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シリコンゴムとは?優れた特性や他材との違い・加工時の注意点まで解説

シリコンゴムは、キッチン用品から精密部品まで使われる高機能ゴムです。優れた耐熱性や柔軟性から「ゴムの中でも特別な存在」と称される一方で、独特の性質や注意点も存在します。

この記事では、シリコンゴムの特性、メリット・デメリット、用途、加工ポイントを解説します。

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シリコンゴムとは?

シリコンゴムは、ケイ素(シリコン)と酸素から成る「シロキサン結合」を主骨格に持つシリコーン樹脂を原料とした合成ゴムです。一般的な有機ゴムが炭素結合を主鎖とするのに対し、このシロキサン結合がシリコンゴムに特有の性質をもたらします。

「合成ゴムの中で最も広い温度範囲で使える材料」ともいわれており、-70℃といった極低温から200℃を超える高温環境まで、安定したゴム弾性を維持できます。また、紫外線やオゾンに対する劣化に強い耐候性、優れた電気絶縁性や撥水性、医療用途にも使用されるほどの高い化学的安定性と無毒性も兼ね備えている材料です。

シリコンゴムの特性

シリコンゴムの機械的特性

項目 単位 シリコンゴム
比重 1.2 1.2
硬度 ショアA 70 50
引張強さ MPa 7.4 8.8
伸び % 300 330

※引張強さ、伸びの各特性値はJIS規格K6251に基づき試験を行っております。

 一般的にシリコンゴムの引張強さは5〜10MPa程度であり、200〜400%と大きく伸びるのが特徴です。 硬度は、消しゴムのように柔らかいもの(ショアA硬度30)から、比較的硬いもの(同80)まで、グレードによって幅広く調整できます。衝撃吸収性に優れるものの、摩擦には弱く、大きな荷重がかかると変形しやすい点には注意が必要です。

シリコンゴムの物理・化学的特性

シリコンゴムの最大の特徴は、物理的・化学的安定性にあります。

  • 耐熱性・耐寒性
    ゴム材料の中でトップクラスの性能を誇り、一般品でも広い温度範囲で弾性を保持します。特殊なグレードでは300℃の高温に耐える製品も存在します。
  • 耐候性
    紫外線や風雨に長期間さらされても物性劣化が極めて少なく、屋外での使用に非常に適しています。
  • 電気的特性
    高い体積抵抗率と絶縁耐力を持ち、高圧ケーブルの被覆材などに利用されます。
  • 化学的安定性
    弱酸や弱アルカリ、アルコールなど多くの薬品に対して高い耐性を示します。無味無臭・無毒で生体適合性にも優れるため、医療や食品分野でも安心して使用できます。

シリコンゴムのメリット

高い耐熱・耐寒性と耐候性

シリコンゴムが持つ最大のメリットは幅広い温度対応力です。-60℃の極寒環境から+200℃の高温環境まで、ゴムとしての弾性を失うことなく安定して使用できます。自動車のエンジンルーム内や排気系周辺の過酷な高温にさらされるパッキン、あるいは冷凍倉庫の扉のシール材など、ほかの材料では対応が困難な環境でも活用できます。

さらに、紫外線やオゾンに対する耐性が極めて高い耐候性も特徴です。屋外で長時間直射日光や雨風にさらされても、ひび割れなどの劣化がほとんど起こりません。建材のシーリングや屋外機器の防水用途でも、長期にわたって性能を維持します。

優れた電気絶縁性・化学的安定性

シリコンゴムは、電気絶縁性に優れた材料です。高い体積抵抗率を誇り、高電圧がかかる送電線のカバーや、精密な電子回路の絶縁・封止材として広く採用されています。放電や火炎にさらされても、有機ゴムのように導電性の黒いススを生じず、絶縁体である二酸化ケイ素の白い灰に変わるため、短絡リスクを抑えて高い安全性を保てます。

化学的にも極めて安定しており、無味無臭・無毒です。多くの薬品に対して高い耐性を持ち、食品衛生法や米国の医療機器規格に適合するグレードも豊富に存在します。安全性の高さから、人体に直接触れたり体内に留置されたりする部品にも安心して使用できます。

柔軟性と設計自由度の高さ

非常に柔らかく、わずかな力で変形するシリコンゴムは、シール材として理想的な性能を発揮します。部材にしっかり密着し、目に見えない凹凸にも追従して隙間を確実に塞ぎます。一度圧縮されても元の形に戻る力が強いため、長期間にわたり安定したシール性能を保つ材料です。

液状シリコンゴムを用いた射出成形では、複雑で微細な形状の部品や、金属・樹脂と一体化した複合部品も精密に製造可能です。顔料の配合による着色の自由度も高く、機能性だけでなくデザイン性が求められる製品にも対応できます。

シリコンゴムのデメリット

常温での強度の低さと耐摩耗性の弱さ

シリコンゴムの機械的な強度はほかのゴム材料に比べて低いという弱点があります。引裂き強度は天然ゴムやウレタンゴムに劣るため、鋭利な角がある部品や、組み立て時に強い力で引っ張られるような箇所への使用には注意が必要です。

耐摩耗性も十分ではないため、部品同士が常に擦れ合う摺動部や、頻繁に着脱するような用途では摩耗が早く、寿命を満たせない可能性もあります。高圧の流体が激しく動く油圧シリンダーのパッキンといった動的シールよりも、固定された部分で使われる静的シールに主として用いられます。

油類への耐性不足と汚れの付きやすさ

シリコンゴムには、ガソリンやエンジンオイル、灯油といった非極性の油や溶剤に対する耐性が低い点がデメリットです。油を吸ってゴムがふやけたように膨らむ膨潤という現象が起き、本来の硬さや強度を失ってしまうからです。自動車の燃料系や潤滑系のシール部品には、より耐油性に優れたフッ素ゴムやニトリルゴムが選ばれます。

また、シリコンゴムは静電気を帯びやすく、表面にわずかな粘着性があるため、空気中のホコリやゴミを吸い寄せて表面が汚れやすい点もデメリットです。外観品質が重視される用途では、表面に滑り性や防汚性を向上させるコーティングが必要になる場合もあります。

原料コストの高さと再利用困難

シリコンゴムは、ほかの汎用的な合成ゴムと比較して材料自体の価格が高い傾向にあります。原料となるケイ石から複雑な化学プロセスを経て高純度のシリコーンポリマーを製造する必要があり製造コストが高いためです。

さらに、一度熱を加えて硬化させると、再度熱をかけてもチョコレートのように溶けて再成形できない「熱硬化性」という性質を持っています。製造工程で発生した端材や、使用済みの製品をリサイクルすることが難しく、材料の廃棄ロスがコストを押し上げる一因となっています。

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シリコンゴムの用途

シリコンゴムの主な用途は以下のとおりです。

分野 主な用途・使用例 使われる理由
自動車・輸送分野 ・エンジン周辺のガスケット、ホース

・EVの高電圧ケーブル被覆

・ヘッドライト等の防水シール

・耐熱・耐寒性で過酷な温度変化に対応

・電気絶縁性で高電圧部品の安全を確保

・屋外部品を長持ちさせる耐候性

電気・電子分野 ・キーボードやリモコンのキーパッド

・電子基板の封止材(ポッティング)

・複写機の定着ロール

・電気絶縁性で回路を保護

・キーパッドに求められる柔軟性と耐久性

・発熱部品の近くで使える耐熱性

食品・医療分野 ・調理器具、食品容器のパッキン

・哺乳瓶の乳首

・医療用チューブ、カテーテル

・人体への安全性が高く、食品衛生法などに適合する

・煮沸や蒸気滅菌が可能な耐熱性

・アレルギーを起こしにくい生体適合性

その他産業用途 ・建築用のシーリング材

・工場の防振ゴム

・ロボットの触覚センサーや外装

・耐候性と接着性が建材に最適

・クリーンルームで使える清浄性や耐薬品性

・人と接するロボットに必要な柔軟性と安全性

シリコンゴムと他材料の比較・選定ポイント

シリコンゴムと類似するほかの材料を比較した内容を以下の表にまとめます。

特性/材質 シリコンゴム EPDM ニトリルゴム フッ素ゴム
使用温度範囲 -60~+200℃ -40~+120℃ -10~+80℃ -10~+230℃
耐熱性
耐寒性
耐油性
耐候性
電気絶縁性
加工性
コスト ×
食品・医療適性

シリコンゴムの加工種類とポイント

射出成形(インジェクション)

射出成形(インジェクション)は、液状シリコンゴムを金型へ高圧で射出し、高速で熱硬化させる方法です。複雑・微細な形状の部品を短時間で大量生産するのに最適で、Oリングから医療部品まで広く用いられます。

自動化による生産性の高さがメリットですが、金型費用は高額になるデメリットもあります。成形時の収縮率(約2〜4%)を精密に見込んだ金型設計も、品質を左右するポイントです。硬化時に発生するガスを適切に排出するガスベントの設計も不良を防ぐうえで重要となります。

圧縮成形

圧縮成形は、シート状の固形シリコンゴムを熱した金型に入れ、プレス機の圧力で熱硬化させる加工法です。Oリングや板状パッキンなど、比較的形状がシンプルな製品の製造に広く用いられます。

射出成形に比べて金型構造が単純なため、金型費用を安価に抑えられるのがメリットです。このため、試作品の製作や多品種・小ロット生産に適しています。生産性は射出成形に劣り、材料を入れすぎるとバリが多く発生するため、適切な材料量の管理が求められます。

押出成形

粘土状に練ったシリコンゴムを、口金から連続的に押し出して成形する方法です。チューブやホース、電線被覆、異形断面のシール材など、断面が一定の長尺製品を効率よく製造するのに適しています。押し出された製品は加熱炉で連続的に熱硬化されます。

製品の寸法精度は、ダイの設計と押出速度、温度管理に依存するため、条件の最適化が品質の鍵です。発泡剤を添加して、断熱シールやクッション材として利用される軽量なスポンジ状の製品の製作もできます。

切削・抜き加工

硬化済みのシリコンゴムシートを材料に、刃物やウォータージェットで任意の形状を切り出す加工法です。主にガスケットやワッシャーなどの2次元形状の部品製作に用いられます。高価な金型が不要なため、開発段階の試作品や多品種小ロット品を、低コストかつ短納期で製作できるのが利点です。

ただし、素材が柔らかく加工時に変形しやすいため、寸法精度を出すには注意が必要です。対策として材料を冷凍して硬くしたり、熱影響なく高精度に加工できるウォータージェットを用いたりします。

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まとめ

シリコンゴムは、卓越した耐熱・耐寒性、耐候性、電気絶縁性、安全性を誇る一方で、機械的強度や耐油性には注意が必要な素材です。自動車からエレクトロニクス、食品、医療に至るまで、活躍の場は広がり続けており、製品開発に不可欠な材料のひとつとなっています。

性能を最大限に引き出すには、他材との比較検討や、加工方法の理解が重要です。本記事で紹介した内容を参考にして、設計・開発の現場でシリコンゴムをご活用ください。

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