超高分子量ポリエチレンは、エンジニアリングプラスチックに分類されています。工業的に非常に優れた性質をもち、ロープや歯車など、高い耐久性が求められる用途にも使用されています。ここでは超高分子量ポリエチレンの特徴や用途について解説します。
目次
超高分子量ポリエチレンとは?
超高分子量ポリエチレンとは、ポリエチレンのなかでも特に分子量が100万~700万以上のものです。元々ポリエチレンとはポリ-エチレン、つまりエチレンの重合体です。重合法や分子量により、さまざまな種類を作れるのが特徴で、一般的な分子量は2万~30万になります。ポリエチレンは低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の他、EVA樹脂や超高分子量ポリエチレンなどに分類されます。
高い耐衝撃性や耐摩耗性、耐薬品性をもっているため、負荷の高い機械部品や食品加工機械などにも使用されます。
超高分子量ポリエチレンはエンジニアリングプラスチックの一種で、その中でもさらに優れた性質を持つスーパーエンジニアリングプラスチックに分類されています。
超高分子量ポリエチレンの正式名称はUltra High Molecular Weight Poly Ethyleneで、略称として、UHMWやUPE、またはUHMW-PEと表記されます。また多くのグレードがあり、帯電防止や低摩擦など、さまざまな特徴が付加されています。そのため、用途に合わせてメーカーとグレードを選定しなければいけません。
超高分子量ポリエチレンの種類
超高分子量ポリエチレンには多くのグレードがあり、それぞれ違った特徴をもっています。いくつかの代表的なグレードと用途を下記に紹介します。
- 標準グレード:ローラー、レールなど
- 帯電防止グレード:精密機器、電子部品の治具など
- 導電グレード:電子機器、精密機械の治具など
- 高摺動グレード:レール、軸受けなど
- 耐摩耗グレード:レール、歯車など
- 難燃グレード:精密機器、電子機器など
メーカーにより、取り扱いグレードや、材料の商品名、仕様は異なります。そのため詳しい内容は各メーカーのカタログなどから確認する必要があります。
超高分子量ポリエチレンの特徴
超高分子量ポリエチレンには様々なメリットとデメリットがあります。用途に合った選定ができるよう、特徴を整理しておきましょう。
超高分子量ポリエチレンのメリット
耐衝撃性が高い
耐衝撃性の高さは最も特徴的なメリットのひとつです。高い分子量を持ち、分子構造が鎖のように複雑に絡み合っているためです。耐衝撃性はプラスチックのなかで最高で、ポリカーボネートよりも高くなります。しかし透明ではないためポリカーボネートのような透過性が求められる部位には使用できません。
耐摩耗性が高く潤滑性に優れる
耐摩耗性が高く、自己潤滑性を持つのも特徴です。摺動によって自己が傷つかないだけでなく、相手部品を傷から守ります。POMをはじめとしたナイロン系の樹脂よりも耐摩耗性が高いため、ガイドレールなどにも多く使用されています。
耐薬品性が高い
高い分子量を持つため、化学的な反応を起こしにくく、耐薬品性が高いのもメリットです。そのため食品加工機など、水や塩、酸などがかかりやすい部位にも使用できます。
吸水性が低い
吸水性が低いのが特徴で、湿度による寸法変化が起こりにくいです。そのため、歯車やレールなど、高い寸法精度が求められる部位にも使用されています。
超高分子量ポリエチレンのデメリット
温度による寸法変化が大きい
エンジニアリングプラスチックの中でも最大の線膨張係数をもちます。そのため温度による寸法の変化が多く、加工に伴う熱の影響により、加工後の寸法が変化してしまうケースも多くみられます。他部品との組み付け時や保管などにおいても、周辺の温度管理が重要になります。
接着加工に向かない
自己潤滑性が高いため、接着が難しいのがデメリットです。そのため接着加工には向きません。他の部品と組み合わせる際には、他の方法で組み付けられるよう、あらかじめ設計を工夫する必要があります。
超高分子量ポリエチレンのおもな用途
超高分子量ポリエチレンは、優れた性質を生かし、工業用途だけでなく医療分野などにおいても広く利用されています。いくつかの用途を紹介します。
- チェーンコンベア
- 歯車
- ガイドレール
- ローラー
- ライナー
- 食品機械
- 船舶用ロープ
- 義肢
チェーンコンベアや歯車、ガイドレールなど、高い耐摩耗性と自己潤滑性を活かした用途が多いです。また同様の理由から義肢の関節部などにも使用されます。
まとめ
超高分子量ポリエチレンは、エンジニアリングプラスチックの中でも特に優れた性質をもつスーパーエンジニアリングプラスチックの一種です。多くのグレードがあり、それぞれのグレードによって導電性を持ったり帯電防止に使えたりするなど、さまざまな特徴をもちます。耐摩耗性と潤滑性が高いのが特徴で、耐衝撃性や耐薬品性も高いのがメリットです。一方で温度による寸法変化が大きく、接着加工に向かないのがデメリットです。チェーンコンベアや歯車、ガイドレールなどの工業用途のほか、義肢などの医療分野にも使われています。