面の輪郭度の記号は
「平らでない自由曲面!」と覚える
このシリーズでは、グローバル図面に必須となる幾何公差の意味と図面のルールを解説します。第10回目のこの記事では形状偏差に属する面の輪郭度の意味と記号の使い方を詳しく説明します。
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目次
1. 形状偏差とは
前回の記事に続いて、14種類ある幾何特性の詳細について解説していきます。今回は、形状偏差というグループに含まれる面の輪郭度です。
形状偏差は単独形体に分類され、データムに関連がなく、幾何偏差が決められる形体になります。
形状偏差には次の6つの幾何特性があります。
・真直度
・平面度
・真円度
・円筒度
・線の輪郭度…形状偏差の場合、データムに関連しない
・面の輪郭度…形状偏差の場合、データムに関連しない ←今回解説する幾何特性
2. 面の輪郭度とは(JIS B 0621:1984を参考に改変)
面における輪郭度は、理論的に正確な寸法で定めた幾何学的に正しい輪郭からのずれの大きさとして、JISにより規定されています。
形状偏差に属する面の輪郭度は形状偏差のグループに属するためデータムを必要としませんが、データムの代わりに“理論的に正確な寸法で作られる基準面(面の輪郭度曲線に当てはめた面)”を利用します。
理論的に正確な寸法で作られる基準面と面の輪郭度曲線(実際の面)の最大値(外側)および最小値(内側)に接し、間隔が最小になる二つの面間を測定します(図10-1)。

図10-1 面の輪郭度曲線と最小領域基準形体の偏差
3. (形状偏差に属する)面の輪郭度の記号と記入のルール
形状偏差に属する面の輪郭度を図面に表現する場合、公差記入枠に面の輪郭度の記号と幾何公差値、必要に応じてその他の記号を記入します。公差記入枠は2つの区画のものを使い、データムを記入する左から3番目以降の区画は存在しません(図10-2)。

図10-2 形状偏差に属する面の輪郭度の記入例
面の輪郭度の対象となる形体は曲面(平面含む)や楕円形(円筒含む)など自由曲面全般です。従って、その自由曲面形体を包み込む2面間が公差領域となります。公差領域から幾何公差値にφを使うことはありません(図10-3)。

図10-3 面輪郭度の公差領域パターン
4. 面の輪郭度を適用する形状
面の輪郭度を適用する形状は、自由曲面や複合形体(複数の面を組み合わせてセットにした面形体)の外側形状や内側形状に指示します(表10-1)。
表10-1 面の輪郭度を適用する形状例
適用する形状例 | データム | 対象形体 | 補助記号 | ||
1 | 曲面 | ![]() |
不要 |
表面 (断続形体) |
–
(CZ) |
楕円円筒 | ![]() |
複合表面* |
(A→B)
(○) |
||
複合形体 | ![]() |
||||
(参考) | 平面 | ![]() |
・平面の場合は平面度を優先する | ||
![]() |
|||||
(参考) | 円筒 | ![]() |
・円筒表面の場合は円筒度を優先する | ||
![]() |
*複合形状の表面の場合は全周記号(○)、または領域を示す記号(A→B)を併用する
5. 面の輪郭度の図面と公差領域
図面に面の輪郭度を指示する場合の設計意図と図面指示例、公差領域を解説します。
1) 円弧表面に面の輪郭度を指示する場合
設計意図
設計機能上、正確な円弧の面形状が欲しい。
図面指示
輪郭を要求する円弧の半径寸法に理論的に正確な寸法を指示し、寸法線の矢と明確に外して面の輪郭度を指示します(図10-4)。

図10-4 面の輪郭度を円弧面に指示した例
公差領域
円弧の場合、0.1mm離れた同軸2面間の領域で規制されます。公差の幅は0.1mmですが、円弧の場合、中心を一致させるため外側の限界円弧寸法が「R30.05」、内側の限界円弧寸法が「R29.95」と理論的に正確な寸法「R30」に対して±0.05になることが特徴です(図10-5)。

図10-5 面の輪郭度を円弧面に指示した時の公差領域
2) 指定した領域に面の輪郭度を指示する場合
設計意図
設計機能上、正確な円弧とその周辺形状が欲しい。
図面指示
輪郭を要求する円弧の半径寸法に理論的に正確な寸法を指示し、寸法線の矢と明確に外して面の輪郭度を指示します(図10-6)。

図10-6 面の輪郭度を指定した領域に指示した例
公差領域
円弧部分は0.1mm離れた同軸2円筒間、平面部分は0.1mm離れた平行2平面間の領域で規制されます(図10-7)。

図10-7 面の輪郭度を指定した領域に指示した時の公差領域
3) 複合形状の穴に面の輪郭度を指示する場合
設計意図
設計機能上、正確な複合形体の穴が欲しい。
図面指示
穴の輪郭を要求する複合する寸法に理論的に正確な寸法を指示し、寸法線の矢と明確に外し、全周記号を用いて面の輪郭度を指示します(図10-8)。

図10-8 面の輪郭度を複合形体である穴に指示した例
公差領域
理論的に正確な寸法(30mmと10mm)に対して、±0.05mm(幅で0.1mm)離れた複合形状の領域で規制されます(図10-9)。

図10-9 面の輪郭度を複合形体である穴に指示した時の公差領域
6. 面の輪郭度の検査方法
輪郭度測定機による測定
輪郭度測定機は、鋭利なスタイラスで測定面をトレースすることで断面の輪郭形状を取得し、距離や角度、半径、ピッチなどの寸法を演算で求める測定機です。断面の輪郭形状を複数採取してそれらの合成面を評価します。2D図面のサイズ寸法や幾何公差情報と比較したり3Dモデルと比較したりもできます(図10-10)。

図10-10 輪郭度測定機による測定
非接触式測定機による測定
彫刻線や印刷の線を非接触測定機に画像として取り込み、3次元データとの比較を行います(図10-11)。

図10-11 非接触測定器のイメージ
まとめ
今回は、面の輪郭度を指示する際のルールについて解説しました。
前回の線の輪郭度が断面上の2次元平面の公差領域を持つことに対して、今回の面の輪郭度は奥行きを含めた3次元空間の公差領域を持つことが特徴です。
次のように考えると、面の輪郭度は平面度や円筒度に比べて自由度が高いことがわかります(図10-12)。

図10-12 3次元空間の公差領域を持つ形状偏差の関係
- 幾何学的に正しい平面を要求→平面度
- 幾何学的に正しい円筒を要求→円筒度
- 理論的に正確な寸法で示した曲面や複合面形体→面の輪郭度
面の輪郭度は一般的に平面や円筒面以外の自由曲面に用いることがわかりました。
面の輪郭度という言葉の定義から「ものの外形を形づくっている面」や「プロファイル」、「アウトライン」などを意味しており、外郭形状に使うべきものです。しかし、ISOによると中心形体(中心平面または中心曲面)にも使うことができると記載されています。
ここまでで、最初のグループである形状偏差に関する6つの特性の解説を終了します。
次回は、傾きを制御する姿勢偏差のグループに移動します。姿勢偏差の最初は平行度について解説します。