて考え直してみました。
DXに求められることは【自分たちなりのDX】であること。
- 自社の規模に適応したものであること
- 自社の事業に合致したものであること
必ずしも大きなIT、大きなDXである必要はない!ということです。
そのうえで大切なのは、この前段取りにあります。
「問題意識をもつことから、理想と現実を見つめること」
そこから問題を見出し、課題を明らかにし、何をすべきかを決めることです。この前段取りができていないと、全体像をとらえることができません。「何のためにDXを行うのか」というビジョンは最も重要です。
DXが目的としてスタートするのであれば、問題を見出すことなく、ただ導入したものになります。
あるべき姿とはビジョンです。このビジョンは問題点とともに、経営層と共有すべきです。
このビジョンを達成するには(目的)、デジタル技術により実現するうえで、下記4点が満足される必要があるということを忘れてはなりません。
2.ワークスタイルの改革
3.イノベーション(革新:仕組みをまったく新しいものに変える)
4.利用するステークホルダが皆、その仕組みによりそれぞれの業績に貢献できること
4.ノーコードのアプリで何ができる?
ノーコードのアプリには、100種類以上のテンプレートが用意されているとの話です。情報をキーワードとして考えてみても、期待ができます。
企業の中では、情報を属人的には見つけやすいものの、第三者が探そうとすると探すだけで大変なもの、その情報でさえもっと簡単にだれもが入力や発信がいつでもできそうなのに、できていないことなどないでしょうか。
一例でいえば、現場で作成された作業報告書がメールで会社に送られ、それをPDF化したうえで関係者に配信され、しかもその書類を所定フォルダに保存するものの、保存されているだけで、その後、有効に活用できていない。なんていうことはないでしょうか。こんなことも氷山の一角で、企業内を見てみれば、同様の事象がいろんな場所で発生していて、作業効率化も情報の有効活用もできていないということが起こっています。
このような問題を、必要としている社員自身が、複雑なプログラムを組むことなく、ノーコード開発できるのだとしたら、その期待は大きいものになります。しかも、モバイルがその道具の主役になっていることから、いつでも・だれでも・どこでもが実現できることで、そのプロセスは一変しそうです。
5.まとめ
社内に情報システム部門がなければできなかっただろう業務システムの導入や、プログラムを理解していなければできなかったアプリケーション開発が、ノーコード開発プラットフォームを利用すればだれでもできるようなり、中小企業でも社内のDX化が進むことが期待できます。また、これを運用するハードウェアもスマートフォンなどのモバイルが主役であることから、そのシステムの利用もいつでも、どこでも、というように軽快さが向上します。軽快さが向上すれば、利用者も増え、運用率も高まります。
この軽快さは、ノーコード開発により実現できて、DXは推進されます。
そして、この運用は小さなITとして中小企業にとって効果的です。
日本を支える中小企業は、地方に多くあります。
その中で、次回は、アステリア社が進めるノーコードから始まる地方創生についてお話します。