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一般公差とは?他の公差との違いや等級、基準寸法の区分を解説

一般公差は普通公差とも呼ばれ、寸法に公差が指定されない場合に使われる公差のことです。図面に記入される寸法には公差を指定しますが、全ての寸法に公差が付いていると非常に読みにくい図面になってしまいます。一般公差を利用することで図面の寸法を読みやすくして、重要寸法を正確に見分けることができるようになります。

板金加工とは

板金加工とは、金属板を「切断」「曲げ」「絞り」「溶接」などの方法で加工し、さまざまな形状に成形する技術です。自動車や建築、電気機器など、複雑な部品の製造に不可欠で、大きく分けて「手板金」と「機械板金」の2種類があります。

以下では、それぞれの特徴を解説します。

手板金とは

手板金は、熟練の職人がハンマーやヤスリなどの手工具を用いて、金属板を叩いたり、曲げたり、削ったりする伝統的な加工技法です。機械では難しい複雑な曲面や繊細な装飾が可能で、自動車のボディ修理や建築の装飾部品、工芸品の製作などに広く活用されています。

少量生産や一点物の製作に適している一方、大量生産には向いていません。しかし、職人の高度な技術が求められるため、現代でも匠の技として高く評価されています。

機械板金とは

機械板金は、プレス機やレーザー加工機などの機械設備を使用して金属板を加工する技法です。CAD/CAMシステムと連動した高精度な機械加工を用いれば、複雑な形状の部品を効率的に生産できます。

主な加工方法は以下のとおりです。

  • プレス加工
  • レーザー切断
  • パンチング
  • ベンディング

大量生産に適しており、自動車部品や家電製品、産業機械部品といった分野で活用されています。近年では、3D CADと連携した設計や、ロボットを活用した自動化ラインの導入により、さらなる生産性向上と品質安定化が図られています。

一般公差とは

一般公差は、図面上で明示的に公差が指定されていない寸法に適用される標準的な許容範囲です。普通公差とも呼ばれ、設計者が個々の寸法に対して公差を指定する手間を省き、図面の可読性を向上させる重要な役割を果たします。

一般的によく使う切削加工の一般公差は以下のとおりです。

表1 面取りを除く、長さ寸法の普通公差(JIS B 0405-1991~切削加工の場合)

公差等級 基準寸法の区分(mm)
記号 説明 0.5以上

3以下

3を超え
6以下
6を超え

30以下

30を超え
120以下
120を超え

400以下

400を超え
1000以下
1000
を超え
2000以下
2000
を超え4000以下
許容差
f 精級 ±0.05 ±0.05 ±0.1 ±0.15 ±0.2 ±0.3 ±0.5
m 中級 ±0.1 ±0.1 ±0.2 ±0.3 ±0.5 ±0.8 ±1.2 ±2
c 粗級 ±0.2 ±0.3 ±0.5 ±0.8 ±1.2 ±2 ±3 ±4
v 極粗級 ±0.5 ±1 ±1.5 ±2.5 ±4 ±6 ±8

※注:0.5mm未満の基準寸法に対しては、その基準寸法に続けて許容差を個々に指示する。

表2 面取り長さの普通公差( JIS B 0405-1991~切削加工の場合)

公差等級 基準寸法の区分(mm)
記号 説明 0.5以上 3より上 6より上
3以下 6以下
許容差
f 精級 ±0.2 ±0.5 ±1
m 中級
c 粗級 ±0.4 ±1 ±2
v 極粗級

表3 角度寸法の普通公差( JIS B 0405-1991~切削加工の場合)

公差等級 対象とする角度が短い方の辺の長さの区分(mm)
記号 説明 10以下 10より上 50より上 120より上 400より上
50以下 120以下 400以下
許容差
f 精級 ±1° ±30′ ±20′ ±10′ ±5′
m 中級
c 粗級 ±1°30′ ±1° ±30′ ±15′ ±10′
v 極粗級 ±3° ±2° ±1° ±30′ ±20′

等級は製品の要求精度や製造方法に応じて選択されます。また、一般公差は、基準寸法の区分ごとに異なる値が設定されており、寸法の大きさに応じて適切な公差が自動的に適用されます。

図面全体で一貫した精度管理が可能となるため、製造プロセスの効率化と品質向上に効果的です。

寸法公差と一般公差(普通公差)の違い

寸法公差は、精度が特に必要な寸法に許容範囲として100±0.1のように明示的に表記して利用します。公差値は任意に決めることができますので、設計者の意図を加工者に明確に伝えます。
一般公差(普通公差)は、個々の寸法の許容範囲を一括して指定することができますので、図面の作図工数を削減でき、図面を見易くすることができます。

一般公差の等級とは?

一般公差を利用する場合には等級が重要になります。JISでは精級、中級、粗級、極粗級の4種類があり、f、m、c、vの記号が割り当てられています。また寸法の種類も長さ寸法、面取り寸法、角度寸法、直角度などのように細分化されています。

一般公差の基準寸法の区分とは?

一般公差の値は等級ごとに決まっていますが寸法の値によって変化します。1±0.1と100±0.1では同じ公差幅ですが、長さ寸法に対する比率で考えると、精度厳しさに100倍の差ができてしまいます。そのため、JISでは基準寸法の区分毎に公差値を設定することで、図面内の寸法精度を一律に管理しています。

 

基準寸法の区分 公差等級
精級 中級 粗級 極粗級
0.5以上3以下 ±0.05 ±0.1 ±0.2
3を超え6以下 ±0.05 ±0.1 ±0.3 ±0.5
6を超え30以下 ±0.1 ±0.2 ±0.5 ±1

 

上記の公差表で確認してみると、基準寸法の長さに応じて公差値が変わっている事が分かります。たとえば18mmの寸法で精級の場合は、図面に寸法公差を記入しなくても自動的に±0.1の公差が指定されたことになります。

一般公差の指定方法

一般公差を図面に適用する場合には、図枠の表題欄に一般公差(普通公差)を等級と共に適用することを記入します。

一般的な等級の使い分け

  • 精級 : 精密機械の金属部品など
  • 中級 :一般的な金属部品など
  • 粗級 :一般的な樹脂成形部品など

*樹脂成形部品に精級を適用すると、成形が困難になり部品コストが上昇する場合がありますので、適切な等級を指定することが大事です。

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板金加工の許容寸法公差はこちら
板金溶接加工の許容寸法公差はこちら
切削角物の普通許容差標準はこちら
切削丸物の普通許容差標準はこちら

まとめ

製造業のグローバル化を進めるためには、寸法公差と幾何公差の世界標準(ISO)に合わせる必要があります。海外のメーカーは忖度してくれませんので設計要件を満たす部品を手配する場合には完璧に寸法公差と幾何公差を理解した上で図面を描くことが重要です。

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