真直度の記号は「-(まっすぐな線!)」と覚える
今回のシリーズでは、グローバル図面に必須となる幾何公差の意味と図面のルールを解説します。第5回目のこの記事では、真直度の意味と記号の使い方を詳しく説明します。
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目次
1.形状偏差とは
今回の記事から、14種類ある幾何特性の詳細について解説していきます。最初は、形状偏差というグループに含まれる真直度からです。
形状偏差は単独形体に分類され、データムに関連なく幾何偏差が決められる形体になります。
形状偏差には次の6つの幾何特性があります。
- 真直度 ←今回解説する幾何特性
- 平面度
- 真円度
- 円筒度
- 線の輪郭度…形状偏差の場合、データムに関連しない
- 面の輪郭度…形状偏差の場合、データムに関連しない
2.真直度とは(JIS B 0683-1:2017)
真直度は「直線形体の幾何学的に正しい直線(以下,幾何学的直線という。)からの狂いの大きさ」とJISで規定されます。
真直度は形状偏差のグループに属するためデータムを必要としませんが、データムの代わりに“基準直線(真直度曲線に当てはめた直線)”を利用します。
基準直線と真直度曲線(実際の線)の最大値(外側)および最小値(内側)に接し、間隔が最小になる二つの平行直線間を測定します(図5-1)。

図5-1 真直度曲線と最小領域基準直線の偏差
3. 真直度の記号と記入のルール
真直度を図面に指示する場合、公差記入枠に真直度の記号と幾何公差値、必要に応じてその他の記号を記入します。
公差記入枠は2つの区画のものを使い、左から3番目以降のデータムを記入する区画は存在しません(図5-2)。

図5-2 真直度の記入例
真直度の対象となる形体は1本の直線です。従って、その直線形体を包み込む円筒空間や挟み込む2直線の間隔が公差領域となります(図5-3)。

図5-3 真直度の公差領域のパターン
4. 真直度を適用する形状
真直度を適用する形状は、円筒軸だけでなくブロック形状にも指示することができます(表5-1)。
表5-1 真直度を適用する形状例
適用する形状例 | データム | 対象形体 | 補助記号 | ||
1 | 円筒軸 | ![]() |
不要 | 中心線
(断続形体) |
φ
(CZ) |
円筒穴 | ![]() |
母線
|
–
(CZ) |
||
2 | 平面 | ![]() |
不要 | 母線
|
–
(CZ) |
エッジ | ![]() |
||||
彫刻線 | ![]() |
||||
3 | テーパ軸 (穴含む) |
![]() |
不要 | 中心線
|
φ
|
楕円軸 (穴含む) |
![]() |
||||
5 | 段付軸 | ![]() |
不要 | 中心線
|
φ
(CZ) |
5. 真直度の図面と公差領域
図面に真直度を指示する場合の設計意図と図面指示例、公差領域を解説します。
1)中心線に真直度を指示する場合
設計意図
穴に軸を挿入する際に、軸や穴が反ることで挿入時に引っかかることを防ぎ、滑らかに挿入したい(図5-4)。

図5-4 穴に軸を挿入するという設計意図
図面指示(軸側)
反って欲しくない軸の直径寸法の矢と合わせたうえ公差値にφを付けて真直度を指示します(図5-5)。

図5-5 真直度を軸の中心線に指示した例
公差領域(軸側)
直径φ0.1の真っ直ぐな円筒領域で規制されます(図5-6)。

図5-6 真直度を軸の中心線に指示した時の公差領域
図面指示(穴側)
反って欲しくない穴の直径寸法の矢と合わせたうえ公差値にφを付けて真直度を指示します(図5-7)。

図5-7 真直度を穴の中心線に指示した例
公差領域(穴側)
直径φ0.1の真っ直ぐな円筒領域で規制されます(図5-8)。

図5-8 真直度を穴の中心線に指示した時の公差領域
2)真直度を共通領域で指示する場合
設計意図
連結のため、段付き軸の両端が反って欲しくない(図5-9)。

図5-9 軸で左右のブロックの穴に挿入して連結するという設計意図
図面指示
反って欲しくない2か所の軸の直径寸法の矢と合わせたうえ公差値にφを付けて真直度を指示し、公差値に続けて記号CZ(共通領域)を追記します(図5-10)。
※真直度の対象となる左右の軸径は同じサイズや公差である必要はありません。

図5-10 真直度を2つに分離した軸の中心線に共通領域で指示した例
公差領域
中間部分を無視して、直径φ0.1の真っ直ぐな円筒領域で規制されます(図5-11)。

図5-11 真直度を2つに分離した軸の中心線に共通領域で指示した時の公差領域
3)母線に真直度を指示する場合
設計意図
平らなブロックに軸を直置きする際に、軸が反ることで接触部に隙間ができることを防ぎたい(図5-12)。

図5-12 軸を台に密着させるという設計意図
図面指示(軸側)
反って欲しくない軸の直径寸法の矢から明確に外したうえ公差値にφを付けずに真直度を指示する(図5-13)。

図5-13 真直度を軸の母線に指示した例
公差領域(軸側)
0.1mm離れた2直線間の領域で規制されます(図5-14)。

図5-14 真直度を軸の母線に指示した時の公差領域
図面指示(ブロック側)
反って欲しくない平面の厚さ寸法の矢から明確に外したうえ公差値にφを付けずに真直度を指示します(図5-15)。

図5-15 真直度を平面の母線に共通領域を指示した例
公差領域(ブロック側)
0.1mm離れた2直線間の領域で規制されます(図5-16)。

図5-16 真直度を平面の母線に指示した時の公差領域
4)母線に真直度を共通領域で指示する場合
設計意図
溝のある平らなブロックに溝のある軸を接して置く際に、軸が反ることで接触部に隙間ができることを防ぎたい(図5-17)。

図5-17 溝付き軸を溝付き台に密着させる設計意図
図面指示(軸側)
反って欲しくない3か所の軸の直径寸法の矢と明確に外したうえ公差値にφを付けずに真直度を指示、公差値に続けて記号CZ(共通領域)を追記します。3か所の母線が対象であることを指示するために、公差記入枠の上に個数を明記します(図5-18)。
※真直度の対象となる複数の直径は同軸である必要があります。

図5-18 真直度を3つに分離した軸の母線に共通領域で指示した例
公差領域(軸側)
複数の溝の部分を無視して、0.1mm離れた2直線間領域で規制されます(図5-19)。

図5-19 真直度を3つに分離した軸の母線に共通領域で指示した時の公差領域
図面指示(ブロック側)
反って欲しくない3か所に分離した平面の厚さ寸法の矢と明確に外したうえ公差値にφを付けずに真直度を指示し、公差値に続けて記号CZ(共通領域)を追記します。3か所の母線が対象であることを指示するために、公差記入枠の上に個数を明記します(図5-20)。
※真直度の対象となる複数の面は同一面である必要があります。

図5-20 真直度を3つに分離した平面の母線に共通領域で指示した例
公差領域(ブロック側)
複数の溝の部分を無視して、0.1mm離れた2直線間領域で規制されます(図5-21)。

図5-21 真直度を3つに分離した平面の母線に共通領域で指示した時の公差領域
6. 真直度の検査方法
真円度測定機による母線と中心線の評価
軸の真直度を測定する場合、真円度測定機を使うことができます。この真円度測定機は丸物(軸やパイプ形状のもの)しか測定できません。
真円度測定機に軸を鉛直方向にセットし、任意の母線を複数個所測定します。JISには何か所測定するかどうかの指針は示されていないため、各企業内で測定個所の数を決めなければいけません。
また、中心線を測定する場合は、180°対向する2本の母線の測定データ(右図の赤と黒の線)から中心線(右図のピンク色の線)を測定機が導き出してくれます(図5-22)。

図5-22 真円度測定機による計測例
CNC3次元測定機による母線の評価
平面の真直度を測定する場合はCNC3次元測定機を使用します。
真直度を測定する場合、下図のように一直線上に複数個所の打点を測定するか、母線を引きずるように測定する“倣(なら)い測定”を選択することができます。
共通領域(CZ)の測定は、同一面にない部分を無視した形でデータを採取し測定します(図5-23)。

図5-23 CNC3次元測定機による打点測定の例
まとめ
今回は、真直度を指示する際のルールについて解説しました。また真円度測定機やCNC3次元測定機での測定イメージも知ることができました。一般的に真直度を指示する場合、軸の中心線に指示することが一般的です。なぜなら設計機能として、軸の相方は穴が待ち構えており、互いに挿入することを目的とすることが多いからです。
しかし、軸を平面の上に置いて固定する構造もあり、この時は軸も平面も互いに線接触するため、設計意図としてそれぞれの図面は母線指示にすべきと考えます。
次回は、真直度と同じ形状偏差のグループに属する平面度について解説します。
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